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わたしは『天山ギルド本営』の人達から見つからないようコソコソと隠れながらギルド拠点を目指し、何とか無事にたどり着け、安心感からホッと軽く吐息をついた。
「ん? アリス、今日は随分と早いにゃりなぁ~」
「ねこパンチさん、こんばんは! 他のみんなは…………まだみたいですねぇ~?」
ギルド拠点内を見回すと、ねこパンチさんだけしか居なかった。いつもならこの時間にもなると、他のギルドメンバーも居る筈なんだけどなぁ~?
「他の者達は、今頃、《炎の城》へ行っておるにょでにゃ。アリスにも業務メールを送ったんにゃが、気づかなかったかにゃ?」
「メール??」
言われてみて確認してみると、確かにメールが届いてた。開いてみると、今日のギルド会議の場所を炎の城に変更すると書かれてある。
あらら……。
「それから、冬馬殿の要望でにゃ。アリスとも早めに話し合いたいと言っておったにゃので、直ぐに行ってみるがよいにょ」
「話?」
どんな話なのか想像もつかないけど、とりあえず行ってみることにしよう。
「え? ナニコレ??」
炎の城へ入城申請を出し、許可が出ると直ぐに暗転移動した。ら……そこには、ギルド黄昏の聖騎士にゃん以外にも大勢の人達が集まっていたので、思わず驚いてしまう。
そんなわたしの元へ、1人の聖騎士姿の女性が優しげなニコニコ顔の表情で現れ口を開いた。
「お待ちしておりました、アリス様。奥で皆様がお待ちです。どうぞこちらへ」
「あ、え? はぃ??」
わたしがキョトンとしていると、改めて笑顔で「どうぞ、どうぞぉ~♪」と綺麗な女の人が誘って来る。
わたしは訳が分からないまま、後をついてゆく。
「あれ?」
炎の城2階にある会議室へ入ると、冬馬さんにフェイトさん、ランズベルナントさんにザカールさんにオルトスさん、《黒騎手団》の団長ギリゥさん、《グリュンセル》のGMグランセルさんに《薔薇の騎手団》サブGMアザミューナさん、《ファルメシにゃん》のファルさんに《タルタルソースは美味いでちゅ》のまよねーぜさんなど多くの人が待っていた。中には、わたしが知らない人も居て参る。
「ハハ♪ ようやく、我らが《代表》のご到着のようだなぁ~」
「へ? 代表?? なんの??」
ザカールさんの言葉を聞いて、わたしが訳分からないって顔をしていると、冬馬さんが軽く笑み肩をすくめ口を開いてきた。
「本来なら合議制でやるべきなんだろうけど、大方の話し合いはここで決着がつきました。あとは……他の全連合ギルドメンバーの合意を得て、発足となります」
「発足?? なにを?」
「新しい《ギルド連合体》ですよっ! アリス様♪」
わたしの後ろから、唐突にミレネさんがゴロにゃんと抱きついて来ながらそう言ってきたのでびっくりした。
「えっ? ぎるど連合って!??」
「我々だけで、新しいギルド連合体を発足するんですよ。
《天山ギルド本営》《対・天山ギルド本営》この2大手連合体とこれなら対等に渡り合う為には、これが最善の策だと思いますからね?
つまりこれが、自分が考えた、最後の一手です」
冬馬さんの話を聞いて、わたしは思わず絶句した。だってさ、対等になるなんて本当に可能なの?
わたしがそう不安に思っていると、ザカールさんが困り顔を見せて口を開いてきた。
「色々と不安には思うかもしれないが、このままだと我々は《対・天山ギルド本営》に取り込まれてしまう。だろ? それを避ける為には、こうする他にない、ってことだ。それに、冬馬だって何も無策にこの手に出た訳ではないさ。
なっ、そうだろう? 冬馬」
「まあね。前回の決戦で、大手3ギルドに反抗し従わなかったギルドが意外にも多いことがわかったんだ。それで声を掛けてみたら、面白い結果が得られたものでね」
「面白い??」
「我が《グリュンセル》と同じく、あの大手3ギルドを嫌う者達が多く居た、ってことですよ。アリス様♪」
「ハハ♪ 天山からばかりではなく、対・天山にも同じようなギルドが居たので、早速引き抜いておきました」
冬馬さんのその一言のあと、テーブルに座っている1人が立ち上がり、わたしに挨拶をしてきた。
「初めまして、《薔薇の騎手団》GMフェイルモードです。どうぞよろしくっ!」
「同じくサブGMのアザミューナよ。改めまして、よろしくねっ♪」
「《ファルメシにゃん》のGMファルにゃる。よろしくにゃん♪」
「《タルタルソースは美味いでちゅ♪》のGMまよねーぜでちゅ。よろしくっ、タルタル♪」
そのあとにも、次々と多くの人が挨拶をしてきた。その数、なんと12ギルドっ! およそ700名以上の仲間が、一気に集まったってことになる。ってことは、デッキパーティー編成が30軍は組めちゃうんじゃ!?
「現状更に、引き抜き調略を行ってます。このままいくと天山を追い抜き、うちが最大のギルド連合体になるかもしれませんよ? ハハ♪」
「ええぇーっ!!? 追い抜き……凄いっ!!」
今更なことだけど、つくづく冬馬さんって凄いなぁ~と思ってしまう。こんなにも簡単に大きな連合体を作ってしまうんだもんなぁー。改めて尊敬しちゃうよ。
「あと残るは、その代表と連合体の名称なんだが。代表の方はこちらで勝手に決めさせて貰った。だから残りは、連合体の名称だけなんだが……何か希望はあれば採用するが、どうする?」
「え? わたし??」
ザカールさんから急に聞かれ、わたしは困り顔に苦笑い「え、っと……あはは♪ ここは単純に『にゃん』とか?」とテキトーなことを言ってしまった。
冬馬さん達もそれには苦笑い、肩をすくめている。そりゃあ、そうだよねー?
「我らが《代表》のご希望ですからね。では、それに決めますか」
「へ?」
他の人達もそれに苦笑いながらも納得し、一斉に立ち上がると、炎の城2階から1階を見下ろせる場所へと移動する。
1階に居る人達は、一斉に2階を注目した。
それに合わせ、ザカールさんが口を開く。
「みんな、聞いてくれ! 既にライブチャットで知っている者も居るとは思うが、我々の代表とギルド連合体の名称が決まった。
連合名は『にゃん♪』そして、その代表は……ここに居る、アリス」
──……へっ?
「これに異存ある者は、遠慮なく言ってきてくれ!」
「「「ない、にゃにゃん♪」」」
──えっ、うそええぇーーっ!!?
寝耳に水で驚くわたしを横目に、二階に居るGMクラスの人達や一階に居るみんなが拍手喝采をあげていた。こうなるともぅ、今更断るというのも忍ばれ……腹を決めるしかないみたい。自分で言うのもなんだけど、凄い不安なんたけどねぇ~……。
そのあと、世界チャットへ向けての発信準備が進められる中、ミレネさんがソワソワとしながらわたしに近づいてきて背中をちょいちょいと突っついてきた。
「あのっ、アリス様。もしやと思いますが……今日の昼間、矢八万神社になど行かれましたか?」
「えっ!? あ、うん、行ってきたよー」
「──!!」
「ん? 明日も夕方からお祭りなので、行く予定なんだけど…………なんで?? というか、どうしてそのことをミレネさんが知ってるの??」
「明日もっ!?」
「ん??」
ミレネさんはそこで指をグッとして見せ、満面の笑みを浮かべ手を振り振り、自ギルドメンバーの元へと走り向かう。わたしにはその笑顔の意味がよく分からなかったんだけど、可愛いので、まぁいいか?
間もなく世界チャットへ、ギルド連合体『にゃん♪』の発足が伝えられた。そのそうそうたる参加ギルドやメンバーが紹介され、それはネット内の某有名サイトをも連日賑わせることになる。
因みに、わたしのなろう作品にもアクセスが殺到!
だけど感想欄には、『どうやってあれだけの大規模な連合を1日で作ったんですかあー?』という作品とは全く関係のない書き込みが沢山寄せられていた訳で…………なんか、もぅ泣ける。
──ぐはっ!
―アストガルド・ファンタジー【第二期】―
―完―
ここまでお付き合い頂き、ありがとうございました。感謝します!
本作品に対する感想・評価などお待ちしております。今後の作品制作に生かしたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。