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「ただいま~」
「あら、おかえりない、アリス」
あれから駅でみんなと手を振りふり笑顔で別れ家に帰り着き居間を覗くと、母さんがいつものようにスカイプってた。
「ところで、神社の方はどうだったの?」
「あは、ハハ……いや、それがもぅ~何というか、悲惨な結果で…」
「あらあら、彼氏とラブラブなことの一つもなかったんだ? それは残念ね」
──ラ、ラブラブっ!?
「あ、えっ、いやっ! な、何もそういうのを目的に神社へ行った訳ではないので…………っ!」
「ふぅ~ん……。相変わらず奥手でつまらない青春を横臥しているのねぇ~」
つ、つまらないとかそう言う問題ではないと思うのでありますが!
「ところでアリス、今日ギルドの方で緊急会議やるそうだけど、冬馬さんにはまったく相談してなかったの?」
「え?」
冬馬さん?? でも、なんでここで冬馬さん?
「あ、ぅん。だって、単なる思いつきでそう決めたから……あはは♪ 何か拙かったかな??」
「別に拙いということはないと思うけど。そういう無計画なところは、まぁアリスらしいわね。
お陰で冬馬さん、急に忙しくなった、とかボヤいて動き回ってるそうよ?」
「へ?」
それって、どういうこと??
わたしが目も点で訳分からないって顔をしていると、母さんは澄まし顔で肩をすくませ口を開いてきた。
「詳しいことは、母さんにもサッパリ。とにかく、手と顔を洗ってらっしゃ~い」
「はあ~い」
そのあと居間で30分ほどゴロゴロってご飯って風呂って、二階の自分の部屋へと戻る。
結局のところ、母さんもよく事情は知らないらしく。冬魔さんに直接確認するしかないみたい。
何だか、ちょっと気になるなぁ~。
そんな訳で、ギルド会議開始時間までまだ1時間ちょっとあるけど。わたしは早めにログインすることに決めた。
◇ ◇ ◇
「ライアスさぁ~ん、居ますかぁ? アリスでぇーす」
「ああ、アリスちゃん、いらっしゃい! それにしても、今日はまたやけに早いね?」
「はは……♪ よくわからないのでありますが、何やらあった模様で?」
「ふむ、何だか次から次に大変そうだね? はい、装備品。キッチリ直しといたから!」
「わお! いつもいつも、ありがとうございます!!」
「いやいや、それよりも籠手とアクセサリーが大破して無いようだから、レンタルで貸し出してあげてもいいけど。どうする?」
「あはは……♪ それはとてもありがたい申し出なのでありますが、今はリフィル不足なもので、また今度ということでよろしくお願いします」
「そんなの、別に気にしなくてもいいのに」
「いえいえ! それでなくても装備品の修理とかで、お世話になりっぱなしですから」
もぅ実際、情けなくて参るよぉ~。何しろ、カムカの実を買うのでやっとだもんなぁー。
はぁ~……。
わたしは笑顔でライアスさんと手を振り振り別れ、次に道具屋のボルテさんのところへと向かった。
「お! アリスちゃん、こんばんはっ! 今日も『カムカの実』の特売やってるよん♪」
「──おおっ! と、特売っ!!?」
って思わず喜んで浮かれちゃったけど。ボルテさんって、いつも言うことがテキトーだからなぁ~。怪しいよねぇ。
わたしは半眼の遠目にボルテさんを見つめ、口を開いた。
「とかなんとか言っちゃってさぁ~、実は高いんでしょ?」
「いやいや、なんと一個たったの5リフィル!」
いや、それって……普通に通常価格だし。
「しかも今なら10個まとめて、たったの60リフィルっ!」
「………………」
何だか、計算が微妙に合ってないような気がするのですが? というか、むしろ値段上がっていますよね??
「だけど、アリスちゃん特別価格で50リフィルにまけとくよっ! その代わり、胸をチラッと見せてねっ?」
「ハあ?! いや、それは遠慮しておきます……」
「その形のいい胸の先っちょを、ほんのちょっとだけ軽くツンツンさせて貰えるだけでも、嬉しいんだけどっ!」
「それも遠慮しておきますっ!! そういうのは無しで30個、150リフィルでお願いしますっ!」
「ええぇ~……」
ボルテさんは不満そうにしているけど、そもそも150リフィルが適正価格な筈っ!!
こちらはこの薬袋の中を今は満杯にすら出来なくて、大変なんだからさぁ~。本当に参るよ。
それでいて、財布の中身はホコリくらいしか出てこない空っぽ。
何だかもぅ……泣ける。