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アストガルド・ファンタジー  作者: みゃも
【第二期】、第9章《最後の一手! 『新・《ギルド連合体》』誕生!!》
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「わ! 思っていたよりも大きいなー!」


 神社は、駅から徒歩30分ほどにある住宅街の真ん中に広がる小高い鎮守の杜の中にあった。

 ここが住宅地の中であることを思わず見失ってしまうほどに白い注連縄で結ばれた立派な御神木らしき大きな木々が所々に立ち並び、恐らくは江戸時代かその前に作られたと思われる石畳の緩やかな階段と坂を登り切ると大鳥居があって、そこを通り抜けるといっきに視界が開け広がった。


 中央奥に見える拝殿らしき建物の他に、入り口近くからも小さな社が幾つも点在し、この大鳥居から入って直ぐの右手にも社殿が見える。その反対側には、御守りなども売られている社務所があった。


 既にこの広場には明日の祭りに備え、出店の支度が行われていて、お店によってはもうから商売を始めている人もいる。


「ああ、思っていたよりも立派なもんだろ? 余り知られてはいないが、ここの神主は若い頃、弓道の大会で日本一なった程の腕前なんだってさ」

「わ、それ凄いねっ! そんな人から手解きを受けられるんだ? 凄くありがたいっ!!」


 わたしは早速、右手の社殿付近で人気がある方へと向かった。思った通り、ここでやるみたい。社殿の右脇にある敷地の奥に的が幾つか並んであった。受付も既に始まってるようで、人がそこに並んでいた。

 それにしても……。


 的までかなりあるようだけど、わたしなんかでもあそこまで届くのかな??


 わたしはそんな不安を感じながら、苦笑い見つめ。それから太一達の方を笑顔で振り向き、口を開いた。


「じゃあ、ちょっと行ってくるね!」

「うん、頑張ってきて!! 応援してる!」


 わたしはみんなから見送られながら、受付まで行く。そしてそこで説明を受けて、驚いた。



「え? 破魔矢は自分で用意するんですかぁ??」

「はい。そうなります。あちらの売店でも売っておりますので、時間までに用意し、改めて起こしください」


 どうやら、そこで使う破魔矢は自分で買う必要があるみたい。考えてみたら、そりゃあ~そうだよねぇー?

 それにしても、なかなかこれは上手い商売かも? 賢いっ!!


 わざわざ向こうまで買いに行くのもアレなので、わたしはその場で売っている破魔矢を買うことに決めた。

 それを胸に抱きかかえ並ぶ。

 わたしの前には、16人ほど並んで居た。中には、明らかに彼氏彼女らしきカップルも居て。JKで未だに彼氏も居ないわたしとしては、何となく苦笑。今更だけど、かなり場違いな感じがする。


 あ~あ……太一も一緒にって、誘えば良かったかなぁ~?


 そう思い太一達の方をみると、3人でヤキイカを食べながら楽しそうに会話なんかやってる。

 何だか急に泣けてきたよぉ~……。


 そうこうしている間に、わたしの番がやってきた。

 が……それは期待していた神主さんじゃなくて、何故か巫女姿をした小学生か中学生くらいの女の子だったので、思わず唖然。神主さんはわたしの隣で、他の人に教えてるみたい。

 凄い不運なので、自分に呆れるよぉ~。


「何をやっておるのだ? 早く来ぬか。まだお前の後ろに待ってる者が居るのだからな、少しは気を使え、このバカたれ」

「はあっ!?」


 今の……この子が言ったんだよね??


 見目にも可愛い女の子からそんな想像もしない言葉使いを、しかも平然とした様子で言われたので、わたしは思わず…………目が点。しかも、白目?


 わたしがそうやって呆然する間もなく、その女の子は隣からスタスタとやってきた神主さんから頭を『ゴン!』と目が飛び出るほどの一撃で殴られていた。


 その様子を見つめ、別の意味でわたしは再び…………目が点。


「バカたれはお前だ、このバカたれがあっ!」

「何をするのだ、バカ親父!! 人がせっかく親切心で仕事を手伝ってやっておるというのに、もぅ辞めた! もぅ、やっておれぬ!!」


「ああ、勝手に辞めろ。その代わり、今月分の小遣いはやらん。ネットも使わせんから、覚悟しとけっ!」

「──ふあっ!?」


 ネット? この子が??


 たぶん、まだ12・13歳くらいだと思うんだけど。しかもこういう神社でこんな親子?喧嘩を目の当たりにするなんて、思ってもみなかった。

 女の子は、涙目に何かを訴えるかのような表情で神主さんを見つめていたけど。当の神主さんの方は、それをまるで無視するかのように再び弓術指南をやり始めている。


 それを見つめ、女の子は諦めがついたのか?わたしの方を不愉快気に見つめ、仕方なさそうに半眼で口を開いてくる。


「ほら……それを早く寄越せ。使い方を教えてやるから、ありがたく思えよ。精々、感謝しろ」 



 ──ゴンッツツ!!



 再び、神主さんから女の子は頭をど突かれていた。あまりの手早さに、わたしはまたしても…………目が点。


「──な、なにをするのだあーっ!?」

「なにをする、じゃないわいっ!! それが、お客様に対する態度か、このバカたれがあーっ!」


 お、お客様!? このわたしが??


 女の子は半泣きしながらも神主さんを見返し、口を開いた。


「客かもしれんが、今はこの私がコイツの師匠なのだ! つまり、立場が上ではないか? そうであろう!」

「むっ!? 一応、筋は通っておるな……この生意気な小童こわっぱめっ!」


「……ほぅ~。何やら憎たらしいが、認めたな? だったら文句は、もぅなかろう!? ホレホレ、近くにおられたら仕事にならぬから、向こうへサッサと早く行け行け、バカ親父っ!」



 ──ガンッツツ!!



 ……今回ばかりは、ある程度予想はしていたんだけど。また女の子は、神主さんかはぶん殴られていた。

 神主さんは清々した様子で、再び隣に戻り、指南を始めている。

 よくよく見ると、その神主さんの向こうにも神主さんと同じ常装の狩衣を着た20代半ばほどの男の人が弓術の手解きをやっていて、今はこちらを困り顔の苦笑いで見つめている。

 わたしはその人と目が合ったので、そこで同じく苦笑いを浮かべ。それから女の子の身体を軽く起こす。


「あの……頭、大丈夫ぅ??」

「だ、大丈夫なものか! このバカた……あ、いや、とにかく早くそれをこちらに寄越せ」


 言われ、わたしは破魔矢を女の子に手渡した。

 破魔矢は三本セットになっていて、どことなく普通の破魔矢とは違い簡素で、実用性が感じられる。まあ、これを実際に使って今から射る訳だから当たり前なんだけどね?


 射たあとは、今年の厄を討ったとして、最後にまとめて焼くんだってさ。

 その代わりに、破魔矢の代わりとなる御札をくれるらしい。五穀豊穣・合格祈願・安産に家内安寧、ついでに何でもありの効果があるんだってさ。かなり凄いよね??


「いいか? これは伝統的な和弓といってな、大弓とも言われているものだ。長さは2メートルもある。

因みに、弓道には色々な流派があるが。うちは神社でありながら、礼射系ではなく。武射系の系統に属する。

まあ、雑学はこの程度にしておくか? 面倒だし……」


 め、面倒って……!?

 いやまぁ~、早く打ち方を習いたいだけだから別にそれでも構わないんだけどねぇ?

 それにしても、淡々としたものだなぁー……予想以上に手慣れたものだから、びっくりしてしまうよ。


 わたしがそう思う間にも、女の子は説明を続けていた。


「基本的に弓は、左手に持ち。矢は、弓の右側にこのようにソッと持ってゆき……そのまま右手の親指の一番奥で、この弓の弦をこのように囲い持ってゆき、矢のうしろ端っこを人差し指の根元辺りで軽くこのように固定する。

こうしないと、弓の弦は引けないし。矢は放てないからな? 実に当たり前のことだ、わかるな??」 


 え、えーと……当たり前なほど、こちらは既にパニックっておりますが??

 でも女の子はこちらの様子など気にすることなく、説明を続けた。


「あと弦を引く時には、上からこのように大きく引き下ろし、矢を持つ右手は肩の辺りに。そして強さの要となる弦の位置は、耳の後ろ辺りへ来るまで思い切って引く!

あとは、このまま的を狙って射るだけだ。なっ、簡単であろう? 残りは、実際に射ってからにする。

ここまでのところ、大体わかったか?」

「……な、なんとなくっ!??」

 わたしのあからさま動揺ある返答を聞いて、女の子は半眼の困り顔を見せた。


「本当は、よくわかってないのだろう? 安心をしろ、大体のところ初めはみんなそんなものだ」

「あは、はは♪ ……いやまあ、はぃっ!」

 実際そうだったので、わたしは苦笑いながら頷き白旗を振る。

 

「とにかく、初めは真似事でよいから、言われた通りにやってみよ。何事も実際にやって試してみるのが、一番の早い近道であるからな?」

「ん、うん!」

 わたしは2メートルもある大きな弓を女の子から受け取り、矢も手渡された。それにしても重っ!!

 こんなものを、こんな女の子がさっきまで軽々と扱っていたのかと思うと、本当にびっくりだよ。


 わたしは取り敢えず、覚えている範囲内で真似事をやるが、その度に修正をされ、そうやってどうにか構えるところまできた!


「ほら、あとは的を狙って射る!」

「はいっ!!」

 わたしはグイッと引いて、矢を放った!が……矢は的まで届かず、ヒョロヒョロに。しかも、方向まで右側にズレてた。


 ──ぐはっ!!


 それを見て、女の子はお腹を抱え爆笑している。ヒドいなあーっ!?


「で、何で飛ばなかったか、解るか?」

「え?! えと、矢を放すのが早かったから??」


「うん。それもあるが、腰が引けていたし。左手が少し曲がっていたからだ。間抜けめ。

あと、放った矢の軌道が右へ逸れた理由は解るか?」

「え? そ、それは……右に矢を向けて放ったから??」


「半分ハズレ。私が教えた通りだと、矢は基本的に右に逸れるが道理だからだ」

「──ハ!?」

 な、なによそれっ!! 本当にヒドいなあーっ!


「まあ、これから手本を見せてやるから、よーく見ておれ!」


 女の子はそういうと、素早く大弓を振り向き様にサッと構え、間もなく射る!

 凄い素早かったのにも驚いたけど、まるで大弓のミレネさん並みの高精度で、それは的の中心付近に命中していた。が、


「……ちっ。少し、中心からズレおったか」

「──れ、レベル高っ!!」

 この子、見た目はこんなだけど。本当は大人なんじゃあー!?


「で、先ほどとの違い、何か気づいたか?」

「え? なにが??」

 わたしが、訳わからない、って顔をしていると。女の子は呆れ顔の半眼を見せ、言う。


「……ふん、これだから素人は困る」


 ──ぐはあっ!!


 前言撤回! この受け答え、絶対子供だよっ。言葉遣いはなんか変な感じで、大人びてるけどねぇ~?

 わたしはそのあとも散々言われた挙げ句、残り2発も見事に外し、あえなく終わった。


 もぅ悲惨だよぉ~。


「アリス、もぅ終わったー?」

「──えっ?! ありす、さま??」

「あ、うん。いま丁度終わったとこ。結果は聞かないで」


 わたしは笑顔で近づいて来た真中に苦笑いながらそう答え、大弓を女の子に返した。が、何故か女の子はかなり驚いた表情をわたしに向けていた。


「?」

 わたしはため息をつき軽くお礼を言って、真中たちが居るところへと歩き向かう。

 とりあえずハッキリと言えば、わたしにはどうも才能がないということで……はぁ~。




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