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南出入り口へと向かい走りながら、わたしはメモを取り出して今回試してみたいスキルの組み合わせを再度確認した。
「……先ずは、アルカマ・アローから試すのが良いよね?」
わたしは即座に黒魔法を発動、それから素早く最高位・召還術士スキルを唱えた。
『汝、我と共に在れ……《アルカマ・アロー!》』
先程発動したファイアが、アルカマ・アローの中へと吸収吸引され、スキル一覧が表示される。
ここまでの流れは、フェル系の召還魔法と全く同じみたい。
わたしは直ぐに、期待出来る名称のスキルを選択し、発動した。
「《アルカミックファイア・アロー!》」
途端! わたしの目の前に光り輝く円形の魔法陣が展開し、それに遅れ驚くほどの波動がこのわたしを襲うと同時に、スキルが発動された!
発動したスキルは、物凄いスピードと赤色に眩く光り輝く光跡を残しながら、フェイトさん達を一瞬にして追い越し、その先に居る天山ギルド本営軍へ向かい迸り、1人のプレイヤーを貫通し、導線上に居る複数のプレイヤーをも貫通していた。
それで数人が余りの痛さに身体を押さえ倒れ、中にはそのまま消滅する者までも居る。
「──ぅわっ! 凄っ!!」
自分でもびっくりだよ、コレ!
この魔法、《貫通弾》なんだ? しかも、凄い長距離射程範囲!!
流石に大弓ほどではないけど、これほどの長距離射程の魔法はこれまでなかった。
「アリス、今のすげぇーな!! この前、新しく手に入れた派生スキルか?」
「あ、はい!! 実は自分でも驚いてまして……しかもコレ、凄くコスパもいいです!」
アルカマ・アロー自体は、最高位・召還魔法なので、精神消費量が激しいけど。ファイアは、下位黒魔法なので消費量が少ない。
召還魔法としては珍しいくらい、とてもコスパが優れてると思う。
とは言え……カムカの実を食べ続けてないと無理なのは、変わらないんだけどね。そんな訳で早速、ポリポリ……。
そう思いながら南出入り口を見ると、先ほどの召還魔法に天山ギルド本営軍は怯んでいるようだった。
「ハハ! これは絶好の機会が生まれたようだな」
「流石は、アリス様です!」
「よし、この隙に斬り込むぞ!」
「「にゃにゃん!!」」」
「モグ、モグモグっっ!」
南出入り口で苦戦していた味方の軍を追い越し、わたし達デッキ軍は、怯む天山ギルド本営軍を追撃開始!
もちろん、無闇に深追いしないよう細心の注意しながらね!
ミレネさんの長距離大弓スキルで、1人1人を貫き倒し。フェイトさんやザカールさんとアザミューナさん、それからランズベルナントさんたち近接組は、未だ怯んでいる相手をなぎ倒し交わし、囲まれた所で連続スキル発動し周囲の敵を一掃していた。
特に、アザミューナさんとザカールさん達の活躍が素晴らしく目覚ましい!
そしてわたしは、強敵が現れた所へ《ステルス・ホールド》を掛け、フェイトさん達を臨機応変に支援する。
更にタイミングを見つけ、先ほどの《アルカミックファイア・アロー》を放つ!
2回目の使用で気づいたけど、このスキルは相手の防具を完全に無視して貫通してるっぽい。
つまり、相手の防具を痛めることなく、倒すことが出来るみたい。
たちまち南出入り口に居た天山ギルド本営軍は、総崩れとなり、一時引き上げ始めている。
わたしはそのタイミングで、もう一つ試したいスキルを仕掛けることにした。
新しく手に入れた、派生スキル《メテルフォルセ》だ。
基本的な使い方は、フェルフォルセと同じだと思うので、先ずは白と黒の2つ魔法を先に発動し、わたしは最高位・召還魔法スキル《メテルフォルセ》を唱えた!
が、スキル一覧に何も表示されない…………って、まさかの失敗ですか?
──ぐは!! そんなバカな……。
仕方ないので、別の組み合わせでメテルフォルセを唱えた!
が、やはり……失敗??
わたしは泣きそうな思いで、魔聖水を一気飲み! 失敗してるのに、精神力はちゃっかりと消費しちゃうから参るよ…。
そんな訳でまたしても素早く、また別の組み合わせでメテルフォルセを唱えた。
が……またしても、失敗?
何なの、コレ?!
全然ダメだし……それでいて精神力の消費、半端ないし…。
「──ぅわあ!! いッ……」
わたしがそう思いカクリと肩を落としていると、突如としてその肩に弓矢が突き刺さる。
それで肩当てが半壊し、わたしはその痛みに堪えかね、思わず膝を落としてしまった。
「アリス!! 大丈夫か?!」
「だ……大丈夫! 平気です!!」
わたしは痛みを堪えながら、直ぐに立ち上がる。
こんな所で……膝なんか落としてられない! そう思ったから。
怯み撤退していた天山軍が、そんなわたしの様子を見て、大挙し一気に引き返してくる。
──このまま、やられてたまるか!
わたしへ向け沢山の弓矢が飛び交い、頬を掠め、一筋の血が流れる中。わたしはその数知れない攻撃を、致命傷にならない程度のギリギリの所で交わし。空かさず、魔聖水を一気飲み、そして再びアルカマ・アローを使って新たな組み合わせに挑むことにした。
先ずは白魔法の《レジナ・ブレイク》を発動、それから最高位・召還魔法スキル《アルカマ・アロー》を発動。選択可能一覧がちゃんと表示されたので、ひとまずはホッと安心。
その中から、使えそうなスキルを選ぶ。
「《アルカミックレジナ・ストーム!》」
すると、わたしを中心に青白い光りが周辺に広がり竜巻を起こし、天井まで行き着き消えた。
コレ……範囲内としては微妙に狭い気が?? もしかしてコレって、カス・スキル確定ですか?
ぅは!
またしても、連続でやってしまった……。
わたしがそう思い落ち込んでると、世界チャットにこんな書き込みがされた。
『──ぐは!! アリスの今のスキルかなりヤバいぞ! 攻撃力自体は対したことないけど、防具全部被弾させられた!!』
『オレもだ……お陰で、一つ壊れされた』
『撤退だ、撤退!! ひぃぃー!!』
「…………」
これは……何と言いますか、自分なんかがやられたら特に凄くイヤな感じの、スキル効果な様で…。
しかもコレ、範囲魔法だし。敵から囲まれた時になら、有効かも??
でも普段使いとしては、出来たら避けたいかなぁ……。なんか相手が、可哀想過ぎるもんね?
只でさえ、鬼仕様のゲーム設計なのに、なんてヒドいスキルを用意するんだろうね……ここの運営は!
「よし、オレ達もこれで下がることにしよう!」
「あ、はい!!」
「アリス、余り無茶はしないでくださいよ。装備品がもうから、かなりやられてるじゃないか……」
太一ことランズベルナントさんから心配気にそう言われ、わたしはそれに対し困り顔の苦笑いで返した。
「はは……流石に全ては避け切れなくて…」
「それにしてもアリス様、凄いです! このミレネ、感服致しまして御座います♪」
ミレネさんは走り戻りながらそう言って、わたしに寄り添い『ゴロにゃん♪』してくる。
わたしはそんなミレネさんを微笑み見つめ、カムカの実を薬袋ごと、ザアーッと口の中へと入れ、モグモグとリス顔で食べる。
そんなわたしを、ミレネさんはキョトンとしたあと苦笑い、困り顔で見つめていた。
遅れ、わたしもそのことに気づき苦笑う。
それにしても……メテルフォルセの使い方が、まるで分からなかったので参るよ。
かなり難題な課題に、わたしは思わずため息をついてしまう。