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炎の城南門から出て間もなく、最初の拠点が前方に見えた。
「よし! 先ずはあれから落とす」
「「「にゃにゃん!!」」」
拠点はあっという間に陥落。
大体3分くらい?
そう言えば今回、新たに手に入れたスキルを試す予定だった。でも、無駄に精神力を消費する訳にもいかないので、ここは慎重にやらないとね。
わたしはそう考えながら、メモを確認。事前に色々な組み合わせを考え、コレに書き込んでた。
だけどまだ試してないので、実際に使えるのかどうかすらも不明なんだけどね?
わたし達パーティーは次々と周辺拠点を制圧し、決戦ポイントを稼ぎまくってた。
が、状況は間もなく急変する。
『炎の城付近の拠点へ、天山ギルド本営軍、来襲。位置は、北部と西部拠点周辺。
近くのパーティーは、状況報告を願う。但し、深追いは回避して!』
冬馬さんからの、緊急を知らせるアナウンスだ。
「フェイトさん!!」
「ああ……もう来たみたいだな」
「まだ、判断するには早いが。ここは一旦、引き返したがよくねぇかぁ?
こんなところで孤立なんかさせられたら、困るからな」
ザカールさんの意見に、みんな頷いた。
そんな訳で早速、炎の城へと向かう。
「……あ!」
炎の城から南にある拠点が、天山ギルド本営軍に攻められていた。しかもそれは、デッキパーティーシステムで編成した1軍。
とても今のわたし達パーティーの戦力で、まともに戦える相手ではなかった。
「やべぇな……ここは気づかれないように遠回りして、炎の城を目指すしかねぇか?」
「待って!! ちょっとレーダー確認してみ! それどころじゃないみたい」
「「「──!!」」」
マーナから言われ見ると、周辺マップレーダーに多くのプレイヤーマークが表示されていた。しかもそれは、どれもこれもデッキパーティーシステムで組まれた軍ばかり。
間違いなくコレは、全て、天山ギルド本営軍だと思われる。
それにしても、なんて凄い数の規模……。
「こりゃ……大手3ギルドだけの参加じゃないのは、間違いねぇな?
本格的に、組織ぐるみでやって来たって感じかぁ?」
「わざわざ宣戦布告までして来たんだ。そんなのは当たり前の話だろう?」
「今はそんな呑気なことを言ってる場合か!
アリス様、ここは強引にでも突破して、炎の城を目指すべきです!!」
「あ……ぅん! そぅ、だよね?」
「よし。アリス、そんな訳で《ゴッデス・ウィング》を頼む。それで一気に、ここを突破しよう!」
「──あ、はい!!」
わたしは直ぐさまに上級白魔法〈パラスファリネ〉と上級黒魔法〈ゼクロムファイアボム〉を発動、そして即座に上級召還術スキル〈フェルフォルセ〉を唱えた。
『汝等、我と共にあれ……〈フェルフォルセ!〉』
途端に発動可能一覧が表示され、空かさず《シェイキング》する。と、いつものように青白い光を放ちながら隠しスキルが現れる。
わたしはそれを直ぐに選び、発動する!
『《ゴッデス・ウィング!》』
パーティー全員の攻撃速度、魔法発動速度、防御反射速度、移動速度を含めた全てが180%上がる。効果時間、約3分。
「こりゃあ……噂には聞いていたが、スゲえもんだなぁー!」
ザカールさんだ。
そう言えば、ザカールさんもアザミューナさんもこれを直接見るのは初めてになるんだっけ??
わたしはそんなことを思いながらも早速、カムカの実を数粒ポリポリと食べた。でもまだとても足りないので、追加で数粒ポリポリと食べる。
頬がまるでリスみたいに膨れているけど、今はそんなこと気にしてられないもんね?
ところがそんなわたしを、パーティーみんなが呆れ顔で遠目に見つめていた。
あ、いや、待って! そんな風に食いしん坊でも見るみたいな表情で見ないでください……。
なんか、泣ける。
「よし! 行こう!!」
「「「――にゃにゃん!!」」」
「にゃにゃ~ん……げふん…」
◇ ◇ ◇
一気に突破しようとするわたし達パーティーの存在を、天山ギルド本営軍は直ぐ様に気づいたようで。こちらに走り向かって来た。
が、それをミレネさんが超ロングレンジ大弓スキルで速射し、高精度で1人1人貫き倒している。
でもその間、ミレネさんの足が止まっていた。
「ミレネさん!! いいから早く、急いで!」
「アリス様! 私のことは構わなくていいので、早く行ってくださいませ!!」
「──!?」
……そんなこと、出来る訳ない。無理だよ!!
「アリス! ここはミレネさんに任せて、早くお前も来い!!」
「イヤです!! フェイトさん達は先に行っててください!」
「「──!?」」
わたしは空かさず、上級白魔法〈レジェヌドール〉と上級黒魔法〈ファイアスピリッツ〉の2つ魔法を発動、そして〈フェルフォルセ〉を唱えシェイキングする。
『《合成召喚:火の隷ファルモル!》』
それから空かさず、ミレネさんに向かう天山ギルド本営軍先鋒に対し、自動オープン・ターゲットフラグを合わせた。
「あの者たちを、なぎはらえ!!」
ファルモルはそれを受け頷き、物凄い勢いでターゲットプレイヤー達を襲ったあと、役目を終え消え去る。
流石の天山ギルド本営軍もそれで怯み、その場で足を止めていた。
「ミレネさん! 今のうちに、早く!!」
わたしとミレネさんは、共に炎の城へと向かい走る。
が、そこには……フェイトさん達が待ってくれてた。
「バカ……余り無茶をするな。こんな所で、オレ達を束ねるGMが倒されたら、話にもならないだろう?」
「ん、ぅん……はぃ。すみません…」
それで落ち込むわたしの背中を、アザミューナさんが軽く手でポンと叩き、「なるほどね。ようやく今、分かった気がするわ……このギルドが、アリス、あなたをGMとして迎えた理由がね♪」と優しげに微笑み言った。
「………」
前にも思ったけど、やはりアザミューナさんとはどこかで合った気がする。
だけど、どこでだっけ??
不思議と思い出せないんだけど。
それに今は、そんなこと考えてる時じゃないよね?
こうしてわたし達パーティーは、天山ギルド本営軍に追われながらも、多くの仲間たちが待つ炎の城へ、全力で走り向かう。