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「アリス、今回の作戦内容は理解しているな?」
「ん、ぅん! 先ずは炎の城周辺の拠点を制圧し、何かあれば炎の城まで直ぐに撤退!! ですよね?」
《決戦》開始間際、いよいよカウントダウンが始まると同時にフェイトさんから急に問われ、わたしは直ぐにそう答えた。
「正解♪ じゃあ、行くぞ!」
「はい!!」
わたしはシステム・アナウンスに答え、決戦場へと暗転移動する。
決戦場内にある炎の城へと、光を放ちながら降り立ち。わたしは事前予定通り、決めていたメンバーでパーティー編成を直ぐに組む。
今期から《決戦》のルールが変わり、それまで《大決戦》にしかなったデッキパーティーシステムが決戦でも取り入れられていた。
とは言っても、その仕様は大決戦のものとは大きく異なり、フォローパーティー2セットの合計24名までとなっている。
ギルド間の自由な編成も不可。
それもあって今期から、ギルドレベルキャップが解放され、最大レベル10からレベル20までとなり、ギルド定員数も2倍の120名となっていた。
だけど、うちは未だにギルドレベルが8なので……。詳細は、大体こんな感じ。
◇ギルドレベルキャップ上限解放、10→20へ。
◇ギルドレベル1→10名、
レベル2→20名、
レベル3→25名、
レベル4→30名、
レベル5→35名、
レベル6→40名、
レベル7→45名、
レベル8→50名、
レベル9→55名、
レベル10→60名、
レベル11→65名………………99→110名→100→120名。
つまり、ギルドレベル8の現状では、デッキパーティーシステムで編成すると2軍までしか組めない。なので、ここは敢えてデッキパーティーは組まず、基本的な8人パーティーで編成し、先ずは周辺拠点を取りに行く作戦だった。
因みに、冬馬さんは炎の城内待機とし、臨機応変に軍令を発して貰うことにしている。
今回のわたしと組むパーティー編成は、《フェイトさん》《ランズベルナントさん》《マーナ》《カテリナさん》《ザカール=ギブンさん》《アザミューナさん》《ミレネさん》そして、わたし……《アリスでごさいありんす》
「よし! 決戦開始と同時に南門へ向かい、そこから近場を狙う!!」
「「「にゃにゃん!!」」」
「え?! にゃ……なに??」
アザミューナさんだ。
「あ、これ……うちのギルド特有の掛け声のようなものなので!」
「あら……そうだったの? 何だか可愛いじゃないの♪ じゃあ、次から合わせるから」
わたしは、そんなアザミューナさんに笑顔を向ける。
と、その時。天龍姫さんから唐突に、ライブチャットの要請が入る。
それと同時に、世界チャットにも『天山ギルド本営』発の緊急を知らせる告知が乱打されていた。
わたしは驚き、直ぐにライブチャットを開く! と……。
『本日、この時より。我が天山ギルド本営は、黄昏の聖騎士にゃんに対し、《宣戦布告》を致します。
尚、これを以て速やかにギルドから除隊する者は、その対象外とする。
但し、開戦開始後の除隊は、それを我々は認めるつもりはないので御留意なさい。
……また、これについての例外は一切、認めないものとする。
ギルド《グリュンセル》に《黒騎士団》、あなた方も同じですよ。お覚悟なさいね?
以上です』
「「「──!!」」」
皆が驚き見つめ合う中、わたしは思わず涙を落としていた。
その時に見せた、あの天龍姫さんの表情が余りにも真剣で、冷ややかだったから……。
「そんな……まさか、あの天龍姫さんが…!?」
「……ちっ! ここにきて、心理的揺さぶりを仕掛けて来たか。相手も、相当な策士だなぁ?」
「アリス様!! しっかりとなさりませ! 今更、寝返るような真似は致しませんから、ご安心を!!」
わたしは、ミレネさんの言葉に、ビクッとした。
そ、そうだよね……こんな時だからこそ、わたしがしっかりとしないと!
わたしがそう思ったのと、ほぼ同時だった。
『……念のため、お伝えしておく。我が《黒騎士団》は、今更方針を変えるつもりなどない。
以上だ』
黒騎士団の団長ギリゥさんが、ギルド同盟チャットにそう断言してくれた。
それに遅れ、グリュンセルGMグランセルさんも『我がギルドも同じく、今更方針を変えるつもりはない。そもそも覚悟の上だ!』と力強く言ってくれた。
わたしはそれで勇気を貰い、大きく息を吸い込み、口を大きく開く。
「全、ギルドメンバー及びギルド連合に報告!!
『ありがとうございます! この度のこと、感謝致します!!
大丈夫です! 状況は、以前とそうなんら変わりありません。各自、予定作戦通りの行動を願います!!
わたし達は、なんとしてでも生き残ります!
いえ…………絶対に、勝ちます!!』」
『『『──ぅおおー!!!』』』
ギルド連合みんなの喝采が、そこで沸き起こった。
そうだ……アザミューナさん達を迎え入れた時点で、こうなることはある程度予想出来ていた。
だけど、迎えいれてなければ、どの道。わたし達ギルドや今回救いに来てくれたギルドの人達までをも巻き込む形で、助かる見込みがとても薄かったろうなと思う。
相手は、天山ギルド本営加盟の大手3ギルド。
これを迎え撃てば、恐らく天山ギルド本営本体も結果として動く他ない。下位ギルドに負けたままで、決戦を終える訳にはいかないから。
そんなことになったら、天山ギルド本営は、本当に終わる。
だから間違いなく、来る!
そう、どうせ結果が同じならば……と、冬馬さんはそこまで先を読んで、今回の思い切った策に出たんだと思う。
ということは、次に予測されるのは──つまり……!!
わたしはそこまで考えが至り、炎のエレメント・イルオナさんの足元で思い耽る冬馬さんを真剣な眼差しで見つめた。
本当に、この人は……天性の策士なのかもしれない…。だけど、
「アリス、行くぞ!!」
「──あ、はい!!」
わたしは皆が南門へと向かうのに少し遅れ、直ぐに追い掛け走り出した。