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そんな訳で、わたし達は幻聖獣アルケミフォス討伐へと向かう。もちろん、新スキルの効果がまるで無いと判った時点で即時撤退!
だってさ、リフィルの無駄だもんね?
目的のレアモンスターが居るとされる周辺は、深い霧が立ち込めていて視界が凄く悪かった。
その中に、ルミナスオーブ光を発しながら見え隠れしながら移動する大型モンスターの気配を感じた。不思議と、レーダーには全く反応がないんだけど、間違いなくそこに居るのは確か。
「……準備はいいか? アリス」
「あ、ん、うん!! スキルセット完了してあるから、いつでも大丈夫!」
「では、行こう!!」
フェイトさんの掛け声と共に、わたし達は《幻聖獣アルケミフォス》へアタック開始。
わたしはスキルセット内から《トレラント・ブレイク》を素早く選択し、発動!
が、流石に最高位召還術士スキルだけあって、その消費精神力は半端ない……。瞬間、意識を失いそうになるほどだった。
カムカの実が直ぐに無くなりそうで参るよ。
わたしがそうこう思っている間にも、スキル発動と同時にわたしの身体は勝手にスキルと連動動作し、左右の手と腕を大きく動かし掌の上辺りに光を発しながらそれを合わせ、ターゲットである幻聖獣アルケミフォスへと《トレラント・ブレイク》を仕掛けた。
不思議な光を放ちながらそれは当たり、アルケミフォスはそれでこちらに気づき威嚇してくる。
なんか怖いなぁ……。
しかし!
《トレラント・ブレイク〈成功〉》
〔全耐性-50%ダウン。防御力-40%ダウン。効果時間:2分〕
「──キ、キタ?!」
「ぅあ?! 本当にキタ!」
「ぅおおお!! やったな!」
「ハハハ! これは良いな! これならもう1人来るの待たなくても、倒せるじゃないのかぁ?」
「うぇええ…………本当にやるんですか?」
「あの……冬馬さん。お願いですから、もぅちょっとやる気出してください…」
「ハハ……まぁ、そうだな。折角だから、ちょっと頑張ってみるか?」
「「「にゃにゃん!!」」」
「ぇええー!!」
そんな訳で、冬馬さんの不平不満はほっといて討伐戦、本格開始!
わたしはその間にも、カムカの実をもうからポリポリと食べることにする。だってこの精神力の消費量を考えたら、とても追いつかないから。
本当は、他にも新たに手に入れたスキルを試したいんだけど、この消費量を考えると何というか悩ましい……。
幻聖獣は偶にその姿を消し、唐突に全く違う場所に現れ、わたし達に攻撃を仕掛けてくる。また分身のような幻獣を沢山呼び出しては、撹乱し、全方位衝撃波型の魔法を使うかなり厄介な相手だった。
でもアルケミフォス討伐は思いのほか順調で、打撃も技も術もトレラント・ブレイクのお陰で、それまで鉄壁の防衛力を誇っていたアルケミフォスに対し、普通程度に攻撃が当たり、やがて部位破壊成功し凶暴化するところまで遂に来た。
というかコレ、ヤバいくらい急に強くなってない??
「クッ……黒龍と同じで、コイツもここで攻撃パターンが変わるみたいだな」
「ええ……これは思っていたよりも大変そうです」
「だから最初から、辞めておけばよかったのに……」
「……冬馬さん。あとで個人的にお話が…」
「まさかの告白? それなら凄く嬉しいな♪」
「何でそうなるんですかぁあー?! 違いますよ!!」
「そうです! アリスはこの僕の彼女なんですから、手を出さないでください!!」
「「「──!?」」」
ランズベルナントさんのドサクサに紛れた衝撃的な発言に、みんなコチコチに固まる中……わたしはそれを否定することなく、ただただ全身真っ赤に染まり俯き、身を縮めた。
嬉しいような、恥ずかしいような……。こういう時、どう反応したらいいのか分かんないよ…。
「…………あのな、何だか楽しんでるところ悪いが。今はそんな、ラブラブやってる時じゃないだろう?
ここまで来たら、もうやるしかない。違うか?」
あ、カテリナさんの言う通りだ! みんな装備品も痛み、今日はこのあと二回目は多分ないと思う。トレラント・ブレイクを使っているとは言っても、それでも下手すると通常の黒龍よりも強いかも?
今はモンスターレベルが下がっているので倒せそうな雰囲気なんだけど、前期程度のモンスターレベルだと例えトレラント・ブレイクがあっても倒すのはやはり困難な相手みたい。
でもそれは逆に言えば、『今のうちなら、倒せる可能性がある』っていうことで……。
「……そうだな。悩むまでもない、ここまで来たら意地でも倒そう!!」
「「「にゃにゃん!」」」
幻聖獣アルケミフォスは、防御不可能な攻撃を偶に仕掛けてくる。わたしの装備も既に幾つか壊されそうなので、流石に心配な状況に……。
「──って?! ぅわ!!」
瞬間的に襲って来た半透明の青白い全方位型衝撃波をまともにわたしは受け、籠手がアッサリと耐久力0大破……消滅。
──ぐは!! ぅ、うそぉおおおー!!
なんでぇええーー!?
籠手ばかりか、今は他の装備品もヤバいよ!
でも、だからといってここでわたしが離脱する訳にはいかない。2分間の効果時間が切れる前に、定期的にスキルを発動!
でも偶に失敗があるので……独り凹みながらも再び発動を繰り返す。
そうしてようやく、幻聖獣アルケミフォスは咆哮を上げ光り輝く塵と化し閃光を放ちながらその姿を消した。
やった!!
間もなく、僅かばかりの経験値とリフィルが入る……。この損害に対してこの報酬は、ヒドいかも?
そしていよいよ、待望のドロップアイテム報告! というよりか、これで何も落とさなかったらわたしこれでもぅ詰んじゃうかも…………?
それくらい今回の討伐戦で装備品はズタズタにされた。壊れた装備品もあるし……はぁ。
だって黒龍なら離れてさえいれば被害はないけど。アルケミフォスが偶に仕掛けてくる攻撃の中には、信じられないくらい広範囲なものまであるから、そればかりは避けようがなかった。
まぁ……今はドロップアイテムに期待しよう。
【アイテムドロップ】
『幻獣の角』(SSレア素材)
『アルケミフォスの大爪』(SSレア素材)
『腐った杖』 ←何コレ?
『毒リンゴ』 ←何だコレ??
『幻獣アルケミフォスのサッシュ』(SSレア防具) ……え?
ぅわ!! なんかキタ、コレ!?
早速、どんな装備品なのか確認!
【《幻獣アルケミフォスのサッシュ+3》
全耐性+10:精神力+267:意志力+12:敏捷+4:スキル発動速度+8%アップ:移動速度:6%アップ:運-15】
「……え? どわぁあああー!! なんか凄いのがキタ!?」
これ、わたし。
「マジか! やったな、アリス!! まぁ、オレの方はハズレだったが……」
フェイトさん、残念でした……。次に期待しようね!!
「ハハハ! 僕にも凄いのが来ましたよ」
と、ランズベルナントさん。良かった、わたしも嬉しい! 凄く嬉しい♪
「私も素材だけどキタ!」
マーナ、やったね♪
「私は……微妙かな?」
カテリナさんも、残念でした……。
「……悲惨でゲロ」
カエル軍曹さん。ゲロって、何?? 仮想世界の岡部くんには、なんだか凄くガッカリです……。
「やっぱり、参加するんじゃなかったかな……」
冬馬さん。悲惨だったのは残念でしたが、もぅ少しやる気の方お願いします……。
わたしは、そんな冬馬さんを半眼の遠目に見つめ口を開いた。
「あの、冬馬さん。あとで個人的にお話が……」
「告白? やあ、それは嬉しいなぁ~♪」
「――はあっ!? ですから、それ違いますって!!」
そんなこんなで大変ではありましたが、討伐に成功!
その実績は、世界チャットでも金文字で《討伐報告:黄昏の聖騎士団/フェイト/【幻聖獣アルケミフォス】討伐、〈成功〉》と流れ、多数の人達に確認されてしまい。またしてもそれで暫く騒がれることになる。
因みに、わたしのなろう作品にも、久しぶりにアクセスが殺到! だけど感想欄には、『どうやって倒したんですかー?』という投稿作品とは全く関係のない書き込みが沢山寄せられていた訳でありますが……。
なんか、泣ける。