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アストガルド・ファンタジー  作者: みゃも
【第二期】、第4章《デュセオルゼ【亜種】討伐!》
64/213

-3-


 今日は久しぶりの黒龍王デュセオルゼ=ヴォルガノフス討伐に、わたしはドキドキワクワクしていた。

 山岳地帯の奥地で、相も変わらず黒龍は呑気にすやすやと眠っている。

 それにしても、


「ぅわあー! 相変わらず大きいなー!!」

「まぁな。そんなことよりもアリス、例の外交メールについても話し合いながら討伐するから、《ギルドチャット》と《パーティーチャット》をちゃんと使い分けてくれよ」


「ん、うん。気をつける!!」 


 うちは基本的に何を決めるにも《合議制》なので、大きな問題についてはギルドメンバーと相談して決めるルールになっていた。そんな訳で、今日は黒龍狩りしながらギルドメンバーと会議というかなりハードな会合をすることになった。

 みんなやっぱりある程度レベリングしないとダメなので、時間を惜しんだ結果こうなった感じ。わたしなんかは、自分自身が逆に討伐されないよう気をつけながらの黒龍討伐になりそうなので、ちょっと心配だよ……。



「では、いくぞ!!」

「「「にゃにゃん!!」」」 


 フェイトさんの合図で黒龍討伐戦、開始!

 突如として眠りを妨げられた黒龍王は激昂し咆哮を上げ、ギルド会合はそんな中で開始された。



『議題は皆さんにお伝えした通り、現在敵対関係にある『対・天山ギルド本営』に所属しているギルド《薔薇の騎士団》関係者からの外交交流打診についてです』

『皆の意見を聞きたいので、遠慮なく!』


『では遠慮なく聞かせて貰う。

その者は、正式なギルドを代表とした訪問なのか? また、その者の目的はなんだ? この2点を先ずは教えて欲しい』


 カテリナさんだ。

 今わたし達と一緒に黒龍狩りをやっているのに、随分と冷静な物言いなので思わずビックリしてしまうよ。わたしなんて黒龍相手に逃げ回ったり、補助スキル発動したり、ただそれだけで目一杯なのにさぁ……。


「アリス、悪いがその辺りを本人に確認してみてくれ」

「あ、はい!!」


 わたしは言われ、早速ザカールさんに質問。そしてそれは予想以上に早く、直ぐに返答がキタ。



『正式なものではない。あくまでも個人的興味からだ。そもそも正式に訪問できる状況に今現在置かれていないのは、そちらも承知の通りだと思うが……?

ギルド関係で考えれば、今は双方敵対しているのだからな。だからあくまでも今回は、〔個人的な訪問〕だと理解願いたい。

もう一つの疑問、訪問の目的についてだが、〔現在敵対関係にある、貴ギルドに大変な興味がある〕ということ。また、〔天山ギルド本営が噂通りの独裁運営なのか、物見したい〕この2点のみである』



 ──お、重っ!!

 外交関係の会話……わたしにはちょっと無理かも…?



『すみません! これから返信内容コピペしますので、各自閲覧願います!!』


 わたしはコピペって、ギルドチャットで回覧。それから皆の反応を待つ。

 そうこうしてる間に、黒龍王デュセオルゼ=ヴォルガノフスは絶叫をあげ倒れた……。



 って、あれ? こんなにも弱かったっけ??



 あ、そうか!! 今はワールドリセット直後だから、モンスターレベルが初期化され弱体化しているんだ! それにしても……こうも違う訳?


 アイテムドロップは外ればかりだったけれど、経験値やリフィルは普通に入った。フェイトさんの指示で、わたし達は更に奥地へと向かい、黒龍王討伐を続行する。そしてその間にも議論は続いていた。



『個人的興味とか、意味不明だな……それに受け入れることで、うちのギルドになんの得がある? ギルド内情報が漏れるばかりか、他の連盟ギルドから無闇に警戒されるし、損なことばかりだろ? それでなくとも今のうちのギルドは微妙な立ち位置に居るんだから、拙いんじゃないのか?』


 カテリナさんのその一言で、ギルド皆の意見もそれに沿った形になってゆく。


『……だよな? 下手をすると、天山ギルド本営から追放され兼ねない』

『それは困るな……』

『うん。困る困る』



「……それはない、とは言えなくもないですよ。アリス様…」

「──!!」


 ミレネさんだ。

 実は約束もあって、今は同じパーティーで一緒してるんだよね? そんな中、今日は会合もあったので事情を話したら、『それならば《天山ギルド本営》の代表として、議論に参加したい!』という要望があったので、一時的にギルド加入してギルドチャットにも参加して貰っている。

 


「今回の訪問、このミレネ、余りオススメ出来ません。もちろん実際にどうするかはアリス様の判断でいいと思いますが。何だか不安で……」

「……不安になる気持ちも分かるけど、ザカールは信頼に足る人格者だよ?」

「「「──!?」」」


 冬馬さんだ。

 実は、冬馬さんもわたしと同じ地雷だし、同時にこの議論に参加して欲しかったので、もう強引にパーティーに入って貰って一緒に黒龍狩りをやっていた。


 冬馬さんを最初誘った時、『えぇー……でも面倒だしなぁ…』ってイヤそうな顔を露骨にされちゃったけど。そこは、『お互いに! 地雷からの脱却!!』わたしのその気合いを入れた精一杯の一言で、もぅ強引に引っ張って来た。


 それに今期から最大8人パーティー編成に仕様が変更されていたので、地雷2人でも何とかなるからというフェイトさん達のフォローもあったから叶った。


 それにしても……。


「冬馬さんは、ザカールさんをご存知だったんですか?」

「うん。前期では同じギルドに所属していたからね」

「「「──?!」」」



 ──そ! それならそうと、早く言って欲しかったかも~……はぁ。

 わたしは早速、ギルドメンバーへその情報を伝達。



『どうやら……ザカールさんは、冬馬さんの知人だそうで。信頼できる人物、とのこと。その事を含め、更なるご意見願います』 

『──知人?!』

『では噂に聞く、冬馬さんと常に随伴するランカーの1人ということか?』

『いや、既にそういった者達は離反済みの筈だが……。しかし、その可能性はあるってことか?』

『どうもこうも、本人と一度直接話さないことには何も分からないな』


 最奥地で新たな黒龍王を発見し、わたし達は討伐開始していた。

 そんな最中、太一ことランズベルナントさんが軽くため息をついてミレネさんを見つめ言った。


「……仕方ないですね。当ギルドの予備ポスト枠を現在ミレネさんに使っていますが、そういう訳で……ザカールさんとの話し合いの為に一度、その席を空けて貰っても構いませんか?」

「──! ……分かった。でも、情報だけはちゃんとあとで下さいよ!! アリス様」

「うん。約束する。今日は何だか、ごめんね? ミレネさん……」


「何も……アリス様が謝ることなんかないです…」


 そのあとミレネさんがギルド脱退し、間もなくザカールさんがギルドへ加入。早速、ギルドチャットに参加して貰った。



『はじめまして《薔薇の騎士団》ザカール=ギブンと申す。どうぞよろしく』

『『『よろしく、にゃにゃん♪』』』


 あ、これはうちのギルド特有の挨拶。

 それからギルドメンバーとザカールさんは色々と話し合いを始めた。

 そうこうしている間にこちらでは、黒龍2頭目討伐完了。だけど、今回のアイテムドロップも、また微妙で……。


 フェイトさんの指示で、山岳地帯の更なる奥地へとわたし達は進んだ。ここまで足を踏み入れたのは初めてかも……?


 この辺りまで来ると、雑魚モンスターも更に強力になって来る。でも、それらをマーナやミレネさん達があっという間に一掃してくれるから助かってるけどね。



「アリス、薬の方はまだ大丈夫?」

「うん! もう1頭くらいなら、なんとか」

「あれ? 誰か居るな……」


 本当だ。どうも先約が居たようで、黒龍と戦っている最中みたい。

 実はこういうことはよくある話で、レアモンスター級は出現頭数も出現箇所も概ね決まっているので、当然それを狙ってくる人は多い。

 山岳地帯は広く狩り場も多いけど、それ以上にハンターの数が多いのだから仕方なかった。


「仕方ない……更に奥地へ行くか?」

「でも、ここから先の黒龍は、亜種になりますよ?」

「亜種って??」

「早い話、先ほどまでの黒龍とは強さのレベルがまるで違うヴォルガノたんが待ち構えてる、ってことですよ。アリス様♪」


「──!?」

「……そ、そんなのに勝てるの?」

「勝てます、勝てますって! 今ならモンスターレベルも下がってますし」

「……かな? やってみないと分からないが」



『お! なんだ、奇遇だな!!』

『え?』


 わたし達がパーティーチャットでそんなこんな話していると、ザカールさんがギルドチャットで唐突にそう話し掛けて来たのだ。


 って、よく見ると。わたし達よりも先に此処にいて黒龍討伐しているパーティーの中に、そのザカールさんが居たので驚いた。だって本当に奇遇なので。

 丁度、討伐も終わったらしく。ザカールさん以外の人たちはドロップアイテムの確認をやっているみたい。


 それにしても……よくよく見ると、そこに居るメンバーがかなり凄かった。



 ザカール=ギブンさんの他に、上位ランカーのオルトスさん。同じく、ヘイトスさん。ファシミーナさん、美玲風月さん、バルカスさん、アザミューナさん、そして……フェイル=モードさん。


 ギルド《薔薇の騎士団》所属の人の他、無所属の人たちも相当混ざっていた。どういう関係で繋がっている人たちなんだろうな??


 わたしはなんとなく気になる。

 そんな中、わたしの隣に居た冬馬さんが口を開いた。


「ああ、ザカールか……丁度よかったよ。自分、そろそろ地雷スキル発動寸前のヘロヘロ限界なので、良かったら代わってくれない?」

「ハ? バカ言うなよ。流石にオレだってこのパーティーから抜けられるものか……」

「というか、まさかそこに居るの、冬さん? お久しぶりー!! 元気してたぁー?」



 冬馬さんがチャットを周辺に変更し、ザカールさん達のパーティーと会話を始めていたのだ。

 わたし達も直ぐにそれに習って、周辺に変更。


 どうもザカール=ギブンさんと思わしき人は、とても大きな体躯の方で。それでいてどこか誠実さも感じられ、とても頼りになりそうな人だった。


 そのザカールさんの隣で冬馬さんに元気一杯に声を掛けている女の子は、整った顔立ちで優しげな中に貫禄の様なものが漂っていて、まさにランカーとしての風格も備わった感じの人。


 でもその人、なんかどこかで見たような……?


 何となく、そのランカーさん達の視線がやがてこちらへと向けられ、わたしは緊張した。



「あ、その……はじめまして!! 《黄昏の聖騎士にゃん》でGMをやっているアリスと申します!」

「あ、ハハ……。私は《薔薇の騎士団》のGMフェイル=モードと申します。

というか……のんびりと挨拶なんかやってるけど、本当はお互い今は敵対関係にあるんだけどね?」


 

 ──ぐは!! た、確かに……。



「いや、ハハ! まあ心配することはないよ。だからといって、今すぐここで取って喰おうだなんて誰も思ってやしないんだから」 

「……しかし、ザカールの受け入れが予想以上に難航してるみたいだね?」

「は、ハハ……。みんな色々と慎重なもので……」

「難航どころか堂々巡りって感じだな、今の様子は……。

そんなことより、オレ達はこれからこの奥に居る亜種討伐に行くんだが。一緒にどうだい?」


 わたしは交流も兼ねて、それもいいかなぁ?と思っていたけど。ザカールさんの誘いにみんな困り顔を浮かべていた。


「……悪いが、こちらはには《地雷》が2人居る」



 ──ぐは!!

 た、確かにそうなのでありますが……カテリナさん、何もこんなところでそんなハッキリと言わなくても…?



「そんな訳で、旨いところを全てそちらへ持って行かれては面白くないんでね……」

「まぁ、確かにそうだよな……?」



 ──ふぇ、フェイトさんまで……?!

 わたし、もぅ泣きそうだよぅ~。



「なんだ? そんなことを心配していたのか? それなら全く心配はない。大丈夫だ。

先ずはお互いに協力して叩き弱らせ、最後の討伐の時だけ『交互』に倒せば、何の問題もない。だろ? 

もちろん、その時に落とすドロップアイテムについては当たり外れがあるからな。そこまでの保証は出来ねぇーけどよ」

「あ……なるほど!!」


 わたしもザカールさんの話を聞いて納得したけど、他の皆も納得顔を見せていた。

 そんな訳で、わたし達はデュセオルゼ=ヴォルガノフス【亜種】討伐へと向かう。



 もちろんその間にも、ギルド内では議論が続いていたけどね。




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