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はいっ! お待たせ?しましたぁあー!!
いよいよ第二期、第4章《デュセオルゼ【亜種】討伐!》投稿開始致します!
今回、一気に登場人物が増えちゃいます。実に困ったことで……。
あと、久しぶりに討伐戦あり。
新たな出逢いと困難が待ち受ける、アリスたちギルドとその仲間たち。そしてその仲に割って入り込もうとする、謀略者の影……。
彼らは敵か? それとも味方なのか? 果たして如何に……。
それから、アリスの“ゲーム内貧乏”ぶりは相変わらずです・・・(泣
地のエレメント・女神バヌファが威圧的な微笑みを浮かべる城内。そこに本部を置く、《古龍王老》 と 《ダウンズヒル》 《薔薇の騎士団》 を主としたギルド連盟体『対・天山ギルド同盟』がこの日、緊急会議を開いていた。
「皆も知っての通り、冬馬殿は我々と敵対している『天山ギルド本営』に加盟しているギルドに所属した。これについて、皆の忌憚なき意見を聞きたい」
ギルド連盟GM古龍王の言を皮切りに、そこに居た関係者は思い思いに口を開き始める。
「冬馬殿を失うということは、大決戦での主導権を失うことに等しい。ここは強引にでも取り返すべきだと私は思う」
「しかし相手は、あの『天山ギルド本営』に加盟しているギルドだ。そう簡単に手出し出来る相手ではない」
「それはそうだが……」
その場に居た多くの者が、それには仕方なげに唸りながら頷く中。しかし1人だけ両腕を組んだままでふっと鼻で笑い、口を開く者が居た。
「……相変わらず、慎重過ぎる男だな? ゲシュトバール」
「なんだと? ではバヌー、お前には良い案があると言うのだな?」
「さぁてね? 良い案かどうかは分からないが……既に謀略戦をこちらで勝手にやらせてもらっているよ」
「「「──!!」」」
バヌーの発言に、その場に居た者たちは驚き騒然となった。
そんな中、連盟GMの古龍王がやや不愉快げな口調で聞いた。
「……それはどういうことだ? バヌー」
「どうもこうも、つまりはそういうことですよ? 古龍王さん」
「バヌー、貴様! 何故そうも勝手なことばかりをいつもするのだ!!」
「……まあ待て、ゲシュトバール。ここは一つ、バヌーの話も聞いてみようじゃないか。
バヌー、構わないからお前の率直な意見をこの場で言ってみろ」
「ハハ……。流石はアシュベル殿、話がよく分かる。が、ご心配無く。直に分かりますんで」
そう言いながらも、バヌーは周りの者たちを蔑んだ瞳で見回し、クックッと独り笑っていた。
「何がそんなにおかしい? 余り調子に乗るなよ! バヌー!!」
「ふん。ゲシュトバール殿は、どうも短気で困るなぁ~」
「……それをいうのなら、君はどうも独断的な上に短慮過ぎると思われますが?」
言い合う3人の様子を見かね、1人の男が冷静な面持ちで口を挟んでいた。
「──!? ハハ、これはこれは……誰かと思えば、フェイルモード殿。それを言うのなら、そもそもアナタ様が友人である冬馬殿をしっかりと囲んでさえいれば、今回のようなことに至らなかったと思うのですがね……違いますか?」
「少しは口を慎め!! バヌー! フェイルモード殿は、我が連盟のサブGMであるぞ!」
「は? で、それがなんだ?? 今はそんなの何の関係もないだろ? バカじゃねーの?」
「お、おのれ……もう許せん!!」
ゲシュトバールが大剣を抜き、バヌーの前へと肩をならし歩み出した。
対し、バヌーは龍神王の大弓を構え、まるでそれを楽しんでいるかのようにニヤリと笑む。
「両者、そこまで!! 控えなさい!」
連盟GM古龍王の側近、清翔妃が2人の間に立ち、睨みを利かせながらそう言い放っていた。
「戦い合うにしろ、装備品は全て、下位装備に着替えなさい。ここでの戦力低下は、連盟ギルド皆の迷惑です。
理由は、お分かりになりますね?」
「……」
「……ちっ、分かったよ。清翔妃ねぇさんには、逆らえないからな?」
バヌーはそう言うと、即座に下位装備と換装し、クイックバックをしながらゲシュトバールに対し構え速射した。
そのバヌーの攻撃は、それに全く備えていなかったゲシュトバールの意表を完全に突き、全て直弾する。
何故なら、清翔妃の言葉を受け、ゲシュトバール自身はその時点で戦意喪失していたからだ。
故に、装備品も換装すらしていない状態でまともに攻撃を受けていた。これには連盟ギルドメンバー全員が騒然となり、ざわめき立つ。
そして、一方的に被弾を受けたゲシュトバールは、痛みを堪えながらも口元から血を流しバヌーを睨み言う。
「──バ、バヌー。き、貴様……!! 恥を知れ!」
「恥? お前は何を言っている? なぜ、オレ様が恥る必要があるんだよ??
言っておくがオレは、清翔妃ねぇさんの言葉を素直に受け止め、ちゃんと即座に装備換装してから攻撃したんだぜ? まったくもってコレは正当なことだろ? それの何が悪い??
オレから言わせて貰えば、木偶の坊みたいにいつまでも何もしないでボサッとしていたお前が間抜け過ぎるだけだ。
なっ、そうだろう? 違うかい?」
「「「──!!?」」」
清翔妃はその一言を耳にして、思わず言葉を失った。
「……。バヌー、アナタという人は……」
「もうよい……今日の会議はこれまでとする! 明日、改めて会議を執り行うこととする。
……それからバヌー、お前はこの場に残るように。少し話がある」
連盟ギルドGM古龍王の判断により、会議は終わり。それぞれに思いを秘めながらも離散した。
多くの者が会議終了と共にレベリングのため狩りへと向かう中、《薔薇の騎士団》GMフェイル=モードは近くの柱へ寄り添いながらもこの場に残り、遠目に古龍王老など数名の幹部たちの様子を窺い見つめている。
「……フェイル。あなたはアレに参加しなくてもいいの? 一応あなたも、この連盟のサブGMなんでしょう?」
「ああ、アザミューナか。今日はとてもそんな気分にはなれなくてね……」
アザミューナと呼ばれた女性は、ラグリット・ハイエルフ系種族特有の美しさと痩身な姿をしている。肌を多く露出した白銀の鎧に身を包み、《薔薇の騎士団》を象徴する紋様が象った刺繍入りの聖騎士マントを羽織り、女性らしい柔和さとどこか精悍さを同時に感じさせてくれる。
彼女は、フェイルモードが運営するギルド《薔薇の騎士団》のサブGMだった。
「まぁね……今日は散々な会議だったものね? 冬馬さんがいう通り、あのバヌーだけは本当にどうしようもないわ……」
「ハハ! まぁ、いつものことさ……」
「おいおい、笑いごとかぁ? こういった馬鹿げた内輪揉めがいつまでも続くこの状態で、あの『天山ギルド本営』相手に本気で勝つ気があるのかい? うちは……」
アザミューナと呼ばれた女性の隣に、随分と体躯の良い大男が立っていた。
ザカール=ギブンだ。
ジャイアント・ドワーフ系種族特有の規格外と思われる大きな体躯は、実に彼に似合った風貌だった。
フェイルモードはそんな彼を見上げ、微笑み言う。
「ザカール……君の言う通り、このままではとても無理だろうね? ハハ♪」
「ぅが……どうなってんのよ、この連盟ギルドは!! 結束力、まるで無しじゃないの!
そもそもだよ! 冬馬さんがここを抜け出した原因のひとつは間違いなく、アイツのせいでしょ? そのことをアイツは、自覚していないの?」
「してないだろ? 見当違いにも、ついさっきフェイルのせいにしていたからな。
間違いなく、『自覚なし』だ」
ザカールのハッキリとした物言いに、フェイルとアザミューナは思わず呆れ顔を見せたあと、つい吹き出し笑い。結局3人は、そこで互いにくっくっと笑い合った。
そうして間を置いたあと、フェイルモードは改まった表情をし口を開く。
「……とまやんの真似という訳ではないけどね。私たち自身、今期も大いに楽しむが為にも、選択肢の幅くらいはもう少し広げておくべきなのかもしれないな?
と、言う訳で……ザカール、君に一つ頼みたいことがある」
「「──!!」」
フェイルモードからの思ってもみない依頼をザカール=ギブンは耳にし、瞬間だけ驚くが。間もなく「……ふっ」と笑み、しかしどこか真剣な眼差しで深く頷いた。