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「へぇー……昨日はそんなことがあったんだ? なんだか大変だったね、アリス」
「ぅん……モグモグ。色々と有り過ぎて、今更ながら参ってる……ゴクゴク」
次の日のお昼休み。
真中といつものように一緒して、ご飯って、昨日あったことを伝えてた。
と、そこへ。花藤さんが何だかどこかぎこちない笑顔でやってくる。
「ここ……いいか? アリスに真中」
「あ、うん! もちろん、いいよ!!」
「それよりも、今日のキャラ弁はどんな? 良かったら、見せて!」
「──うっ……!! イヤだ! 絶対に、見せないっ!」
「……は、ハハ…。真中、今日はあまりそこには触れない方がいいと思われ……?」
そう言えば、昨日はそのキャラ弁でも色々とあったのを、真中にはまだ伝えてなかったな。
花藤さんの様子からいって、どうやら今日もキャラ弁っぽいしなぁ?
「え? なんで?? 何だか凄い、拒否反応が……」
「まぁ、昨日あれから色々とありまして……ハハ♪」
「あったから、見るな! そして、聞くな!」
花藤さんはどこか無理したような澄まし顔でそう言いながら、わたしの直ぐ傍に座り、それとなく背を向け、お弁当を隠しつつ蓋を少しだけ開けてモグモグと食べ始めている。
それがまた変に気になったので、なんとなくソッと……花藤さんの肩越しに顔を出し、しかも逃げられないよう両腰から軽く抱きしめつつ、後ろから覗き込んで見た。
「あ! 今日はまた、めちゃ可愛い!!」
「ぅわ! バカ!! アリス、覗き込むなよ!」
「え? どんな?? 見せて、見せてぇー♪」
「うぐっ、だから真中も見るなって、バカ!」
「よっ! お前ら、何だか楽しそうにやってるな?」
「まさに青春真っ只中、『楽しんでます♪』って感じがして良いですね?」
「どこがだよ!!」
全身朱色で苦笑い言いながら、花藤さんってば顔も今や真っ赤。そんな様子がなんだかまた、不思議と可愛い♪
そんな訳で何となく、そのまま何気にわたしは抱きついて居ることにする。
「で……今日も食べ放題だっけ? コレ、一つ貰ってもいいか??」
「──違うッ!!」
結局のところ、花藤さんも諦めがつき。可愛いキャラ弁を御披露目しながら一緒にご飯って、昨日の話をする。
「実はさ……冬馬さんの件については、天龍姫さんとミレネさんから、『その身柄を預かる』って言われてたんだよね。昨日……」
「「「──え?!」」」
ご飯ってる途中でわたしがそうポツリ零し言うと、みんな驚き顔を見せてきた。
「アリス、それで2人にはなんて答えたんだ?」
「あ、何も……。というか、冬馬さんが話を途中で打ち切った感じで、昨日は終わったから。
それに……昨日のあの時点までは、事情もよく分かんなかったから、判断なんてまるでつかなかったし……」
「そか……うん。それでいいよ、アリス」
「ええ、その場の流れで即決しなかったのは正解です。よく頑張りましたね♪」
「……あ、ありがとう。そぅ言ってくれて、凄く助かる!」
わたしは2人の言葉を受けて、ほっと安心し感謝した。
「どうでもいいが……足手まとい。そろそろ私から離れてくれないか? 別に良いけど、今は食べ難いからさ」
「……あ!」
言われ、わたしは仕方なく花藤さんから渋々離れる。
そんなわたしを、隣の真中が不愉快そうに見つめていた。
なんだろ??
「冬馬さんが古龍王老から狙われているのは確かに、心配なことですが。でもよくよく考えてみると、冬馬さんは狙われているというよりも、彼を自分たちのギルドに引き戻そうとしているだけではないのか? と思えます」
「ああ、実はオレもそう思った」
「でも、なんで?? そうまでして取り返すことに何の意味があるの?」
「モグモグ……意味なら、十分にあるだろ?」
カテリナさん……じゃないや。花藤さんが、当然とばかりに黙々と食べながら澄まし顔でそう言ってきたのだ。
「え?? 意味って?」
「ゴクゴク……冬馬さんがうちに来てから、またギルド加入希望者が増えていただろ?
意味なんて、それだけで十分だ」
「あ……そういえば、そうかも?」
昨日だけで、10人も加入希望者が来ていた。
取り敢えず、『ギルド内で話し合い審査した上で後日返事致しますので、それまでお待ちください。また現在はギルドレベルの問題もあり、即時加入は出来ませんので、ご理解願います』って、テンプレ返信で対応していたんだけど、加入申請待ちの人が結構居る。
しかも、かなり強そうなランカーレベルの人も中には居るんだよね!
そういう人は特に優先的に入れたいけど、今はギルドレベル分満員御礼状態なので、直ぐにはとても無理。
「なるほど……理屈は、アリスをGMにしたのと同じな訳か?」
「今はあの天山ギルドでさえも、人の確保に苦労してるみたいですからね……」
「モグモグ……しかも、私が独自に調べたところ。冬馬さんが加入すると同時に、そのギルドへ加入し。そして冬馬さんが去ると同時に、そのギルドを去った上位ランカーが複数名ほど居る」
「「「──!!」」」
花藤さん情報に、みんな驚いた。
「つまり……それが最大の理由な訳?」と真中。
「モグモグ……ああ、たぶんな?」
「ふむ……」
「そうなるとあれだな、天龍姫さんやミレネさんには悪いけど。可能なら、冬馬さんを何としてでもうちに留めて置きたいが……アリス、冬馬さん本人はなんて言ってるんだ?」
「え? あ、ンー……さぁ~? どうなんだか? アハハ♪」
わたしは苦笑うしかなかった。だって本当に、冬馬さんが今どう思ってるのかなんて分からないもん。
「は? なんだよ、それ……頼りないな。これだから、足手まといには困る」
「そ! そうは言われても……今は仮で居るだけだから、何とも言えないよ。残るも去るも、冬馬さん次第なんだから」
わたしが今言った、「冬馬さん次第」という言葉を聞いて、軽くため息をつきながらもみんな納得してくれた。
「まぁ……結局は、そうなるよな?」
「ゴクゴク……大決戦以外では、何の役にもたたない地雷だが。ランカーがもれなく着いてくるのなら、と思ったんだけどなぁ……」
「ただ、同時にリスクもあるようですし。彼のことは、彼自身の判断に委ねる他ありませんね?」
最後に言った太一の言葉を聞いて、みんな納得顔をして肩をすくめる。
結局のところ、此処で幾ら議論したところで、当の冬馬さんが居なければ意味がない、ってことで。
そんな中、最後まで食べ終えた花藤さんがわたしの肩をチョイチョイと突っつき、それから自分の方を指差していた。
「え? なに??」
わたしは意味が分からず、首を傾げてしまう。
「いや、だからさ。もう食べ終えたから、良いぞ? また抱きついてもらっても。
但し、変なことだけは冗談でもやるなよ? 宣告しておくが、やられたら倍でやり返すからな!」
「…………」
改めてそう言われ、わたしは思わず頬が真っ赤に染まった。
でも……まぁ折角なので♪
そんな訳でわたしはまた、ゴロにゃん♪と花藤さんに軽く抱き付く。花藤さんはまんざらでもなかったらしく、そんなわたしの頭をニコニコ顔で撫で撫でしてくれた。
と……そうやっているわたしを、太一たちは羨ましそうに眺めている。
それは一体、どちらへ対してのものなのかは不明だけど。岡部くんは兎も角として、太一……花藤さんに対してのものだったら、あとで怒るからね?
浮気禁止!
因みにそのあと……真中からLIENで『この浮気者めぇー!!(泣)』というメッセージが送られていた…。
──ぐは!!
これからは、真中が居ない時だけにしよう……。うんうん。
【第二期】、第3章《迷惑な策士》 おしまい。
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