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アストガルド・ファンタジー  作者: みゃも
【第一期】、第6章《南東ワイズヘイル城、攻略戦!!》
36/213

-3-

「ハハハ!! これはいいな!」


 カテリナさんが大いにはしゃぎながら敵をなぎ倒しまくっている。そこから少し離れた所で、ミレネさんも超速射で敵を倒しまくっていた。


「一気にランキング駆け上がりまくりで、ラッキー♪ アリス様のスキルのお陰で、全て倍速だし。こちらの動きが速い分、無傷で倒せるし!」

「ええ、本当に……アリスさんとご一緒出来て、正解でした」

「みんな余り時間を掛けす過ぎると、シャインティアの主力がここへやって来ることが予想されるから。素早く迅速に、そして常に警戒しながらやってくれよ!!」


「フェイト、そんなの言われる迄もなく分かっておるから、無駄に心配などするな!」

「ミレネ……フェイトさんは、私達パーティーのリーダーなのですよ。ちゃんと礼儀くらいは、わきまえなさいね?」


 ミレネさんは天龍姫さんから、優しげにも厳しい一言を受け、ちょっとだけシュンとしている。

 でも、その動きは止まるとこなく、倒しまくりながらなんだけどね?


 今はみんなバラバラに別れ分散し、レーダーマップ内でシャインティア勢力の人達を倒しまくっていた。

 会話は、《パーティー音声ボイスチャット》を使っているので、離れていても声だけは鮮明に聞こえてくるので、困ることはない。


 ミレネさんはシュン…としていたが、間もなく不愉快気に頬を膨らませ、フェイトさんを遠目に見つめツンとして口を開いた。


「そもそも私は……フェイトをリーダーになど、認めていないのだ。

パーティーリーダーは、天龍姫様かアリス様が相応しいから。

フェイト、遠慮など要らぬ、早くアリス様と交代をしろ!」


 え?

 そんなの絶対に無理、ムリ!!


 わたしは青ざめ苦笑い、両手を左右にふりふりする。


「ミレネ……余りフェイトさんに失礼なことを言うと、この私が許しませんよ?」

「──!?」

「は、ハハ……そもそもわたしなんかには、リーダーとかとても務まらないので…」


 だってさ、全体の状況すら把握出来ていないもんね?


「わ、みんなそれよりも世界チャットみてみ! なんだかどうも、大変なことになってるみたい」


 マーナから言われ、確認してみると。中央平原から南東ワイズヘイル主力軍とその他を合わせた40軍、凡そ1300名もの組織的軍勢が、アストリア領地へとどしどし押し寄せて来ているという驚くような情報が流れていた。

 更に、わたしたちが退避したのちの南西にも35軍が現れ、北上して来ていると騒いでいる。


 つまり、総勢2300名ものプレイヤー……しかも恐らくは、ランカーを中心とした主力軍ばかりだと思われる。



「まだ中央平原には、空白拠点がかなり点在している段階だというのに。もうから仕掛けて来た、ということなのか?」

「これは、あくまでも推測なのですが……中央平原は戦略的意図など振るわなくとも、北と北西部を抑えれさえすれば。他のギルド連合体などがこれに遅れやってきて、勝手に取る、と見ての大胆な戦略なのでしょう。

自ギルド連合体の勝利など、はなから捨て。所属勢力陣営の勝利にのみ特化した、戦略のようです。

まったく、思い切ったことをやってくれたものですね……まぁ真似しようと思っても、普通は真似出来るものじゃない。これこそが彼、冬馬殿のカリスマ性が成せる技なのでしょうね?」


 太一ことランズベルナントさんの冷静な状況観察を天龍姫さんは納得顔に微笑んで頷き、口を開く。


「ええ、本当に恐れ入ります……まだ我々アストリア陣営は、自領地内の空白拠点を隈無く攻め取るので目一杯のようですね? 目の前の欲に、目が眩んで……。

そこは今の私たちにも、同じく言えることなのですが。しかし……!

私の方から泰然に、厳しく申しておきましょう」


 ──ぅは!!

 み、耳が痛いなぁ……今のは!


「天龍姫様、そこんところ厳しく言ってやってくださいませ! 

最後の大決戦で惨めな敗北なんか、したくはないので!! まさかここから、私たちが引き返す訳にもいきませんから!」


 確かに、ここから戻るにしてもかなりの時間がかかる。

 それに、戻ったとしても35軍も居るとされる中へ向かい単軍で南側から向かい行くのは、とても危険だし無謀な気がする。


「じゃあ、私たちはどうするの?? このまま放置?」

「いえ……北西アストリア領内、ましてや本拠地が攻め取られては、負けになります。

何かしら我々も、アクションを取るべきでしょう」

「……いっそ、南西シャインティアを陥落されるとか? 

もしくは、南東ワイズヘイル城を攻めてみるとか??」


「「「──!?」」」


 え?


 わたしが思いつきで言った言葉を受け、何故かみんな驚いた表情を見せてくる。

 わたし今、変なこと言っちゃったかなぁ??


「ハハ! アリスにしては、随分と思い切った発言だな!」

「だけど、今はそれくらい衝撃的な動きをしてみせるのが良いのかもしれませんね?」

「私も、アリス様の策に乗った!! 

南西シャインティアには、そもそも大したランカーなど居ないし。今なら、主だった軍は南東ワイズヘイルと共に北上しているようだから、チャンスな気がする!! 

だからフェイト、早くそうしろ!」


 ミレネさんの言葉を聞いて、わたしは慌てた。


「いや、わたしのは単なる思い付きと閃きなので、余り当てにはしない方が…………は、ハハ…」

「いいえ。直感というものは時として、侮れないものなんですよ、アリスさん♪」


 天龍姫さんにそう言われ、頬を真っ赤に染めつつ、何となく納得。


「よし! この辺り一帯の奴らも、ほぼ壊滅させたことだし。そういう訳で、オレたちもそろそろ動くことにしよう。

時間も残り僅かだ。

南西と南東、どちらへ向かいたい?」

「だから南西だ! ばか、フェイト!」

「……少しは口を慎みなさい、ミレネ……。私は南東に一票、投じさせて頂きますね?」

「だったら僕は、南西かな? シャインティア城を陥落させれば、北上しているシャインティアの主力軍が一気に消滅しますし。それでなくとも、彼らを動揺させることくらいなら出来ますからね?」

「私も、南西にする。

ここまでシャインティアの戦力を叩いた今だ。アクティブプレイヤーが元々そう多くはないシャインティアなら、陥落させ切れる可能性がまだありそうだしな?」


 フェイトさんの問い掛けに、ミレネさん、天龍姫さん、太一、カテリナさんと次々答える中。マーナだけは、そこで落ち着いた様子で思案顔を見せ口を開いた。


「……正直、ここは難しい判断だよね? その間に、私たちの城が落とされるかも知れないんでしょう?? 

そう考えたら、南東ワイズヘイルの動きを鈍らせる意味でも、今は南東に攻めるのが得策な気もするし……アリスは、どう思う?」

「え? わたし??」


 そんなこと聞かれても困る……けど。みんな懸命に考えている中で、わたし独りだけ何も考えないとか、ダメだよね? 


「ンー……結局のところ、冬馬さんが一番嫌がりそうな一手を打つのが良いんだよね?」

「まぁ、そうなのですが……それを考えても、彼はまた更にその上の一手をいつも打って来るだけですからね?」



 ──そ、そこまで凄いの……!?



「いや……それは逆に良い考えかも知れない…」

「え?」

「それは、どういう戦略的意図ですか? フェイトさん」


 天龍姫さんの真剣な眼差しの問い掛けに対し、フェイトさんは肩をすくめ答えた。


「もう時間も残り僅かだろ? だから終了間際に拠点を一つ取って終わりたい。

明日の最終日に始まる開始拠点が、そこで決まるからな。

が、そうなると。どうしてもオレ達の所在地が、相手に知れ渡る。

しかしそれは、つまり──」

「……敢えて本来の狙いとは真逆側にある拠点を取り、騙し(フェイク)を仕掛ける、ということでしょうか?」


 そう直ぐさま読み取ったのは、天龍姫さんだ。流石!

 フェイトさんは笑顔で、それに頷いている。


「……なるほど、それは妙案です。

となれば……南東ワイズヘイルの動きを、先ずは止めるのがベスト、ということで……」

「早い話、南東ワイズヘイル領地内の拠点、ってこと?」


 太一の言葉に、マーナが反応していた。

 そしてそれに答えたのは、またフェイトさんだ。


「ああ、ここから残り30分急いで走って頑張れば、ギリギリ南東ワイズヘイル領内の拠点に辿り着ける」

「……だな、悪くない。私も、その策に乗った!」

「悔しいがフェイト、今回ばかりは私もお前の策に乗ってやる」

「となれば、早速急いで参りましょう。

ではアリス、早速 《ゴッデスウィング》を頼みます!」

「は、はい!!」


 わたしは太一から言われると直ぐに魔聖水をゴクリと飲み、スキルを発動!

 そうして一気に、南東ワイズヘイル領内まで走り向かった。


 そして走り続けること25分の終了間際、南東ワイズヘイル城近くにある手薄な拠点を強奪!! それを受け、北西アストリア領地内で乱戦していた南東ワイズヘイル軍側に、明らかな動きの変化が見て取れた。


 もしかすると、わたし達の思惑通りになったのかもしれないな?


 こうして初日の大決戦は時間切れとなり、そこで終わった。




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