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次の日のお昼、いつものように真中と学校の屋上でお弁当ってた。
「ギルド戦争、昨日で終わってよかったね。モグモグ」
「一時はどうなるかと心配だったけど、本当に良かった」
「あとは3日間で装備がどのくらい整うかだけど」
「結構みんなそれなりにやられちゃったもんね」
「まあ、今回は楽しむ感じで?」
「勝ちは捨てる?」
「それでなくとも数の多いワイズヘイルにユイリたん。致命的だよね?」
「アリス、ユイリさんに勝てたでしょう?」
「あの時はね。冬馬さんの策略と相手の隙を突いたのが上手くいったんだよね。次はそうはいかないと思うよ?」
「何が上手く行かないんだ?」
りなりぃだ。
「次の大決戦」
「まあ、簡単には勝たせて貰えないだろうな」
「……そうなんだね」
「まあ、前回勝てたのが奇跡なくらいだし」
「何が奇跡なんです?」
太一と岡部くんだ。
「前回、大決戦で勝てたこと」
「そうかぁ? あれは冬馬さんの戦略とアリスのスキルが見事にマッチした結果だったと思うぞ?」
「そうだよ。また勝てるよきっと!」
真中が興奮気味にそう言ってる。
「勝てるかは、微妙だけどな」
「え?」
「だって、こっちの手の内は前回見せてるからな」
「当然、向こうも対策はうってきますよね」
「そうだよねぇ……」
「そっか……厳しいんだね」
「難しいなら難しいなりで、また冬馬さんが考えてくれるさ」
「真中も岡部くらいの気持ちでいいんじゃないですか?」
「そうですね」
「だけど、どうして今回に限って勝ちに拘ってんの?」
「友翔くんが、ワイズヘイルは人口の割には狩場が狭いからシャインティアに移動しようかなって言ってたの。そうなれば一緒にプレイできるし……」
「要するに友翔くんと居たいからなんだね!」
「ワイズヘイルがまた負ければ、狩場が狭い云々の口実がつかえるけど。勝てば狩場が広くなるから、その言い訳は苦しいわけか」
大決戦では、勢力対勢力で争い、その結果に応じて領土が拡大し、場合によっては新たな未開拓地なども現れ、レアモンスターや遺跡など冒険の舞台が広がってゆく仕様となっている。なので、前回1位のシャインティアは国土面積が広いのだ。逆にワイズヘイルは狭い。
「訳が分かんないな。一緒に居たいなら、いいから引っ越せば良いんじゃないのか? 友翔に、わたしから言っておくよ」
「いいよ。メリットもないのにそうまでして引っ越ししてもらうの申し訳ないもの」
「……よし、勝ちに行くか!」
しばらく間をおいて、岡部くんが急にそう言った。
「自信なんてないし、またアリスと冬馬さんの力を借りてだろうけど。勝ちに行こうぜ!」
「そうですね。折角だから、勝ちに行きましょう」
「うん。わたしも頑張るからね! 真中」
「岡部……かっこいい……」
りなりぃがそう言って、岡部くんに抱きついた。
「改めて、惚れ直した!」
岡部くんは動揺し赤面している。
この日も太一と手を繋いで駅まで一緒に歩いた。でも今日は自販機のところに人が居たので、互いに肩をすくませ、それで別れることにした。




