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「おはよー。友翔」
「おはよう。姉さん」
「あ、そうだ。お母さん」
「なに? りな」
「わたし、彼氏が出来たんだ」
「!? あなたに彼氏? ホントなの?!」
「なんでそこで驚くかな……? それでさ、念の為になんだけど」
「なに?」
「ゴム頂戴」
「ヘカトンケイルたんのドロップよかったねぇ。モグモグ」
「何とか大破しないで済んで良かった」
次の日のお昼、いつものように真中と学校の屋上で弁当ってた。
「偶に一撃喰らうと壊れたんじゃないかって、びっくりするよね?モグモグ」
「破壊力半端ないもんね」
「装備壊す系のモンスターが増えて来て大変。モグモグ」
「気が抜けないもんね?」
「よっ。アリスに真中。ここ良いか?」
りなりぃだ。
「良いよ良いよ〜モグモグ」
「それにしてもさ、アリスの家って良いよな?」
「なんで? モグモグ」
「ゴム貰えたんだろ? 今朝さ、彼氏出来たからゴム頂戴っていったらさ、めっちゃ怒られた」
「……普通はそうだろうね」
「だけど、無かったらいざって時、大変じゃない?」
「この歳で子供は欲しくないなぁ……」
「しなければ良いんじゃない?」
「バカだなぁ。相手はあの岡部だぞ。いつ押し倒されてもおかしくはない」
「……確かに」
「納得」
「何が納得なんです?」
太一と岡部くんだ。
「岡部がわたしを押し倒す確率」
「……100%ですね」
「100%……って」
「そりゃしょうがねぇだろ? お前は彼女でオレは彼氏。オレにはお前を押し倒して、アレコレする権利があるんだよ」
そこまで言い切られて、流石のりなりぃも恥ずかしさで顔を真っ赤にしている。
「お前は鬼畜か!」
「鬼畜を彼氏に選んだりなりぃ、チーン。モグモグ」
「今からでも良いから、別れたほうが良いんじゃない?」
「考えとくわ……マジで」
「おいおい、オレから唇を奪った者とは思えぬ言葉だな」
「そのあと2回も奪い返しただろう?」
「え? どういうこと??」
「岡部からあのあと2回もキスされたんだ。壁ドンされて」
「それだと奪われたとか言えないね?」
「寧ろわたしの方が奪われてる……」
3回っていったら、わたしと太一よりもやってるじゃない。いいなぁー……。
その日も太一と手を繋いで、駅までおしゃべりして帰った。そしてそのまま帰ろうとする太一の背中に抱きついて、目を潤ませながら見つめた。お願い気づいて……。
太一はわたしの手を取り、誰も居ない自販機の影に隠れ、わたしは背を伸ばし、唇と唇が重なる高さまで伸ばした。そんなわたしの身体を太一は優しく抱いてキスしてくれる……。何度も何度もキスをした。それからはなれ、お互い笑顔を向け合うと駅で別れた。
「ただいまー」
「おかえりなさい。アリス」
「今日ね、沢山キスをした!」
「あらあら、どうだった?」
「なんか幸せな気持ちになれた」
「今度、母さん、その人に会いたいなぁ……」
「うん。今度連れてくるね!」
「約束よ。さ、手と顔を洗ってらっしゃい」
「は~い」
そのあとご飯って、風呂って、2階に上がりゆったりとした。今日は決戦だ。勉強もほどほどで、わたしはAFセットを装着して、ログインした。




