ー10ー
「だああ〜〜っ」
「くそぉ〜っ」
「でも惜しかったなぁ。あとちょっとだった」
決戦が終わったあと、弥鈴ちゃんの家で嘆いていた。友翔くんと真中も部屋にやって来た。
「負けたの結局、数?」
「300対200……これが勝敗の原因なら数だろうな」
「でもいい勝負だったと思うよ」
「善戦はしてたよな?」
「少なくとも沢山のランカーをアリスがポンコツにしていたからな。次の決戦は有利になるだろ?」
「あははは」
「アリスが敵じゃなくってよかった……」
その時、部屋の襖がスーッ……と開いた。誰かと思えば、潮間冬樹こと潮兄だった。
「すみません……。私が不甲斐ないばっかりに……」
そう言って、スーッ……と閉じた。
「え? 今のどういう意味だったの!?」
そう言えば、まだ皆には言ってなかったっけ?
「え!? 潮兄が冬馬さん!?」
「うん。偶々廊下で猫パンチさんとの会話を聞いちゃって」
「不思議な巡り合わせもあるもんだなぁ……」
「まあ、潮兄頭良いですからねぇ」
「弥鈴ちゃん。潮兄さんと結婚するの?」
「今のところ、そんな予定はないですよ。アリスお姉さまっ」
「ちょっと歳が離れすぎてるかな?」
「10歳くらいなら、問題にならないですよ」
「要するに、潮兄が良ければ、弥鈴としては結婚してもいいと?」
「そうですね」
りなりぃの冗談めいた言葉に否定しないんで、びっくりした。もう覚悟が出来てるんだなぁ。
「友翔に真中に弥鈴に潮兄……アリスはどうすんだ?」
「え?」
急に聞かれたのでびっくりした。
「好きなヤツぐらい居るんだろう?」
「そういりなりぃはどうなの?」
「わたし? わたしは……」
そう言うと岡部くん、太一、わたしと指差して言った。
「この中でいうと、アリスが一番好きかな」
「え? いや、そういう冗談はいいから」
「冗談じゃないさ。特に今は恋愛したいとか思わない。好きな人も居ない。そうした中で選ぶとしたら、アリス、ってだけだよ」
わたしは頬が真っ赤っ赤になってしまった。
「で、アリスは?」
「わ、わたしは……友達としてならいいよ!!」
「そりゃもちろんだよ。じゃなくて、アリスの好きな人」
「そ、そんなこと急に言われても……」
整理ついてないし、岡部くんは憧れのフェイトさんだったし、でも太一とは事故だけどキスしちゃったし……もうわかんないよ!
「ふーむ。じゃあ、岡部と太一は?」
「オレは断然アリス」
「私も、アリスです」
「ふーん……あとはアリス次第か。早くハッキリしろよ。じゃないと、わたしがキスするからな」
「ええーっ……なんでそうなるの?」
「アリスのファーストキスを欲しいから」
「じゃあ……そろそろ寝るとしよう。眠いから。男組はトイレの横の部屋。わたしはアリスお姉さまの隣でよいな?」
「待て! わたしがアリスの隣だ」
「ええい、女々しいぞりなりぃ! ここは年下に譲るのが大人というものであろう」
「2人して両脇で寝たらいいじゃない……」
真中に言われて、なるほど!という顔をしている。
そしてこの日、アリスは2人に抱きつかれ、非常に寝苦しい夜を過ごすのであった。




