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「デルピューネ強かったねぇ……モグモグ」
「うん。わたし何度も倒されちゃった。ごめんね」
「良いよ良いよ。昔はわたしがそんなだったし。わたしも結構ヤバかったし……モグモグ」
「よっ。アリスに真中。ここ、良いか?」
花藤璃奈だ。
「良いよ良いよ〜モグモグ」
「新エリアのヴィラエウス·ヴォルガノフス、めちゃ強そうだったよね?」
「あれの討伐にも、数日間はかかりそうだよな」
「パランティアでゴリ押しできないかなぁ?」
「だよね」
「あの手のは装備に負担が掛かるからな。モグモグ……パランティアで体力回復しても装備が持つかだろうな……モグモグ」
「よっ。今日も仲良くやってんな」
「こんにちは」
岡部くんと太一だ。
「聞いたか? 天山の大手3ギルドと対·天山ギルド同盟のバヌー、アシュベル【対にゃん♪連合体】のこと」
「それがどうしたの?」
「今回も炎の城を狙ってくるらしい」
「懲りないねぇ……モグモグ」
「アリスの『レジナ』で、裸にしてやったら?」
「あはは。それはそれで可哀想な気がして……」
装備品を失う悲しさ、わたしもよく知ってるからなぁ〜。
「あんまりしつこいようなら、それくらいしてもいいと思うぞ? それくらいしないと懲りないだろう?」
花藤璃奈の言葉に、それもそうだなぁと思った。
「取り敢えず『レジナ』で追い回せば、逃げ出すだろうからな」
「あはは。わたしの悪評が広まりそうな話だねぇ……」
「まあ、大破寸前で辞めとけば良いんじゃないんですか?」
太一がそう言った。なるほ、それが良いかも?
「それで結果大破したら、自己責任ってことでいいだろ」と岡部くん。
いいのかなぁ……。
「それで結局、今日の決戦は炎の城の防衛になるのか?」
「そうなるだろうと思う」
「冬馬さんは何か言ってるの?」
わたしが聞いたら、岡部くんは肩を竦めた。
「いや、まだなにも聞いてない」
「冬馬さんにも相談しないといけませんね」
「今日はわたしも早目に行くね」
「ただいまー」
「あら、おかえりなさい。アリス」
「今日は決戦だから」
「うん。わかってるわよ、わたしも参加するし」
それを聞いて、わたしは思い出したようにきいた。
「……で、母さん勢力どこだっけ?」
「ひみつ」
「なんで、ひみつにするの?」
「そのうち機会があれば教えるわよ。それまでの楽しみにしていなさ〜い」
「は〜い」
そのあとご飯って、風呂って、2階に上がってしばらくゆっくりした。
「そろそろ行くか」
ノートパソコンを素早く起動。そしてイヤホンセットを耳に掛け、スカイプを開き皆に明るく挨拶。
そうして棚からヘッドギアを取り出し、頭へ装着。目を左右上下に動かし“目”認証カメラ連動感度確認よし。“頭”も左右上下に動かし、前面上下210度HDフル画面カメラワークの動作と感度確認よし。
それから赤いラインの入ったセンサーグローブを装着し、手指を動かし動作感度確認。
次に専用ボディースーツを着込み、ポンポンと軽く叩き衝撃の程度を調整確認。それから腰や身体をひねり、動作感度共に良好確認。
そして専用シューズを履き、軽く前後左右とクイック&クイックバックでチューニング具合確認。
「ヘッドギアよし!
グローブよし!
スーツよし!
シューズよし!
A・F起動よし!!
ドリンク飲んでレッツよし!!」
わたしは真剣な表情で無駄に気合いを入れ!《トリップ用EEGドリンク》を片手にクルリンと腕を回し、『しゃきーん!』と仮面ライダーポーズを真似てかっこ良く決め?素早くキュッとドリンクの蓋を開け、腰に手の甲を軽く当てながらそれを一気飲み!
すると間もなく、わたしの目の前にアストガルド・ファンタジーの世界が次第に広がってゆく──。




