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「えっ? 花藤璃奈の弟くんが、私なんかを?!」
「うんうん! そんな感じだった。
ねね、花藤璃奈~っ。友翔くんからさ。そういう話……っていうか、それらしい態度みたいなのを感じることはなかった?」
「あ、いや……申し訳ないけど、まったくだ。
今ここで知って、驚いてるくらいだし。寝耳に水、ってトコだ」
あれから一旦、家に帰って、AFセット一式をリュックの中にぐいぐい詰め込んでから背負い、3人で真中の家へ。それから更に、真中の支度を待って、花藤璃奈が住んでるマンションへとやってきた。
今は、花藤璃奈の部屋でAFにログインする為の下準備をゴソゴソとしているところ。そんな中で、わたしがマックからずっと気になっていた話題を振ってみたのだ。
初め、赤面して動揺までしていた真中だったんだけど。花藤璃奈のその言葉を聞くなり、しばらくして軽くため息をつき、落ち着いた様子でこう言い出してきた。
「ほ~らね。こんなもんだよ。残念だけど、それはアリスの考え過ぎなんだって。第一、考えても見てみ。今までが今までなんだからさ、そんな訳ないでしょ? アリスだったら有り得るんだろうけど。私なんか気にしてくれるオトコの人なんて、今まで誰ひとりとして居なかったし。そもそも、そこからどうすれば進展(関係が)するのかも分かんないし。経験なんて、まったくのゼロだし。彼氏居ない=年齢だし。また、いつもの気のせいで終わるだけだよ、きっと」
真中はそう言い切ったあと、天を仰ぎ見て呆れ顔なんか見せている。
「そんなこと分かんないよっ。あれは少なくとも、脈アリなんじゃないかなぁ?? そう感じた!」
「あ、待てよ。そういえば……確か」
と、何かを急に思い出したように花藤璃奈。
「初対面のあの日。友翔の奴が、真中のことを細かく聞いていたような?」
「おおーっ!!」
「──ええぇーっ!?」
「初めは、アリスの事かと思ったんだが。よくよく聞いてみると、真中のことだったような感じでなぁ……」
「そっ! ……そうなの?」
「遂に、キタっ!! 真中にも春が♪」
「いや……期待させといて何だが、そう言い切れるだけの自信なんて、まったくないから……」
「べっ! 別に、初めっから期待なんかして居ないけどさぁー……。はぁ~っ」
そんなこと言いながらも、あからさまに残念そう~っ……。真中的には、まんざらでもないのかも?
ていうことは、ていうことはッ??!
な~んて風に、わたしが内心でワクワクドキドキそんな思ってると。花藤璃奈がそんな真中を見つめ、ニッ♪とイタズラっぽく笑み、口を開いてきた。
「だけどまあ、アレだ。うちの友翔もあれで結構、思いやりのある奴だからさ。もしも話しかけられたら、是非、仲良くしてやってくれよ♪」
「……。うん、ほぼほぼ無いとは思うけどさぁ~っ。友翔くんの方に少しでもその気があるんなら、仲良くするくらい全然いいよっ。
まあ……そんな訳はないと思うけど…」
そんな素っ気ない返事を最後はしながらも、真中は照れ臭そうに頬を染め、どこか期待した感じの表情をしてる。
そんな真中の様子を見つめ、わたしも花藤璃奈も互いに顔を見合せ、そんな真中を思わず、『可愛い』なんて思ってしまったのは……ここだけの話です♪




