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マックに着くと、既に太一と岡部くんが先に居て、待ってくれていた。
わたし達はそれぞれカウンターで注文し、席へと向かう。
そこには、花藤璃奈の弟 友翔くんも、にこやかに微笑み手を振りふり座って居て。わたしは、そこで愛想笑い。花藤璃奈は、隣で苦い顔。真中は、なんて事ない表情で頭をちょこっと軽く下げ。何はさておき、明るく挨拶をして席についた。
「それで、召還術師についての新しい情報って、なに?」
わたしは席につくなり、岡部くんにテーブルを挟んで身を乗り出し、そう訊ねてみたのだ。それも、かなり期待を込めた感じの前屈みで! だってさ、あの天敵?とも言えるユイリって人の情報なんだから、そりゃあ~期待もしちゃうってものでっ!
そんなわたしの過剰とも思われる反応に対し、岡部くんは一瞬びっくり眼で、次に困り顔で頬を染め、前髪を軽く触りながら目線を少し逸らし、口を開いてきた。
「天龍姫さん達が、昨日の召還魔法の事とかが気になって、直ぐに手分けし、昨夜から朝方まで調べてくれたらしくてな。
それで……」
「そっ、それで!!」
「……樹海最深部や山岳地帯の最深部に、かなりヤバいくらいに強いボス級のモンスターが居ただろ? 覚えているか?」
「あ、居た居た。うんうん! 覚えてる!」
「どうもそれを倒すことで、新しい技などが手に入れられることが判明したそうなんだ」
「「「──!!?」」」
急に、一筋の光明が見えた様な心境かも~っ♪
そんなことをほっこりと呑気に思いつつも、再び、前屈みになって岡部くんに聞いた。
「──ってことは、そこへ行ったら、わたしにもユイリって人と同じ召還魔法が使えるようになるんだよねっ!?」
「同じかどうかは、分からないが……。まあ、そうなれる可能性はある、ってことになるじゃないのかぁ?」
よしッ、キタっ!
となれば、このあと直ぐにでも帰って、そこを攻略しまくりのレベル上げまくりで。あのユイリって人に、対抗できるよう頑張るぞぉーっ! それで前回よりも、皆の役に立てるようになってやるんだ!!
みーてーろーよー!
そんなことを思い、握り拳をつくって「よしっ!」と気合いを入れて居ると、太一が何だかとても言い難そうな様子で口を開いてきた。
「そう簡単に行けばいいのですが……。話によると、最深部は相当に手強いモンスターばかりで、あの天龍姫さんでさえ、倒せたのはギリギリだったそうです」
「つまり、それだけ強い、ってことで。それどころか、装備品が1つ、大破したらしくてな」
「「「た、大破っ!?」」」
そッ、そこまで強いの??
「今夜は大決戦の最終日だし、直前で無理して装備を失うのも考えものだから。よくよく考えてから、決めた方が良いと思う」
「ん……ぅん…そう、だね。そうするよ…」
大破、か……。でも、そこへ行かなければ、あのユイリって人には、きっと勝てない。だからといって、装備品が大破したら、元も子も無い。大破しないにしても、そこで使用した装備品の修理には、それなりの時間と手間が掛かる。そうなると、今夜の大決戦には間に合わない可能性だってある、ってことで……。
ああ、ダメだ。普通に考えて、行くべきじゃないなぁ~っ、これは。
わたしがそうこう考えて、やれやれ顔でため息をつくと。隣の花藤璃奈が、なんて事ないような表情でこう言ってきた。
「やる前から、そんな風に頭悩ませたってしょうがないだろう? やるだけやって、それでダメなら仕方ない、ってことで良いんじゃないのかぁ?」
「……まあ、それはそうなのかも知れないけどさぁ~っ」
それで、もしも本当に大破なんかしたら、結局、ギルドや連盟の皆にも迷惑かけちゃうことになる。そんな簡単な話じゃないんだよ。
わたしがそんな事を内心で考え困り顔で思っていると、花藤璃奈が更にこう繋げてきた。
「それに、万が一のことがあったとしてもさ。その時は、その時で。みんなで協力し合って、バックアップすれば良いだけの話だろう?」
「──そ、それは! ……そう、だけどさ。そんな風に、いつも頼ってばかり居ても、本当に良いのかな?」
わたしがそう言うと、花藤璃奈は何かに気づいた様子を見せたあと、軽く笑み口を開いた。
「ばぁ~か。そんなの、良い、に決まってんだろう。その為の《組織》なんだ。
困った時は、頼るし。頼られた時は、支える。それが出来てこそ、組織なんてモノは、初めて存在の意味があるんだよ。そうだろう?」
「……そっ、か。そだね?」
不思議なもので、花藤璃奈のその言葉を聞いて、気持ちが急に楽になれた。
言われてみれば、確かにそうだと思う。
その場に居合わせた岡部くんや太一、ゆうとくんに真中も、何か納得顔を見せてくれている。
「と、決まれば! このあと早々に帰って、その難関の攻略に取り掛かるとするか」
「ですね♪」
「岡部くん達さ、そこの攻略に関する情報とかあれば、あとで教えてくれる?」
「ああ、天龍姫さん達から送られて来たものをメールで送るよ」
「ありがとう、岡部くん! 太一くんも、サンキュ♪」
「あ、真中先輩っ! ボクには、そういうのくれないの?!」
「コラっ、友翔! お前は、南東ワイズヘイル側の人間なんだから、無くて当前だろう?」
「そんなの差別だー!」
「いやいや、そういう問題では……」
そのあと直ぐ、わたし達は楽しく笑顔でそこで別れた。というか、花藤璃奈の弟くんってさ、もしかして真中に夢中なのかな??
これは、かなり気になるかもっ!?




