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『…………はぁ、分かりましたよ。では、近くの砦を急ぎ占拠してください』
「──!?」
『もう残り時間がありません。周囲の拠点は全て、ワイズヘイル軍に取り返されてしまいました。このままだと、明日はまた、スタートラインからの開始になります。そうなった場合の時間的ロスは、とても大きい。だから』
「つまり、奪取して終わるっ!?」
『ええ、その通りです。急いで!』
……冬馬さんが言う通り、そうすればまた、明日に繋ぐことが出来る。拠点さえ奪い取ることが出来れば!
わたしは冬馬さんからの作戦提案を受けて、直ぐに納得顔で大きく頷き、素早く行動した。
「──!? 急になんだ?? ……チッ。逃がすものか!」
ユイリはそんなわたしの後を、直ぐに追い掛けて来る。けど、追いつかれてなるもんか!
「拠点、拠点……一番近い拠点は、どこ?! あ、あった!!」
レーダーマップに大きな拠点が姿を現し始め、間もなくそれは目視可能な距離にまで迫ってきた。
が、そんなわたしの前へ突如、ユイリが再びユニコーンらしき聖獣に跨り立ち塞がり降り立ち。それから、ニヤリと笑みを見せ口を開く。
「元、アストリアの赤き召還術師。お前の狙いはもしや、あの大砦かぁ? この私に勝てないからと……つくづく小賢しい奴だな」
「………はぁ、はぁ!」
出来れば振り切りたかったけど、こうなれば押し通すしかないかも??
わたしは真剣な眼差しでユイリを見つめたあと、杖をギュッと握りしめ、一気に力強く地を蹴り踏み出した。
だけど、普通にこのユイリと召還魔法で争ってもきっと勝てない。なら、何か工夫をするしかないよ。考えて! 何かきっと、策はある筈っ!!
「ファイア!」
わたしはまた、目眩しに黒魔法のファイアを唱えた。が、その手はユイリに読まれ、上に跳ばれ交わされた。
しかも、間もなくそこへユイリの召還魔法が強烈に炸裂。わたしはそれをギリギリのところで逃げかわし、光系継続弓矢を召還し逃げ周りながらもユイリ目掛けて射った。が、ユイリも闇系継続弓矢をまたしても召還し、射り返して消滅させてくる。
そうした攻防を繰り返しながらも、わたしは大砦を懸命に目指し、逃げ周り、魔聖水を一気飲み、カムカの実をポリポリと食べ、リス顔になりつつもやり返し、大砦の拠点NPCをようやく目前にした。
「……はぁ、はぁっ! 残り1分!!」
大砦の拠点NPC周りには、多数のワイズヘイル兵が守っていたが、もう気にしていられないっ。
わたしは、残りの魔聖水数本を一気飲みっ。
「《合成召喚:幻火獣トナティウホルン!》」
「ちっ……それでNPCを倒すつもりかぁ? 甘いなッ!
《合成召喚:冥海神姫スキュレー!》」
思った通り、ユイリはわたしに対抗して召喚戦神を呼び出した。作戦通りだ!
トナティウホルンとスキュレーが暴れる中、ワイズヘイル軍は次々と逃げ周り倒れ、拠点NPC周りを守るプレイヤーは居なくなってゆく。
よし、キタっ!
残り、20秒!
トナティウホルンは、スキュレーの攻撃で消滅。わたしは消滅するトナティウホルンの肩から城床へ降り立つと空かさず動き、幻獣王の聖杖を振りかざし下ろし、拠点NPCを攻撃。杖の追加攻撃で猛毒ダメージ。更に、耐性無効化-7%ダウン。それにより、拠点NPCの体力を奪ってゆく。
残り、10秒!
「おのれ、こしゃくな……。スキュレー! お前の恨みは、そんなものか!! アイツをやれッ!」
《冥海神姫:キルケー……まさか、アナタなの? 親友だと信じてきたアナタが、この私を裏切って……いた?!》
「いや、だからそれっ、意味不明なんですけどッ!!」
スキュレーの津波攻撃を受けつつ、わたしは再び拠点NPCを打撃。追加猛毒ダメージが重なり、更にどんどん体力を減らしてゆく。
残り、3秒!
わたしは、もう構わずに杖で打撃。更に、追加猛毒ダメージが加速。
残り、1秒!!
「お願い、《ファルモル!》」
「スキュレー!! 殺れっ!」
ファルモルとスキュレーがぶつかり合うと同時、わたしとユイリが睨み合い杖をぶつけ合うと同時、全てが……ホワイトアウトした──。




