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「──開始からたったの1時間で陥落とか、有り得るのかよッ??」
りなりぃが凄い驚いた表情で、ワールドチャット画面を覗いてるみたい。
確かに、これまでの経験からいって、初日に陥落なんて殆ど無かった。しかも、開始1時間でなんて、とても信じられない。幾らなんでも、早過ぎるよ!
「ほら、アリス。ワールドチャット見てみっ! これホントなら、相当ヤバいよ! とんでもなく強い召還術師が、たったの1人で、ガナトリア城を陥落させたってさ!」
「──召還術師が、しかも1人でッ!?」
「ていうと……まさか、例のアレかぁ?」
「へ?」
アレ?
アレって、なんじゃらほい??
わたしは、困り顔に苦笑い聞いた。
「えっと……あはは♪ そのアレって、なんだっけ??」
「アリス、忘れたの? りなりぃのさ……あ、ごめん。
ほら、この前さ、カテリナの弟さんが教えてくれたでしょ? 南東ワイズヘイルにも居る、最強の召還術師。アレのことなんじゃないのかな?」
「あ! あーっ、アレねっ!! 今ようやく思い出したっ」
この前、りなりぃの弟くんが言ってた、南東ワイズヘイルの召還術師。強いとは聞いていたけど、その強さは予想以上だったのかも?? 1人で北東陣営の城を陥落なんて、わたしにはとても真似出来ないもんね。凄いもんだ。
「だけど、こうなると困ったな」
「困る? なにが困るの??」
「バカだな……。当てにしていた北東ガナトリアの共闘ギルド連合体が、陥落したことで同時に消滅したんだ。これはどう考えても困るだろう?」
「あっ、そっか……確かに、それは困るよね?」
勢力陣営の城が陥落すると、そこに所属するプレイヤーは全て、その時点で大決戦の舞台から消滅し、排除される。なので、陥落した北東ガナトリアに所属するギルド及びプレイヤーは皆、その時点から戦場より消え去った、ってことで……。
となると、北東ガナトリアと共闘を予定していたこちらとしては、確かに凄い困る。
それでなくても南東ワイズヘイル陣営の規模は、こちらの数倍はある。ランカーだって、これも同じくこちらの数倍多い。客観的に見て、開始から僅か1時間ほどで、勝敗が決まってしまったようなものだ。
そんな思ってると、フェイトさんとランズが軽くため息をついて口を開いてきた。
「まあ、この場でいつまでもこうやってても仕方ないから、とにかく予定通り、此処から南下しつつ南東ワイズヘイルを目指すことにしよう。
それで良いか? アリス」
「あ……そうだね。フェイトさん、了解!」
今更ながら、中身が岡部くんだと解ってるのに、さん付けで呼んでるのが不思議だけど。今になって呼び方を変えるというのも、それこそ今更だもんねぇ?
わたしは直ぐに、《基礎ステータスUp》を掛け、結果160%アップで移動スピードアップ成功。
急ぎ、南東ワイズヘイル城を目指し走り出した。




