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アストガルド・ファンタジー  作者: みゃも
【第一期】、第2章《デュセオルゼ=ヴォルガノフス討伐!》
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-4-

「よっ! アリス」

「はは、お邪魔します」


 次の日のお昼休み。

 いつものように真中と仲良く学校の屋上でお昼ってると、岡部くんがもう友人を連れ現れた。

 相変わらずその手には、購買部で買ったらしいパンの入った袋を持ってる。よく見たら、二人とも同じ。


 まさか、お弁当とか用意してくれないのかなぁ?



「紹介するよ。友人で同じクラスの脇坂太一」

「太一、と呼び捨てでいいからね」

 

 脇坂太一くんは笑顔でそう言った。なんだかとても好印象な感じ。割とわたし好みかも?


「はじめまして! わたしは鈴原亜理寿です。アリスと気楽に声を掛けてくださいっ。みんなからも、そんな感じでいつも呼ばれてますから♪」

「榊原真中です。わたしは、真中と呼んで欲しいかな?」


 挨拶もほどほどに、2人はわたし達の前にあぐらをかいて座った。



「アリス、今日もデュセオルゼ討伐行くんだろ?」

「ン、うん……だけど、なんだかみんなに迷惑掛けてないかなぁ? どうも悪い気がしてさ……」

「もちろん掛けてはいますよ、アリス。でもね」


 そう言ったのは、意外にも冷徹な岡部くんではなく、太一くんの方だった。


「だけどそれでアリスさんが強化されるのなら、ギルドとしては、寧ろプラスだからね。気にすることなんてありません」


 なんだかまるで……昨日の岡部くんみたいなことを 言ってくれている。だけど、同じことを言われただけなのに不思議と安心感はその倍くらいに感じられるのだから不思議だ。


「あ、あのぅ~……もしかして太一くんもA・Fをやっているのですかぁ?」


 わたしがそう聞くと、岡部くんと太一くんは互いに顔を合わせ笑みを浮かべている。


「やっているもやってないも、この所いつもお前と一緒してくれてるギルド補佐のランズベルナントは、この太一なんだよ」

「――へ? うへええーッ!!」


 わたしはびっくりした。

 だってランズベルナントさんは、フェイトさんくらい大人な感じの人で、印象としては二十代半ばくらいなんだろうな?とずっと思っていたから。


 なのに、まさか同級生で、しかも同じ学校同士だったなんて……。


「い、いつもお世話になっております!!」

 わたしは思わず両手をついて、頭を下げお礼をした。

 だってそのくらい、お世話になりっぱなしってますからっ!


「いやいや、こちらこそ可愛いアリスちゃんとこのところずっとご一緒出来て、光栄なくらいなんですから、気にしないでいいですよ。

それよりも『くん』付けは要らないので、遠慮なく呼び捨てちゃって下さい」


 と、言われてもなぁ……明らかにわたしよりも格上と思われる人を呼び捨てにするのは、偲ばれるのでありますが……。


「あ、ではあのぅ~……太一?」

「はい、アリス。これからも、よろしくね♪」


「あ、はいっ!!」


 わたしはなんだか嬉しくなり、元気よくそう返した。

 そんなわたしの元気な返事を聞いて、太一……は嬉しそうな笑みを浮かべてくれていた。それでわたしはつい、頬が真っ赤になり俯いてしまう。



 ヤバい、もぅ恋に落ちてしまいそうだよぉ~……。



 そんなわたしを、太一の隣であぐらをかいて座る岡部くんが面白くもなさそうな表情を浮かべ、不機嫌顔を見せ口を開いてきた。



「あーあ、太一なんかここへ連れてくるんじゃなかったかなぁー……。

言っておくけど、太一。アリスはオレの彼女だからな、手を出すなよ!」


 は? いつ誰がなに?? あはは♪ ご冗談を!!


「はは、遂に白状したって感じですか?」


 ――は? へ??


「だけど直輝、まだアリスの気持ちは確認してなかったんだろ? だったらこの僕にも、チャンスはまだある、ってことになる」

「お前なぁ……このオレとの友情とアリス、どっちが大事なんだよ?」


「その言葉、そのままお返しさせて頂きすよ♪」

「……」


 岡部くんはそれを聞いて、困り顔に頭を抱え込む。


「わかった、わかった! 結局のところ選ぶのはオレじゃない、アリスだ。

だがな、オレの許可もなく。アリスに手なんか出すんじゃねぇーぞ!」

「ははは! 直輝、言ってることが支離滅裂だよ?

アリスがこの僕を選んでくれたら、それで僕が彼女に何をしようと、僕たち2人の勝手でしょ? 違いますか? 

ね、アリス♪」

「……」


 わたしはそれまで、2人の会話を途中くらいからぼぉーっと聞いていた。初めは理解ができなくて……。でも段々と話の内容がわかるようになり、流石に頬が真っ赤に染まる。

 が、急にわたしの隣から殺気を感じたので慌てて見ると、真中が怒った顔をして、わたしのことをジッと見つめている。



 ヤ、ヤバいかも……これ。



 真中は急に立ち上がるなり、何も言わず不機嫌顔のまま立ち去って行った。

 わたしはそれで顔が真っ青になり、慌てて立ち上がって、真中を追いかけることにする。

 が、その前に振り返り2人のことをキッ!と見つめ口を大きく開き言ってやる!


「――鈍感! バカ!! もう2人とも大きらいっ!!」

「は?」

「え??」


 

 わたしはそんな2人には構わず、本当に怒った顔をして学校の屋上出入り口の扉を抜け中へ入る。

 と……真中は少しだけ階段を下った辺りで壁を背にして、このわたしが来るのを元気なく俯いた感じで待ってくれていた。


 わたしはそんな真中を見つめ、その場でため息をつき。なんて言えばいいのか上手い言葉がまるで思い付かないままに、一段ずつ下がり、真中に近づいてゆく。と、


「どうして……アリスばかりが、いつもモテるの?」

「……」


 そんなことを聞かれても、わたしにだってわからない。こちらが聞きたいくらいだもの。困ってしまう。


「中学の時もそうだった。私が気に入った男子はみんな、結局はアリスのことばかり気にするようになる……。

ねぇ、アリス! 私のどこがいけない? 教えてよ!!」

「そ……そんな…こと、ないよ……」


「――あるよ!! だって実際のところ、考えてみてみ!」

「ないよ! そんなコトは、ないって!! 少なくともわたしは、真中のこと大好きだし! どこの誰よりも!!」


「――!? 

……だったらいっそ、アリスが男の子なら良かったのに……」


 真中はふと笑みを零し、それで元気なく階段を下りてゆく。

 だけどわたしは、それを許さず真剣な表情をして真中を直ぐに追いかけると、そのまま後ろから抱きしめ大声を出して言った。


「イヤだよ! わたし、こんなことで真中を失いたくなんかない!!」

「――!?」


 そんなわたしを、真中はまた微笑みながら見つめ、そして何かに納得したような表情を浮かべ言った。


「そっか……ようやく私にも、わかった気がする」

「へ? なにが??」


「私もきっと男の子なら、アリスのことがとても大好きになっていたと思うから」

「……」


  真中は優しげに微笑みそう言うと、わたしの手を軽く振り払い、再び階段を降りてゆく……。そして、


「心配ないよ、アリス」と笑顔で軽く振り返り言った。

 でも、無理しているのがとてもよくわかる。



 だけど、わたしはこの時、その様子を黙って見送ることしかできなかった。


 そんな自分が、とても情けなく思う……。




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