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「アリスさまっ、アリスお姉さまっ。起きてください。もう朝ですよ!」
「ほへ?」
目を覚ますと、弥鈴ちゃんの顔が直ぐ近くにあり。ベットの上で眠るわたしを、一生懸命に揺すり起こしてた。
「ン~っ……弥鈴ちゃん?? おはよ~っ♪」
「おはようございます。アリスお姉さまっ! お姉さまの寝顔は、この通り、バッチリ撮らせて頂きましたので♪」
「──ン? わ、ダメっ駄目!」
そう言って見せてくれた弥鈴ちゃんのスマホ画面には、ヨダレを垂らして幸せそうに眠ってる、間抜けなわたしの寝顔がバッチリと写ってた。
慌てて手を伸ばし、スマホを取り上げ、消そうとしたけど。その前にサッと素早く逃げられ、弥鈴ちゃんは部屋の入り口まで行き、そこで満面の笑みを見せ手をふりふり「では、下でお待ちしておりますので~♪」と言い残し、トテトテと可愛いらしく降りてった。
「……はぁ、なるほど。もう10時でしたか…」
それを絶望の眼で見送りつつ、時計の針をそれとなく確かめつつ、わたしはため息混じりにそう呟き。そのあと半身を起こし、ベットの脇に置いてあったスマホをみると、チカチカと光ってて。確認すると、真中から『いよいよ、今晩だね!』というメッセージが届いてた。
即座に、『ごめん。いま起きた(苦笑)』と返信。すると、僅か三秒後に『(笑)』と返ってくる。
わたしは、それを見て微笑み「──よっ!」と元気よくベットから飛び起きた。
◇ ◇ ◇
「今晩はお泊まりするらしいから、部屋を片付けといてね。アリス」
「へ? 誰が??」
「誰が、って……。弥鈴ちゃんに決まってるじゃないの。今日は、ちゃんとお父さんの許可も貰って来てるそうだから、何も心配ないわよ」
「は!? えっ!!?」
「アリスお姉さまっ、今晩はお世話になります♪」
「──はあーっ!!?」
話を聞くと、お泊まりセットもAFセットも(ノートパソコン込み)、ちゃんと用意して来てるらしい。
どうやって、ここまで持って来たんだろ??
「こんなにも可愛い弥鈴ちゃんと一緒に眠れるなんて、母さん羨ましいわよ」
「私もアリスお姉さまと御一緒出来て、とても嬉しいですっ♪」
「は、ハハ……」
違う意味で、貞操の危険を感じちゃうけど。
「ところで、アリスお姉さまっ」
「ふぁい? モグモグ」
「今日は、真中たちと会う予定などあるのですか?」
「うん、あるよ。弥鈴ちゃんも、一緒について来る?」
「行きます、行きますっ!」
そんな訳で、そのあと軽くシャワーって、改めて歯を磨いて、弥鈴ちゃんと一緒に公園って、真中と会って、本屋って、りなりぃとも会う。
◇ ◇ ◇
「……それで、この小生意気なチビも、ここに居るって訳かぁ?」
「チビとはなんだ、りなりぃー!」
「コラコラ、ふたりとも仲良く仲良く」
ただでさえ、りなりぃは人目を奪って惹き付けちゃうのに、これ以上目立つと、かなり恥ずかしいよ。
実際、花藤璃奈が笑顔で手をふりふり店内へ入って来るなり。周りのお客と店員が、そんなりなりぃをギョッとした表情と眼で見つめ、そのあと横目でチラチラと見つめたりして、釘付けになってる。
相変わらずな周りの反応に、わたし的には、そろそろ慣れてはきたんだけどさ~。
「あ、そうだアリス。うちの友翔が今朝言ってたんだけど……。例のワイズヘイルに居る強いという噂の召還使い、『超強化』したかなりヤバい装備を新たに手に入れたらしくてな、更に強くなったらしいよ。それで、友翔から『くれぐれも近づかないように』って、アリスに伝えるよう頼まれてさ」
「超強化??」
どこかで聞いたような気がするけど……なんだっけ?
「まあ、そんな訳だから。一応、気をつけといてくれるか?」
「うん、わかった。友翔くんに、『忠告ありがとう』って伝えといてくれる?」
「ああ。ちゃんと伝えとくよ」
「……そうだね。今回はどのみち、到底勝てない大決戦だろうしさ。無理なんかして、装備を破損されてもイヤなだけだもんね?」
「ふん……真中。お前っ、今からそんなやる気のないことを言いおって、実に情けのないヤツだな」
「──こ、コラコラ、弥鈴ちゃん!」
AF内の調子で、急に横柄な態度で腕を組みそんなことを言うもんだから、真中もりなりぃも目が点になってるよ。
「ちゃんと『真中さん』と言わないとダメだよ」
「──!? ……は、はぃ。アリスお姉さま…」
わたしが、『そう言わないとバラしちゃうぞ!』的な雰囲気を醸し出して真剣に言うと、弥鈴ちゃんは急に素直になり、しゅんとして反省顔に言ってる。それを見て、わたしは思わず胸がキュンとなってしまった。
うん。素直だと凄い可愛い、可愛い♪ 思わず抱き締めたくなっちゃうくらい可愛い! でも、ここは我慢がまん。示しくらいは、ちゃんとつけとかなくちゃね?
そうこう思いながらも、それでも顔は、ニヘラと笑っちゃうけどさ。
そんなわたしを、真中が半眼の呆れ顔に見つめ、口を開いた。
「……私、思うんだけどさ。友翔くんてさ、アリスのこと、実は好きなんじゃないの?」
「「「──はあっ!!?」」」
真中の唐突な電撃発言に、わたしもりなりぃも弥鈴ちゃんもびっくりドッキリ眼。
「あ! なんとなく、なんだけど……」
「いやいや、それはないない!」
「……いや、それは有りだし。案外、有り得るのかもしれないぞぉ?」
「「「──えっ!!?」」」
今度はりなりぃの予想外な電撃発言に、わたしも真中も弥鈴ちゃんもびっくりドッキリ眼。
「だって友翔のヤツ。昨日、アリスと会ってから、ずっとアリスのこと気にしたようなことばかり言っていたしなぁ~っ。実を言うと、なんとなく気にはなっていたんだ。
ってなことで、うちの友翔のこと、これから末永く宜しく頼むよ♪」
「──!!? い、いやいや!」
友翔くんみたいなイケメンくんが、わたしのことを好きだなんて有り得ないし! そもそもわたしには、太一が居るし!!
「……はぁ。また今回も、アリスかぁ~っ…私、なんでこうもモテないんだろ……」
「や、待って、真中、待って!! それ違うから!」
「ダメですっ! 私のアリスさまは、誰にも渡しませんからっ!!」
「「「──ええぇーっ!!?」」」
そこでわたしに思いっきり抱き付きながら真顔で言う次なる弥鈴ちゃんの爆弾発言に、わたしも真中もりなりぃも思わず頬を真っ赤にして後退りのびっくり眼。しかも……点。
そんなこんなで、(どんなこんなで?)弥鈴ちゃんが今夜うちにお泊まりする話をすると、真中もりなりぃも今夜うちに泊まることになった。
◇ ◇ ◇
「いゃあ~っ。はっはっはっ♪ 賑やかなのは、実に良いことですなぁあ~」
「「「…………」」」
真中の家に寄って、りなりぃが住むマンションに寄って、それからうちに帰り何やら賑やかな居間を覗き見ると。弥鈴ちゃんのお父さんが、何故かそこに居た。これには弥鈴ちゃんもわたしも思わず目が点。
「……なぜ、親父殿がここに居るのだ?」
「何故とは……実の親に対し、失礼なヤツだな我が娘よ。
もしやお前が、こちらの御家族皆様方に迷惑を掛けているのではないかと心配になって、わざわざこうして出向いて来たのではないか。この、子を思う優しき親の熱き気持ち。お前には、まだまだ到底解らぬのであろうな?」
「「「…………」」」
とか言いながら、弥鈴ちゃんのお父さん。弥鈴ちゃんが今朝、うちに来る途中で買って持って来てた西瓜を(夏休み中に、神社でバイトして貯めた貴重なお金で買って来てくれてた)、モグモグと美味しそうに独りで食べてた。
その向こう側のキッチンに居た母さんが微妙な困り顔の作り笑いで、『ごめんなさいねぇ~っ』という感じで、弥鈴ちゃんに対し申し訳なさそうに手を合わせてる。
何となく……状況はわかった、かも?
「こ……このっ、クソ親父ぃい──ッ!!」
「おっと!」
弥鈴ちゃんが持ってたアイスをお父さんに投げつけると、それを見事に口でナイスキャッチ?そのまま袋を開け、モグモグ食べてる。
「バカ者。食べ物を粗末にするでないと、あれほど」
「──そういう問題かあッ!」
「ま……まあまあ~っ♪」
わたしが止める間もなく、親子喧嘩が始まった。
はぁ、やれやれ……。
◇ ◇ ◇




