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「……ねぇ、アリスはさ。今でもフェイトさんが憧れの人なんでしょ?」
電車に乗り込み、1駅近づいて来た所で、急に真中がそう真剣な声色で訊いてきたのだ。
わたしはそれでびっくりして、少し頬を染め、それから徐に答えた。
「え? あ……まあ、そうだったんだけどねぇ。その正体が岡部くんじゃあさぁ~。正直、残念というか……ぁは、ハハ…」
「ぁ……そか、だよね?」
その時、真中はホッとした表情を見せた。
わたしは、それを見て気づく。
あ、そっか……。
そう言えば、真中は岡部くんのことが好きなんだっけ? 今頃、思い出した。
わたしはそんな真中をそっと横目に見つめ、次に明るい笑顔を向け言った。
「心配ないよ、真中。わたしには、太一が居るし。
それにね! 今さら、太一のことを裏切れる訳ないっしょ? だからさぁ~っ、安心してよ♪」
わたしの言葉を聞いて、真中はまたホッとした安堵の表情を見せ、それから嬉しそうにして頷く──。
「うん!」
電車の扉が、そこでタイミング良く開いた。
「じゃあね、アリス! また今晩!」
「うん、おう! またねっ、真中♪」




