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「「「──へっ? 浮遊遺跡??」」」
「ええ、今ならそこが最良の狩場だと思います」
あれから太一も、マックでわたし達4人と合流した。
今は、テーブル席で皆とポテトを摘まみ食べつつ。ジュースを飲みつつ。今夜向かう、狩場をどこにするか話し合ってる。
そこで話に出て来たのが、浮遊遺跡だった。
浮遊遺跡は、南西シャインティアの首都フェル=ベルから出て直ぐに広がる『大平原』を駆け抜け。更に、幻聖獣アルケミフォスの棲む『大樹海』の先に聳え立つ。『山岳地帯』の谷間を通り抜け越えた先に広がる『砂漠地帯』の中心部、『古代遺跡』の上空にある。
って言われても解りにくいか? 何しろ、凄く遠い場所ってこと。
まあ、1度は行ったことがある場所だから、テレポートを使えばあっという間なんだけどね?
「だけど浮遊遺跡って。結局、行く方法が見つからなかったんじゃなかった?」
真中が、太一にそう訊いたのだ。
わたしもそう記憶していたから、隣でうんうん!と頷く。
「ええ、そうだったのですが。先日、ザカールさん達が冬馬さんを強引に付き添わせ、一緒に発見したそうで。
どうやら、そこへの鍵となるのが、大樹海に棲む幻聖獣アルケミフォスだったようです」
「「──あの、大樹海の幻聖獣があーっ!!?」」
どうやらわたし達と向かい合わせに座る岡部くんは、既にその事を知ってたらしく、反応が無かった。
でも、わたしも真中もりなりぃも初耳。
「それって、どういうコトだよ? 何でそんな大切なコト、直ぐに教えてくれなかったんだぁ??」
りなりぃだ。そりゃ、訊きたくもなるよね?
わたしも真中も互いに顔を見合せ、一緒にうんうん!と頷いた。
「まあまあ、落ち着いて聞いてください。これでも、ボクとしては直ぐに知らせてるつもりなので。
それより、古代遺跡に1ヶ所だけ変わった場所があったのを覚えてますか?
ほら、円形の」
「「「…………」」」
そう言えば、古代遺跡には祭壇があり、凄く不思議な空間があった。
きっと、そこのコトだと思う。
「それで? 今なら、浮遊遺跡までのルートが解放してるから、『誰でも行ける』ってコトなのかぁ?」
「いえ、残念ながら誰でもという訳ではありません。ある特定の条件をクリアした者だけが、そこの鍵を開放可能にするようです」
「「「鍵?」」」
わたし達3人は、びっくり眼で顔を見合せた。
「で、その鍵って。どういうものなの?」
わたしよりも先に、真中がそう訊いてくれた。
「浮遊遺跡の門番というのが居るらしいのですが。先ほど言った条件をクリアした上で、古代遺跡の祭壇へ近付くと、突然にこう言って襲って来るそうです。
『我が弟を倒したは、お前たちか?』と」
「……それって。つまり、アルケミたんのお兄さん、って設定??」
「ええ、そうだと思います。ザカールさん達も『これは勝てない』と踏んで、その場は直ぐに逃げ出したそうですが……。
恐らく、その門番を倒すことで、浮遊遺跡への道が開ける筈です。
とは言え、今はただの推測に過ぎないのですが……。
どうです? 多少リスクは有りますが、この話、乗ってみようとは思いませんか?」
「…………」
わたし達3人は、またそこでお互いに顔を見合せた。
そのあとで、わたしは苦笑い徐に口を開く。
「だけどさっ。ザカールさん達でも、手強いと感じて逃げ出した程なんだよねぇ?
てことは、相当強いんでしょ??」
興味があるのは確かなんだけど、そんな相手と戦ったら、わたしの装備品がどうなるのか……かなり不安になる。
「まあ、今のアリスの装備だと、また幾つか壊れる可能性があるからなぁ~っ。
そもそも大樹海の幻聖獣も山岳地帯の黒龍の亜種もヤバいってことで、1度は話も済ませていた訳だし……。ましてや、そんな強敵なんてな。
なぁ、真中はどうする?」
「え? どうするって私に訊かれてもな……そこはアリス次第だから。アリスが行くなら、私も着いて行くよ。
アリスが行かないなら、私も行かない」
「あ、いいよいいよ! 真中はわたしのことなんて気にしなくて!
わたしは今晩、同じ地雷同士、冬馬さんと仲良くヴォルガたん狩りとか適当にやってるからさぁ~っ。
真中達は楽しんで来てよ♪」
皆に着いて行きたいのは山々なんだけどさ。初めから足手まといになるって判っているからね?
「バカ言うなよっ、足手まとい!」
「──ぅッわ!!?」
わたしの隣に居たりなりぃが、急に腕を掴み、怒ったようにしてそう言ってきたのだ。
それにしても──ぐはっ!!
久しぶりに足手まとい、言われたなぁ~っ……あは、ハハ…泣けるっ!
「お前が居なくちゃ、意味がないだろう?」
「──へ?」
「そもそも、お前の装備強化がメインなんだからなっ。それを忘れるなよ」
「そうだよ、アリス! だったら今晩は、一緒にヴォルガノ討伐に行こう! それなら良いんでしょ?」
「あ……ぅん。い、いや、待って! 二人の気持ちは、とても嬉しいんだけど。
でもさ、やっぱり折角だから、みんなで討伐して来なよ! でないと、他の人たちから先越されちゃうよぉ?
そうなったら、勿体ない、って思わない?」
わたしがそう言うと、みんな黙って、困り顔で互いに顔を見合せてる。
何だか、気を使わせてしまったかなぁ?
勿論、そう言ってくれた2人の気持ちは素直に嬉しい。それなのに、わたしって気の利いたことも言えず、本当に駄目だなぁ~っ。
こんな時に、弥鈴ちゃんが居てくれたら、きっと、この場を直ぐに明るくしてくれるんだろうけど……。
わたしがそうこう考えていると、りなりぃが急に苛ついたような表情を見せてきた。
「勿体ないと思うんなら、足手まとい。良いから、お前も来いよっ!」
「え? いやっ! だからわたしが行くと、本当に足手まといになるから……」
「もう、りなりぃ~……今の言葉の選択は、きっと間違えてるよ?」
真中からそう指摘され、りなりぃは「しまったな」という表情をして、また何かを考えてるようだった。
たぶん、言葉の選択の方かなぁ??
「……あのな。感動的になってるところ悪いんだけど、1つ言わせて貰ってもいいかぁ?」
見ると、岡部くんが呆れ顔の半眼で、軽く手を上げていた。
「ザカールさんの話だと、討伐参加出来るのは、アルケミフォスを倒したことのあるメンバーのみ。
参加条件が揃ってない他の奴等は、戦闘開始と共に弾き出される。
つまりな、現状で参加出来るのは、オレ達5人とザカールさんとカエル軍曹と冬馬さんということになる。
今だと最大で、8人までパーティーが組めるから、これで丁度8人。
しかも、相手は強敵。寧ろ、猫の手も借りたいくらいなんだ。ましてや、アリスの補助召還魔法は、有ると大変ありがたい。
この意味、判るかぁ?」
「…………え? あれっ??」
「「ンっ!!?」」
結局のところ、どのみちわたしが参加するのが前提だったっポイ??
じゃあ、ここまでの時間、何だったの?
──ぐはっ!!
◇ ◇ ◇




