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「ひゃあ~っ、これはまた凄いねぇーッ」
太一の親戚が経営するホテルは予想よりも大きく広々としていたので、わたし達は口をあんぐり半開きって驚いてた。
「ホント驚いたよね。太一くん、実は凄い資産家だったの?」
真中も同じく驚いてて、太一のことを羨望の眼差しで見つめてる。そんな真中を、太一はちょっと頬を染め見つめ、苦笑い答えた。
「いえいえ、うち自体は一般的な家庭ですよ」
「とか言うが、お前ん家、何気に結構デカイよなぁ?」
岡部くんのその一言に、わたしは何となく興味津々。太一のその横顔を、身を屈め斜め下からこっそり覗いてみた。
「へぇ~っ、そうなんだ? 太一の家ってさ、実はお金持ちなんだね。初耳~っ」
考えてみるとさ、わたしって太一のことをよく知らないのよね。この際だから、ちょっとだけ聞いてみようかな?
「太一のお父さんて、実はどこかの社長さんとか?」
「いや、だからアリス。うちは本当に普通だから……」
と、そこへ。ここのホテル関係者の人が数人近づいてきた。
「太一、お久しぶりね。いらっしゃい。そちらの皆さんは、あなたのお友達?」
「あ……ええ、おばさん。お久しぶりです。お世話になります」
「「「はっ、はじめましてっ! お世話になりますっ!!」」」
「はい、はい♪ それにしても女の子まで居るなんてねぇ……そんな話聞いてなかったわよ、太一」
その瞬間、ほんの少しだけ何とも言えない緊張が走った。が、
「ご心配なく。みんなボクの信頼出来る友人なので、おばさんに迷惑をかけるような真似だけは絶対にしませんから」
「…………そう? うん、その言葉を聞いて安心しましたよ、太一。さあさ、あなた達もこちらへいらっしゃ~い」
「「「──は、はいっ!」」」
わたし達はそれを聞いて、ホッと安心した。
それからホテル内へと招かれ、今晩泊まる部屋へと案内される。そこは三階にある管理人室となりの手狭な空き部屋だった。
「本当はあなた達〝ふたり〟も、〝8階〟の眺めの良い部屋を用意していたんだけど。でもまさか、年頃の若い男女をそんな近くに置いとけませんからねぇ~っ。
大事な子供を預かった身としては、ねっ♪」
「…………マジすか」
「…………鬼ですね。おばさん」
「なに言ってるの、そんなの当然でしょう? こんな可愛い女の子たちのそばに、あなた達のような〝猛獣同然〟の狼2匹は、とても危険だもの」
──ご、ごもっともであります……。
そうは思うんだけど、太一達が今晩泊まるその部屋ってのがとても殺風景で。まんま従業員用……って感じがしてさぁ~っ。何だか二人が気の毒に思えてしまうよ。
そんな訳で、苦笑い見送る太一と岡部くんとはそこで別れ(太一のおばさんが部屋の場所を教えない、と言って突っぱねた)、わたしたちはエレベーターへと乗り込み八階まで上がる。
そして今日泊まる部屋に案内され、中へ入り驚いた。
「おおっ! わあおおーっ!!」
「「うっわぁ、ひろぉーいっ!!」」
「ホントごーじゃすだなぁあ~~っ!!」
そこは八畳ほどの洋間と和室まである和洋室タイプ。 何よりもここから見渡せるオーシャンビューな水平線と小さな島々がとても素敵だったので感激しまくりっ、ついでにテンション上がりまくりっ♪
「夕食は18時から20までに、あなた達が都合の良い時間でいいからレストランまでいらっしゃい。そこでこのチケットを見せたら、係りの者が席まで案内してくれます。
あと、ウェルカムドリンクなどのチケットもここにまとめて置いてありますからね。それまではここの館内をご自由に散策するなどして楽しんでって」
「「「はいっ、ありがとうございますっ!!」」」
「いえ、いえっ♪ 但しっ、太一達とはくれぐれも先程の三階から下のエリアでしか会わないようにしてね。
何かあってからでは、親御さんに申し訳ないから。それだけは絶対の約束でお願いしますよ」
「「「──はいっ!! 必ず守りますっ!」」」
わたし達の元気一杯な返事を聞いて、太一のおばさんはにこやかな笑顔を見せ手をふりふり出ていった。
そのあとわたし達は互いに顔を見合せ、おおはしゃぎまくりっ。
「やったあーっ! こんな素敵な部屋に今晩泊まれるなんてっ、ウソみたい~っ」
「ベッドは2つだから、この中の誰か二人は和室で一緒に寝る感じになるね?」
「真中、要らぬ心配をするな。当然、私はアリスお姉さまと一緒に寝るから。和室はお前が一人占めにするがよい。
遠慮はいらぬぞ?」
「いや、いや……」
弥鈴ちゃんの一言に、わたしは困り顔に苦笑う。まぁ可愛いから、イヤな感じは全くしないんだけどね?
「わあ、すげぇーっ! チケットたくさん置いてあるぞぉーっ! あのおばさん、太っ腹だなぁあ~っ」
「アリスおねぇさまっ、見てくださいっ、スイーツのチケットもこんなに沢山ありますよっ!! 食べ放題です!」
「おおっ!!! じゃあ、ここでひと休みしたら、皆で感謝しながら食べに行こうー!」
「「「おおーっ♪」」」
時刻は、まだ14時。置いてあった館内施設を眺めてみると、屋内外プールも本当にあった。窓から顔を出し下を見ると、それらしいのが見える。温泉施設も3ヶ所あって、とても広々としてるっぽい。このホテル自体が大きなテーマパークかもっ?
あは、まるで天国極楽っ、うそのよう~っ♪
それからわたし達は30分程して三階まで降り、太一達とロビー付近で手をふりふりにこやかに合流。
早速館内プールへとワイワイ愉しく向かい、買ったばかりのビキニの水着に着替え、館内・外プール施設に居る男の子たちの視線を一身に受け、釘付けにするっ。
いやまぁ……自然とそうなったのは、あくまでも、りなりが居たから……なんだけどねっ? わたし達はそれに華を添える程度。りなりはそのあと直ぐに老若男達から囲まれ困ってた。
あらら……。
その間わたし達の方はというと、元気一杯に全長百メートルを越えるウォータースライダーへと向かいプールの中へ勢いよくザブンと入り。それを何度か繰り返しやって思い切り楽しんだあと、人工波でサーフィンって、水の掛け合い追いかけ合いのわいわい。それから皆と仲良くプールサイドにある燦々なテラスでサングラスを掛けゆったりと座り、ドリンクサービスを頂き、スイーツのサービスも美味しく頂いて大満足してた。
「はあ~~っ♪ これっ、めちゃめちゃ美味しい~っ」
コレはきっと、特別サービスだと思われる特大盛りのフルーツパフェで。わたしはそれを見つめ、うっとりにへら顔で御満悦。隣にいる真中も、幸せ顔を見せてた。
もちろん1人でこんなには食べきれないので、真中と二人でこれを頂いてる。
「こういうのってさ、テレビとか漫画とかネットの向こう側だけの世界だと思っていたけど。本当にあるんだねっ、アリス!」
「うんっ、うん! 感動しちゃうよねぇ~っ♪」
「くっそぉ~っ、そっちは楽しそうでいいよなぁ~っ、モグモグ。こっちはこのチビと……モグモグっ。この微妙なサイズのを二人でなんだぞぉ~っ。
見た目と違い、よく喰うからなぁ、コイツ。そのクセなんでこんなにも細いんだぁ~っ? 不思議過ぎるよなぁ~っ、ングングっ」
「失礼なヤツだなぁっ、花藤りなりっ、モグモグっ! それもこれも普段の行いによる賜物というものだ、ングングっ!」
「だからチビ、年長者をお前とか呼び捨てにするなよなぁ~っ……モグモグ。
あっ! 今また食べるペースを上げたろぉーっ? お前は食べ過ぎだ、食べ過ぎっ」
「ふふふっ! ングング……無駄口を叩いておる暇があったら……モグモグっ。急いで食べるがよいっ。ふははっ! うちでは食事もおやつも、常に戦場なのだっ! わはは、モグモグっ♪」
「「は、ハハ……」」
わたしと真中は、それを聞いて困り顔の半眼で苦笑う。弥鈴ちゃんの父・神家基輔さんを想い出すと、不思議なほどその様子が自然と脳裏に浮かんでしまったから。
「おいおいっお前ら、そんなにも欲しいのならオレのを分けてやるよ。さすがにこんなには食べきれないからなぁ~っ」
岡部くんだ。
太一と岡部くんは、1人1つずつ大きなパフェを頂いてた。だけどさすがに食べきれないみたい。何せ規格外なボリュームだから。
「わ、いいのかぁ? じゃあ~っ、そうだな。コレを食べてまだ物足りなかったら、このチビに分けてやってくれよっ。このチビ、すげぇ~喰うからさぁ~っ」
「あ……いや、待て。待つのだ、りなりっ。どうしてそこでそれをこの私に振る?!」
「そりゃあ~、だってお前っ。私が大食漢だとは思われたくないからなぁ~っ♪ ハハっ」
「──くッ! おーのーれぇ~~っ、これ全部食べてやるぅーっ!」
「うわああーっ☆ やめろぉーっ!」
りなり達のパフェが、凄い勢いでなくなってゆく。そして、いつも細い弥鈴ちゃんのお腹が今だけぽっこりと出てた。
あらら……。
弥鈴ちゃん本人はとても満足っぽいけどね?
りなりはそれで怒る訳でもなく、ただただやれやれ顔を浮かべてる。そんなりなりに岡部くんがパフェを手に取り、ソッと差し出して言った。
「花藤、ほらよっ。まだ食べ足りてないんだろう? いいから、これを食えよっ」
「えっ、いいのかぁ? じゃあ、ちょっとだけ……」
りなりはそう言って一口だけ食べ、モグモグと美味しそうにしてる。二人は全く気づいてないようだけど、今のって間接キス……なのでは??
それからりなりと岡部くんは暫く楽しそうに、ごく自然な感じで会話ってた。
それにしても相変わらずと言いますか、あの二人がああして並ぶと、凄い絵になるよねぇ~っ…………ん?
「──ぅわあーっ!?」
わたしがそんな二人の様子を頬杖ついて見終わり、前を向くと………真中が、凄い不機嫌顔の半眼で頬を膨らませ、イライラしてたのでびっくり。
やっぱりさ……この状況を早くなんとかしないとかなぁ~っ?
はー……。
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