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はいっ! 皆様、今回は珍しくお待たせしませんでしたぁ~っ!(当社基準っ ⬅ぇ
【第三期】第4章《発動っ! メテルフォルセ》投稿開始致します。
えっ? どんな内容なのか?? すみません、タイトルそのままですっごめんなさい~っ。
因みに、アリスの貧乏ぶりは相変わらずです……(泣
「さて、どうしたものか……」
ギルド拠点でカテリナから状況を教わり、今は炎の城に集まって、みんなと相談してた。その状況というのは、天山と対天山のランカー同士が同盟を組み、一時的とはいえ新ギルドを立ち上げ更に新ギルド連盟まで組んできたというのだ。
その規模もどうやら無視出来るレベルではなかった。
「アリスさまっ、そんな悩んでたってしょうがないですよっ。こうなったら思いっきりぶつかり合うだけですって!」
ミレネさんが困り顔を見せるわたしを見つめ、そう言ってきたのだ。
「状況からいって、もうぶつかり合うのは仕方ないから良いとしてもよ。何かしら、策くらいは打っておこうや。なぁ、冬馬?」
「え? そうは言っても、決戦開始間際の今となってはやれることも限られてくるからね。だって、開戦30分前なんだよ。ザカール」
ザカールさんのそんな問いかけを聞いて、冬馬さんは困り顔に肩をすくめたあとそう返してた。それを聞いて、ザカールさんは頭を抑え、苦い顔を見せている。
「おいおい、ここでそんな頼りねぇこと言うなよ。気持ちまで萎えちまうじゃねぇか」
「ハハ♪」
「だけど、策を打つと言っても、普通に考えたらこの炎の城で迎え撃つというのが一番の手ですよね?」
「だよなぁ〜。しかし、それは相手も当然に予想してくる手だろうし。かといって、他に手はないのか……」
冬馬さんとザカールさんの話を聞いて、太一ことランズが思案顔にそう溢し言い。それに引き続いて、フェイトさんがそう溢し言ったのだ。
わたしはそれらの話を聞いて、ポツリと言った。
「だったらいっそ、打って出るとか?」
「バカを言うなよ、そんなことすりゃかなりの損害が出ちまうぜ。なぁ、冬馬?」
「……いや」
「「?」」
「案外、それもありかも知れない」
◇ ◇ ◇
「本当にこれで良かったのかなぁ? 自分であんなこと言っておきながらこう言うのもなんだけど、何だか急に心配になってきたよぉ~っ」
わたしが少し元気なくそう溢し言うと、ランズがそんなわたしを隣で見つめ、安心させるように優しく声を掛けてくれた。
「何だかもったいない気はしましたが、でも言われてみると確かに理にかなってます。だから、きっと大丈夫ですよ」
わたしはそれを聞いてほっと安心する。それから元気になり、明るい笑顔を向けた。
今は炎の城から出撃し、そこから離れた場所にある砦を陥落し、そこに10軍ほどで待機する。
と、その時。報告が入ってきた。
「偵察からの情報によると、相手は37軍だそうです」
「37軍ですか、こちらは全体で25軍だからやはりちょっと足りませんね」
「いや、ちょっと足りないなんてもんじゃあ~ないさ。なんせ相手はランカー揃いだからなぁ」
「あ、そっか……そうなるんだよね?」
ザカールさんの話を聞き、また少しだけ不安になる。だけど直ぐにそんなわたしの頭に手をポンと置き、ザカールさんはにっと笑み元気付けてくれた。
「まぁ心配することはない。個々の力では勝てなくとも、戦い方次第で何とかなるものさ。冬馬の策を信じろっ」
「は、はいっ!」
「来ましたよ」
炎の城へ、敵の軍勢が8軍ほど向かっていた。
この数なら何とかなるかも知れないけど、当然に後続部隊もこの近くに居る筈だ。だけどこの時、わたし達にはこの状況を見透かした明確な策があった。
「よしっ、予定通りに頼む」
「うん、任せといてっ!」
わたしが先導する1軍は、丘の上にあるこの小さな拠点の裏からこっそりと抜け出し、相手軍の背後に迫った。そして、大弓部隊の超長距離とわたしの貫通召還魔法アルカミックファイアアロー (同じくロングレンジ)で背後から攻撃。
相手は初め驚いてたけど、直ぐに体勢を整え、こちらへと向かって来る。
「よしっ、急ぎ撤退っ!」
わたしたち1軍は直ぐにその場から退き、急ぎ砦へと走り向かった。そして途中途中で振り向き様に牽制として貫通弾を撃ち怯ませ、立ち止まらせる。その間に何度も弓矢がわたしの頬を掠めてゆく──。
そして、後方から敵3軍ほどが追い掛けて来るのを確認した。
わたし達はそのまま砦へと逃げるように向かい、勢いよく走り抜け、相手がそれを見て砦の中へ入り込むのを確認すると同時に、相手の3倍超10軍でそれを囲んだ。
「くそっ、炎の城から離れたこんな所にこれだけの数の軍勢だとっ!? 急ぎ撤退だッ!」
「逃がすなっ、一気に倒せぇーっ!」
「「「にゃにゃん!!」」」
わたしは乱戦の中、足の爪先をその場で思いっきり蹴って踵を返し、相手の懐へと走り一気に飛び込み、召還魔法レジナストームを発動。それにより相手ランカーたちの装備品が小破。それで泣き叫び悲鳴が上がる中、それを横目に申し訳ない気持ちを感じながらも更にレジナストームを追加っ、更に追加っ、も一つおまけに追加っ、容赦なく追加に次ぐ追加に追加っ! それにより相手ランカーたちの戦意喪失。
結果、大勝利っ!
ランカーほどではない人達なんかは最後辺り裸状態にまでなってて、かなり気の毒なことになってた。予想以上の効果でびっくりだよ、このスキル実はかなりヤバいっ。
「よしっ、良い知らせが来たぞっ。向こうも上手くいったらしい、追って来た相手を壊滅させたとよ」
「「「おおーっ!」」」
わたし達の他に、実は反対側でも同じ策を同時に使ってたのだ。
「よしっ、予定通りこの砦はこれで放棄、素早く撤退だ」
「「「にゃにゃんっ!」」」
このことはギルドチャットなどで相手にも直ぐに伝わる筈。だからここにこのまま留まり居るのはリスクがある。今度はこちらが包囲され危ないのだ。なのでそうなる前にさっさと放棄する。
因みに、この時点で相手を両方合わせ、合計5軍撃破。
32:23軍、まだまだ険しいながらもかなり善戦している。しかし流石はランカー揃い、これだけの策をもってしても被害は大きい。
しかもそのあと、流石に相手は、この策にはまらなくなった。
そしてわたし達が遠目に見つめる中、炎の城を攻城し始める。だけどそこでも策を取ってて、相手を大弓と魔法使い部隊で削りながら少しずつ後退させ、最終的に囲まれる前に城を放棄脱出。
結局のところ、炎の城は奪われたが、ここでも相手に打撃を与えていた。
「さて、ここまでは予定通りに進んでいますが、問題はここからです。上手いこと相手がこの策に乗ってくれたらいいのですが……」
「乗るだろ? 相手の面子をここまでズタズタにしたんだぜぇ。プライドだけは無駄に高い奴らだからなぁ、このままにしては置かないさ」
ザカールさんの読み通り、こちらが炎の城近くの砦を落とすと、相手は炎の城から出撃し向かって来た。だけどそれは一ヶ所ではなく、数ヶ所に及んでいた。相手は愚かにもそれに合わせ軍を分け、各所に向かわせてくる。
その様子を見つめ、冬馬さんは呆れ顔に溢した。
「どうやら向こうは意地になり、冷静な判断が出来なくなってるらしいね? いやはや……」
「大方、自力では自分達がランカー揃いでオレ達よりも優っているという傲りがまだあるんだろう。そうした傲りは足をすくい、油断が命取りになるのによぉ~」
確かに同時に近くの砦などを何ヵ所も落としてはいたが、こちらはそれを直ぐに放棄して移動し、予定してた2ヶ所のみに集結。そこへまんまと向かって来た相手のみを撃退する。
4軍:12軍。
総勢では負けるが、相手がこの策にはまり、軍を分散させて来たら、途端にこちらが各箇所では相手を圧倒しちゃう。
こちらの策に気づいた相手は、こちらの動きに合わせ軍をその2ヶ所に集めて来たが、時は既に遅し、こちらはそれを見て目の前の敵を全滅させることに執着など一切せず、直ぐに全軍引いていた。
「よしっ、良い流れだ」
「残り時間まであと15分。炎の城を取り返しに行くのもありですが、このまま終わらせるのもありです。どうしますか?」
冬馬さんの予想通り、相手は炎の城へと戻り、そのまま籠った。これを追撃するのは楽なことではない。結果として炎の城はこのまま相手に渡す形となるけど、それは仕方のないことだった。大局的に見て、これは正しい判断だと思う。
「ねぇアリス、あれをここで試してみたら?」
「ん? もしかしてメテルフォルセのこと?」
失敗した際のリスクを考え、試す機会を選び、ここまで使うことなく来ていた。残り時間も僅か、試すなら今なのかも知れないけど、その為に前へ出なければならないのでそこは悩みどころ。
「ぅ~ん、試したいのは山々なんだけどさ、今回は辞めとくよぉ~っ。ここで下手やって皆に迷惑かけたくはないからねぇー」
「何のことです?」
冬馬さんがわたしとマーナの会話に入って来たのだ。
「ほら、アリスがこの前新しいスキル手に入れたでしょ? それを今日の決戦で試そうか、ってことになってたんだけど。まだ試してなかったみたいだから」
「へぇ~っ」
「そうだったのでありますが、今日はもう辞めときますっ。そんなの普段の何も無い日に試せばいいだけのことですからっ」
それに、本当にそれで発動してくれたらいいけどさぁ。ここでもし発動しなかったら、相当に恥をかくことになるもんね。何しろ周りの皆がその話を聞いて、こちらに注目してたから。
「いや、それもまた面白いじゃないですか、一度試してみてはどうです?」
「へっ?」
「残り時間も僅かです。今さら体勢は大きく変わらないでしょう。あの炎の城を奪還するのはもはや困難と言わざるを得ませんが。もしもそれを可能にするものが仮にあるのだとすれば、それはそのアリスさんのスキルなのではありませんか?」
「あ、いや、いやぁ~……一体どんな効果のスキルなのかもまだ不明なので、そんな気にはとてもとても」
わたしは照れ隠しに目の前で手を左右にふりふり頬を赤く染め苦笑いながらそう言った。
それに、それは冬馬さんの過大評価だと思う。
ところが、
「よしっ、その話乗った! オレも一緒にいくぜぇ、アリス。だってそりゃあ~っ冬馬が言う通り、なかなか面白そうじゃねぇーかぁ」
それはザカールさんだった。
「──むっ! アリスさまっ、私も当然に行きますからねっ」
今度はミレネさんだ。
そのあともフェイトさんにランズにマーナにと次々に参加表明する仲間が集まり、結局はみんな総勢で向かうことに決まった。まさかこんなことになるなんて、本当にびっくりだよっ。
だけど……本当に凄いありがたい。
それからわたしは炎の城を遠目に見つめた。