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COUNT DOWN.8 小さな約束。

その日を境に、樹梨は柚依とは一緒に行動しなくなった。

それでも、相変わらず崇宏とは登校していた。

しかし、何も喋らない。

樹梨が喋らないので、当然崇宏も話し掛けようとはしない。

だんだんと暖かくなる春の陽光とは裏腹に、2人の空気は冷たくなっていき、溝もどんどん広がっていた。


そして。

樹梨の入試本番の日がやって来た。


「じゃぁ…行って来ます」

「落ち着いて受けるのよ」

「緊張するなよ」

「うん、判ってる。ありがと」


両親に見送られ、樹梨は玄関を出た。

靴を履き、受験会場へ向かおうとした樹梨の脚が止まった。


「崇…宏…」

「久しぶり」


腕を組んで、壁に(モタ)れていたのは紛れも無く崇宏。

樹梨の脚が止まったのを確認して、崇宏は壁を離れて樹梨の前に立った。


「久し…ぶり…」

「お前、ずっと柚依避けてんだろ?」

「………………」


樹梨は俯いて応えようとはしない。

崇宏は小さく溜息を()くと、更に続けた。


「柚依が、何かしたのか?アイツ、全然心当たり無いって言ってたけど」

「別に…何も」


したよっ!!

声を張り上げて、そう言いたかった。

でも………。


「まぁ、別に良いけど。柚依もそんなに(コタ)えてないみたいだし」


崇宏はそう言うと、自分の家に戻ろうとした。


引き止めたい。

でも…それは出来ない。

もう…自分には崇宏を縛る権利なんて無いから。

崇宏は…自分のものじゃないから…。


家に入る崇宏を見ていると、ドアノブを握ったところで崇宏が樹梨の方を向いた。


「桜が咲いたら…待ってる。それと、受験頑張れ」


崇宏は短くそう告げると、さっと家に戻った。


樹梨は、暫らく崇宏の家の玄関を見つめていたが、はっと腕時計に眼をやり、歩き始めた。

自然と、足取りも心も軽くなっている。

やっぱり、自分は崇宏が好きなんだなぁ…と樹梨は実感した。


崇宏は、樹梨を見送った後、すぐに自分の部屋に戻った。

崇宏の部屋には、既に2人の人物が部屋を陣取っている。


「此処、俺の部屋なんですけどぉ」


崇宏は少し中に居る2人を睨むと、ベッドに腰を下ろした。


「いやいや、勝手知ったる何とかやーん」

「それよか、樹梨に言うたん?」


それぞれ、見ていた雑誌から眼を離し、2人は崇宏を見た。


「ん。言った」

「ほな、後は樹梨ちゃん待ちか」

「そやね」

「なぁ、柚依」

「ん?」

「本当に樹梨と何にも無かったのか?」

「無い。けど、うちはあんま他人の事気にしぃひんから、知らん間に何かしたんかもな」

「マジかよ…」

「柚依は、もうちょっと人に気ぃ遣いや?」

「慎哉と池内には、まだ(ツコ)てるよ。後、亜貴姉も」

「そんだけやろ」

「やって、うちそんぐらいしか興味ある人居らんもん」

「興味本位かよ…」

「うちが興味あるんは、その人が大事やからやで?嫌いな奴とか、どうでも()ぇもん。興味も無い」

「柚依は、そういうトコホントにクールだよな」



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