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COUNT DOWN.6 行き違い。

崇宏と慎哉の教室。


「なぁ」

「ん?」

「マジで本気で告らないつもりなのか?」

「あぁ…そう。告んない」

「それはあれ?向こうから告って来るの待ってるとか?」

「いや、別に。そういう事じゃねぇよ」

「けどなぁ…知らねぇよ?誰かに持ってかれても」

「まぁ、そうなりゃそん時だろ」

「ザッツ適当人間」

「慎哉が言うなよ。お前らも、『何となく』だろ?」

「『何となく』って言うか…気付いたら?」

「ザッツ適当人間」

「俺の決め台詞盗んなっ」

「つーか、あれ決め台詞だったの?」


崇宏と慎哉がじゃれ合い始めたので、自然と教室の視線も2人に注がれる。

この2人はクラスのムードメーカーで、いつも明るい話題を提供してくれているのだ。

クラスメイトは、そんな彼らを微笑ましく見守っていた。


――一方。

樹梨と柚依の教室。


柚依は、教室に戻ると黙って席に着いた。

柚依が戻って来た事に気付いた樹梨が、すぐさま柚依の元へやって来る。


「柚依っ。戻って来たら居ないから、心配したよぉっ」

「あー…ごめん。ちょっと頭痛くて」


見事な化けっぷり。

オスカー女優もびっくりな、柚依さん。

保健室での柚依とは打って変わったクールビューティ。


「崇宏っ」

「は?」

「崇宏はっ?居たんでしょ?保健室」

「あー…」


柚依は、さっきの保健室での場面を思い出して、思いがけず口元を綻ばせた。

そんな動作が、樹梨の心にナイフを刺す。


柚依…。

やっぱり、柚依、崇宏の事好きなんだ…。

滅多に笑わない柚依が、笑ってる…。

きっと…きっと、崇宏も柚依の事………好き、なんだ…。


樹梨は、柚依の顔が見れなくなっていた。

俯いて、自分の席に戻る樹梨を不思議に思う柚依。

けれど、元々余りヒトには執着しない性質(タチ)の柚依は、気にも留めずに途中だった本を読み始めた。

樹梨と柚依との距離は、30cmにも満たない。

樹梨と崇宏の距離は、2.5m。

今の距離は、5m。

でも…。

実際、樹梨と柚依の距離、樹梨と崇宏の距離は、驚くほど離れていた。

柚依が、崇宏が、離したんじゃない。

樹梨が、離れた。


知らない間に、離れてしまった距離。

知らない間に、行き違ってしまった想い。

これが、更に哀しい結末を引き起こす――………。


時間は飛んで、放課後。

崇宏と慎哉は、鞄を持って、すぐに教室を出た。


「柚依は?」

「迎え行くかー」

「つっても、隣なんだけど」

「ははっ確かに」


2人は、まだ終わっていない隣のクラスの前で、柚依を待った。

柚依は、廊下側の4番目。

席は窓のすぐ傍にあり、廊下の様子が見える。

2人に気付いた柚依は、担任に見つからないようにケータイを取り出して、メールを打ち始めた。


   <件名なし>

   <本文>

   樹梨に見られるとヤバいから、先保健室

   行ってて。


宛先は、池内崇宏。

メモリーが、先に崇宏を弾き出したからだ。

送信完了を確認すると、柚依はすぐにケータイをポケットに戻した。


崇宏は受け取ったメールを慎哉に見せ、2人は教室を後にした。



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