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COUNT DOWN.3 メール。

樹梨を見送った後、柚依はすぐに本を置いた。

(オモムロ)にポケットからケータイを取り出すと、慣れた手つきで何かを打ち始めた。

誰かに、メールを送っているようだ。


   <件名なし>

   <本文>

   ちょっと、話あるんだけど。授業抜けて

   いつもんトコ集合。

              柚依


誰に打っているのだろうか。

柚依は、同じメールをもう1人にも転送し、再び本に眼を通し始めた。


樹梨は、崇宏のクラス――慎哉のクラスに来ていた。


「樹梨?」


樹梨に気付いた女子生徒が、声を掛ける。


「あ、ごめん。崇宏、居る?」

「池内君?ぇっと…」


彼女は崇宏を捜そうと教室を見回した。

一通り見て、彼女が樹梨に告げようとした時――


「崇宏なら、居ないよ」

「慎哉っ!?」

「あ、山下君。なら、私はもう用無いね」


樹梨と話していた女子は、そう言って元居たグループに戻った。


「ごめんっ」


樹梨の声に応えるように、彼女は笑い返して、友達の談笑に加わった。


「慎哉?崇宏、居ないって…」

「あぁ…。何か、気分悪くなったらしくてさ。保健室行くって」

「そっかぁ…。ありがと。じゃ、保健室行ってみる」


樹梨はそう言うと、すぐに(キビス)を返した。

そんな樹梨を、慎哉は止める。


「ちょい待ち」

「えっ?」

「今は行かない方が良い。何か用とか?」

「いや…用って程じゃ…」

「じゃ、止めとけ。また今度にしなよ」

「何っ――」


樹梨が慎哉に食って掛かろうとした時、慎哉のケータイが音楽を奏でた。

教室に居る生徒も、一斉に慎哉の方を見る。


「あー…切るの忘れてた」


慎哉は教室の視線に苦笑いで応え、ケータイを開けた。

どうやら、メールらしい。

慎哉は暫らくケータイを見つめると、返事を返さずにポケットに仕舞った。


「良いの?返さなくて?」


不思議に思った樹梨は、慎哉に問い質した。


「あ?あぁ…良いよ。大した用じゃないし。てか、もう授業始まるよ?教室帰りな」

「え?嘘ぉ!?」


慎哉の言葉に、樹梨が教室の壁に掛かった時計を見た時、始業のチャイムが鳴った。


「戻るね!!」


そう言うと、樹梨は教室に駆け込んだ。

どうやら、1限目は時間に煩い数学らしい。

慎哉は慌てて帰った樹梨を微笑ましく思いながら、自分は教室には戻らずに、廊下に出た。


アイツからのメールなんか…珍しいじゃん?

これは、授業より大事っしょ。


慎哉は、教師に見つからないように“いつもの場所”へと向かった。



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