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COUNT DOWN.16 告白。

「樹梨?」

「た…ひろ…」


さっきよりは随分落ち着いたのだろう。

崇宏の呼びかけに、樹梨はすぐ反応した。


「落ち着いた?」

「ん…何とか…」

「そっか。何か飲み物()る?」

「ううん…大丈夫…」

「そ…っ。じゃぁ…少し話そうか」

「ん…」


崇宏が話す体勢に入ると、樹梨の瞳が少し揺れた。

やはり、疵付く事を恐れているのだろう。

自分が友達だと思っていた子に裏切られた。

何も話してくれなかった。

自分だけが…何も知らなかった。

樹梨の心は、本当に、深く、深く疵付いていた。


「先に、俺が話そうか」


崇宏はそう前置きして、少しずつ話し始めた。


「えっと…そうだな…」


何から話せば良いのか判らないのだろう。

崇宏は、頭を掻いて必死に言葉を探しているようだった。


樹梨は、そんな崇宏を不安そうに見つめる。

崇宏の言葉を聴くのにも、今の樹梨にはそれなりの覚悟が必要だった。


「あの…な?慎哉も柚依も…きっと樹梨が嫌いっていうのは嘘だと思う…」

「え?」


予想外の言葉に、樹梨は顔を上げた。


嘘?

嫌いっていうのが…嘘?

なら、何でそんな事…?


「や、嘘って言うか…樹梨の全部が嫌いって訳じゃない。多分、ある一部分。判る?」


一言一言、諭されるように崇宏に言われ、樹梨はただ頷くしかなかった。

樹梨が納得したのを確認して、崇宏は続ける。


「誰だってそういうのはあるだろ?俺も…樹梨の全部が好きだとは言えない」

「そっ…かぁ…」


この言葉は、樹梨にとって失恋を決定付けるものだった。

『好きだとは言えない』。

この言葉、遠回しに好きじゃない、そう言っているのと同じではないか。

樹梨は、そう思った。

…否、誤解した。


「でも、人っていうのはそれが普通で。全部を受け入れられる奴ってのは、俺らの中じゃまだ全然居ないと思う」

「うん…」

「でも、樹梨には(スゲ)ぇ良い所いっぱいあるじゃん。いつも明るくて、笑ってて…。俺、そんな樹梨好きだよ」

「うん………………………え?」


樹梨は頭の中で崇宏の言葉を巻き戻して再生した。


『良い所いっぱい…』。

違う。

『いつも明るくて、笑ってて…』。

もう少し…。

『俺、そんな樹梨好きだよ』。

ストップ!


『俺、そんな樹梨好きだよ』。


「俺は他人とは1本境界線引いてるから。あの2人もそうだと思うけど。…あ、慎哉はそうでもないか」


崇宏は更に続けた。

でも、きっと樹梨には聴こえていないだろう。

耳には入っても、言葉として頭に響いていないだろう。

樹梨の頭の中は、さっきの崇宏の言葉でいっぱいだから。


「樹梨は誰とでもすぐに打ち解けられるだろ?それは、ホント凄いと思う。けど…」


此処で、樹梨は顔を上げた。

『好きだ』とは言われても、はっきりと確信めいたものじゃない。

樹梨のそういう『部分』が好きなだけかもしれないから。

再び、樹梨を不安が襲う。


「樹梨はすぐ他人を頼る。他人っつーか…ぶっちゃけ俺なんだけど」



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