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COUNT DOWN.15 2人だけの秘密。

「なぁー」

「…何」

「謝ってくれんの?」

「はぁ…?」

「俺に。疵付いてんけどぉー」

「…………………ごめん……」


柚依は慎哉の部屋に居た。

慎哉は1人暮らし。

割と自由に出入りが出来るので、崇宏も柚依もよく来ていた。

2人の前には、2つのカップ。

仲良くテーブルの上で寄り添っている。


「うーそっ」

「はぁ?」


悪戯っぽく慎哉は笑った。

猫みたいな瞳が、笑うと無くなる。

柚依の好きな慎哉の表情の1つでもあった。


「俺はそんな繊細な奴ちゃうもーん。そんなんで疵付いたりせぇへんよ」

「慎哉は…強いやんな…」

「俺の強さは、柚依が源」

「えぇ…?」

「ホンマやて。さっきも何で俺が疵付かんかったかって言うたら、柚依を信じとるからや」

「…?」

「柚依の今の気持ち。今の想いを俺は信じとる。例え………例え、柚依が崇宏ん事好きだったとしてもや」

「ありがと…慎哉」


柚依はそう言うと、そっと慎哉の肩に頭を乗せた。

普段、柚依が慎哉に甘えるなど無いに等しい。

それだけ、柚依も普通の状態ではないという事。

痛い言葉は、言う本人にも疵を作る。

柚依も疵付いている筈だ。

少なくとも、崇宏に対して…慎哉に対して、罪悪感はある。


「今日はずっと一緒に居ったるよ…」


肩に居る柚依を胸まで引き寄せると、慎哉は柚依の耳元で呟いた。

柚依の頬が、(カス)かに上気する。

慎哉はそのままゆっくりと柚依の顔を自分の方へ向けた。

そっと、柚依の口唇にキスを落とす。


「そん代わり…柚依はずっと俺と居るんやで?」

「ふぇ?」

「絶対離したらんて事」


可愛らしい反応をした柚依に、慎哉はまた悪戯な微笑を向けた。

柚依の指に力が入った。

ぎゅっと慎哉の服を掴む。

慎哉はその柚依の指をそっと服から外して、自分の指を絡ませた。


「好き…」

「知っとる…」


甘い甘いココアのような空気が2人を包んだ。

いつもより近い2人の距離。

確かに聴こえる互いの鼓動。

ぴったりと寄り添って。

甘い甘い砂糖菓子。


「明日…」

「ん?」


柚依が不意に声を上げた。

柚依の頬に自分の頬を寄せながら、慎哉は柚依に応える。


「明日、樹梨に謝ろな…?」

「柚依がそうしたいんやったらな…」


そのまま2人は朝を迎えた。



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