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COUNT DOWN.11 優しい場所。

樹梨は耳を塞いだ。

それでも、生徒の囁き声は樹梨の頭に直接響いてくる。


「あ、池内君が笑った…」

「山下君以外の前で笑った事って、あんまり無いよね?」

「広瀬、崇宏と付き合ってんのかな?」

「悔しいけど、美男美女でお似合いだよね」

「そうだよね〜」

「広瀬と崇宏、慎哉かー。何かすっげぇ良い感じじゃん?」

「広瀬も、あぁいう表情すんだなー」


止めてっ!!!

止めて止めて止めて!!!

それ以上言わないで!!

私の耳に言葉を入れないで…っ!!!


頭が痛い…。

皆の声が、ぐるぐる廻って…。

痛いっ!!

痛いよ………っ!!

助けて…誰か…っ。

誰か、助け――………。


「えっ?おい!?坂下!?」

「樹梨?樹梨!?どうしたの!?」

「大丈夫!?」

「誰か先生!!」

「しっかりしろよ、坂下っ!!!」


樹梨の廻りに居た生徒が騒ぎ始めた。

その声は、少し離れた所に居た3人にも届いた。


「何か、あっちの方で騒いでない?」

「誰か、倒れたみたいだけど」

「え…?樹梨?」

「崇宏?」

「樹梨って…」

「今、樹梨って声がした…。樹梨ッ!!」

「池内!?」

「あー…行っちゃったよ」


崇宏は2人の声も聴かず、樹梨の元へ向かった。

2人は崇宏を見送りながら、どちらからとも無く笑いを零した。


「ほんと…崇宏は樹梨ちゃんが1番なんだな…」

「てか、あれだけ愛されてて、何で気付かないのかな」

「まぁ、恋は盲目って言うしな。樹梨ちゃんみたいなタイプは、まず自分の気持ち1番なんだろ」

「うざ…」

「うざって…。柚依、ほんと樹梨ちゃん嫌いだよな」


慎哉は苦笑しながら、柚依の背中を叩いた。


「じゃ、行くか?」

「………マジで?」

「マジで。丁度、俺らは終わっても良いみたいだし?このまま今日は解散だろ?」

「そうだけど…」

「決定。行くぞ」


慎哉はそう言うと、柚依の手を握って体育館を出た。

体育館は、まだ少し騒然としていた。


慎哉が保健室のドアを開けると、亜貴がそっと迎えてくれた。

柚依も、慎哉に続いて保健室に入る。


「池内は?」

「崇宏なら…」


亜貴はそう言いながら、カーテンを()いてある奥のベッドに眼をやった。

慎哉が、そっとカーテンを開けて中を覗く。


「樹梨、どないしたん?」

「んー…軽い貧血やね。ストレスでも溜まってたんちゃうかな」


『ストレス』という言葉を聴いて、柚依は少し動揺した。

柚依も、血の通った温かい人間。

疵付いたり、他人を心配する事もある。


「うちのせいなんかなぁ…」

「柚依のせいちゃうって」


いつの間にか、慎哉が傍に立っていた。

亜貴は、2人分のコーヒーを用意する。

心地良いお湯の音が、2人の耳を(クスグ)った。


「樹梨ちゃん、教室では普通やってんやろ?」

「うち、樹梨と一緒に居らへんかったし…」

「心配すんな。お前のせいやあらへん」

「けど…」

「柚依は、こないに優しい奴やん。全然冷たぁ無い。やから、柚依が気に病む事無いんやで?」


慎哉は柚依に優しくそう告げると、ぽんぽん、と柚依の頭を叩いた。



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