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青色の休日

作者: 鈴ノ葉



鮮やかに青い空。

強い光を放つ太陽。

緑に生い茂った木々に、セミの合唱。

そして、その合唱に負けないくらいの大きな声。



「そろそろ休憩時間とろう!」

キャプテンが声をかける。

現在正午過ぎ。

今まで炎天下で汗だくになって走り回っていた俺らは、息を切らしながら歩いてスポ

ドリとタオルを取りに行く。


夏休みに入ってから、部活で毎日朝から晩まで一日中練習している。

毎日ハードだが、俺らサッカー部は気合を入れて練習していた。

というのも、今年は県大会準優勝で終わり、高校総体――夏のインターハイにあと一歩で出れたからだ。

あの時、とても悔しくて、皆して泣いた。

だから、今は冬に行われる選手権に向けて、猛練習している。

冬で全国出場するために。


皆でスポドリを飲みつつ、和気藹々と喋っていた。

「皆ー、今日も暑いんだから、しっかり水分補給しろよ!塩分摂んのも忘れんな!」

キャプテンが皆に声をかけた。

「おう!」

と、声を揃えて返事する。

俺はスポドリを飲んだ後、額に付いた汗をタオルで拭い、水道場に向かった。

白い校舎の形に沿った道を歩いてると

「おーい!」

後ろから声をかけられた。

それを聞いて、俺は一発で声の主が誰だか分かった。

振り向いて、

「やっぱり・・・」

と呟いた。

「やっぱりってなんだよ!」

笑いながら声をかけてきたのは、友達の蒼太だった。

彼はチームのムードメーカー的存在で、尚且つうちのエースストライカーだ。

俺と去年、今年と同じクラスで、とても仲がいい。

「さっきはナイスパス!ホントお前パス上手いよなー」

「サンキュー。お前もさっきのゴール、とても良かった」

「サンキュ!ま、俺は一対一は強いしな。この後の練習もパス頼むぜ!」

「ああ」

蒼太がニカッと笑い、それにつられ、俺も笑った。

「ところでお前、水道場行こうとしてたんだろ?一緒に行こうぜ!」

「おう。ってか、なんで水道場行こうとしてたの分かった?」

「だってお前よく水道場で顔洗ってるから」

「タオルだけじゃすっきりしねーからな」

そうこうしてるうちに、水道場に着いた。

蛇口を捻り、太陽に照らされてキラキラと輝く水が出てくる。

両手で水を掬い、顔にばしゃっ!と勢いよく数回かけた。

「ふう・・・」

水を浴びてさっぱりし、その気持ち良さに思わず息を漏らす。

用意した別のタオルで顔を拭き、空を見上げた。

空は、今自分が感じているのと同じ爽やかで涼しそうな水色だった。

「あ、そういえばさ」

隣で同じく顔を洗い、ついでに水を飲んでいた蒼太が言った。

「今度の水曜日、休みだろ?」

「ああ、そうだな。」

今度の水曜日は、監督が「皆疲れてるだろうし、休みを入れよう」と言って休みにした日だった。

夏休み中の初の休みだから、部員全員喜んでいた。

「一緒に遊びに行くか?」

「いや、そうじゃなくってさ・・・」

珍しく、蒼太が少し沈んだ声で言った。

「さっきさ、委員長に会って」

「うん」

「その日、クラスで集まって学祭準備するってよ・・・」

「・・・は?」

思わずそう聞き返してしまった。

「だから、学祭の準備で貴重な休日を潰しちまうんだよ!」

「はぁ!?嘘!?」

「本当だよ!あぁ、せっかくの俺達の休みが・・・」

「・・・しょうがないよな」

ふと時計を見てみると、そろそろ休憩が終わることに気付いた。

「蒼太、そろそろ練習再開するから行こう」

「よし、行くか!」

俺らはグラウンドに向かって走って行った。



水曜日。

いつもと同じ時間帯に起きて、家を出た。

空は青く、いくつかの大小まばらなのが浮いている。

駅の改札で待ち合わせていた蒼太と合流し、学校へ向かった。

「なぁ、学祭準備って何すんだろーな」

蒼太が聞いてきた。

「多分、宣伝のポスターとか、道具とかセット作ったりするんじゃねーの?」

「俺絵描けねー!」

「俺も」

「道具なら一応作れんじゃねーかな」

「俺スズランテープを切ったりする係とかでいいや」

「あ、ずりぃ!俺もそれがいい!」

そんな会話をしながら、学校に着いた。


教室の扉を開けると、もう数人が来ていた。

「おはようございまーす!」

蒼太が大声で元気よく挨拶をし、

「おはよ」

と俺も続けて言う。

「おはよー」

「早いな」

とクラスメートも返事をする。

「俺ら何すればいーの?」

学祭実行委員に聞くと、

「そうだねー、あの板をこの紙に書いてある通りに塗り潰してくれない?」

と言い、色の塗り方が書かれた紙を渡された。

「お、簡単じゃん!」

蒼太が後ろからひょこっと顔を覗かせる。

「んじゃ、やろう!」

そう言って、シャツの袖を捲り始めた。

俺も袖を捲り、ペンキの刷毛を手に取って、紙を見つつ、その通りに塗っていった。


「えーと、ここがピンクで、ここは・・・」

と紙を見ながら独り言を言っていた蒼太が取った刷毛は―

「違うそれ緑!」

「やべ、間違えるとこだった」

「危ねぇ・・・」

こんなこともあったりしたが、きちんと塗り終えた。

いつの間にか教室内に人が増え、、賑やかになっていた。

作業が終わったのを報告し、次の仕事は――


「次はパシリかよ・・・」

そう嫌そうに蒼太が呟いた。

ジリジリと太陽が照りつける中、青に変わるまでが長い信号を待つ。

足元にはセミが一匹、ちょっと潰れかけて死んでいる。

車道でたくさんの車が俺と蒼太の前を横切っていく。

「買ってくるものは、赤い縫い糸、白い縫い糸、レースのフリルだとよ」

「何に使うんだよそれ?」

「うちのクラスは何やるんだっけ」

「そりゃ、『赤ずきん』だろ?・・・あ、それか!」

「その通り」

正確には『赤ずきん』をいろいろアレンジした(し過ぎた)ものだ。

赤ずきんが腐女子とやらだったり、猟師が外道な奴だったり、オオカミは凄い暗かったりといろいろとんでもないことになっている。

やっとのことで歩行者信号が青になり、渡れるようになる。

渡ったすぐ傍の手芸の用具を買える店で、頼まれたものを買うことができた。

ここまでで十五分以上かかり、やっと学校へ戻れると思っていた。

しかし。

二度目の赤信号が長い横断歩道を渡った後。

「ん?委員長からメールだ。しかも写真付き」

蒼太の携帯がバイブを鳴らしたので、開いて確認すると、

『悪いんだけど、この写真と同じボタン買ってきて!ごめんね!』

という文と、小さく半透明のボタンの写真。

「・・・」

「・・・」

仕方なく、足を百八十度回転させた。


教室の扉を開けると、冷房の涼しい空気が一気に俺達二人を包んだ。

「お帰りー」

「お疲れー」

「おつー」

と口々に声をかけてくれたが、

「何で皆先に昼飯食ってんだよ!」

クラスメート達の手には、それぞれの昼食があった。


俺らも昼食を食い終わり、午後の作業を始めた。

午後は、背景のセット作りの手伝いだった。

うちのクラスの美術部員に

「木の幹を赤茶色で塗っといて。影とかはこっちで塗るから」

と頼まれ、渡されたパレットを持ち、丁寧に塗り始めた。

全体の風景は大まかに塗られ、その上に美術部員が丁寧に細かく影を入れていく。

その塗られたところを見ると、さすが美術部員、と言いたくなるような綺麗でリアルなものが出来上がっている。

「俺らも頑張るか!」

「だな」

俺達も丁寧に塗った・・・つもりだったが、やっぱり何回かはみ出てしまった。

その後上手く修正してもらい、今日一日の作業が終わった。


「今日一日、お疲れ様でしたー!」

「お疲れ様でした!」

「では解散!」

学祭実行委員のかけ声で、解散した。

現在夕方五時過ぎ。

空はまだ明るいが、太陽は西に移り、オレンジに染まり始めていた。

それぞれが帰路につき始め、教室には俺と蒼太だけがいた。

「あー、今日一日疲れたなー」

「本当、俺もクタクタ・・・」

「けど、なんか楽しかったな」

「俺もそう思う。今日一日、つまんないだろうって思ってたけど、楽しかったし。」

「担任の差し入れもあったしな☆」

「お前やっぱりそれかよ。ま、俺もだけど」

ははは、とお互い笑いあう。

「じゃあ帰るか」

「おう」


最寄りの駅に着き、家が蒼太とは方向が違うから、ここで別れる。

「じゃ、また明日な!」

「ああ、明日からまた練習頑張ろう」

「じゃ!」

手を振あい、それぞれの自宅の方向へ向かう。


今日一日、遊べはしなかったが、クラスで協力して学祭準備を進められて、なかなか楽しく、充実していた。

それは、部活でサッカーしているときと同じ一体感があって。

こんな休日も、悪くないと思った。

空は深い青になり始め、星が輝いていた。



どうも、久々に現れた鈴ノ葉です。

放置しすぎました、すみません。


この話は2013年の高校の文化祭で、部活の部誌で出した作品です。

今思えば結構グダグダですね(笑)

テーマは『青春』です。


この話の『赤ずきん』(?)もいつか書きたいです。

・・あ、その前に連載小説の更新もきちんとやります、はい。

長く放置していたので、これから頑張って更新したいです!


最後に、読んでくださってありがとうございました!

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