おかしいのはどっちかって言うと私の方ね
登場人物
宮原 琴音:女子校生。本編ヒロイン。「みんなヤスが悪いんだ」
竹之内 亮:琴音のクラスメイト。「僕の頭、おかしくなってるのかな?」
ヤス:日向家で飼われている猫。「どう致しまして」
琴音のおとうさん:親バカ。「ずっと側にいるからね」
藤崎 麻里:女子高生。琴音の親友。(隠れ巨乳らしい・・・)
(これは、おばあさんに会って確かめるしかないわ)
次の日、琴音が持って行く弁当の用意をしていると、父親が起きてきた。
「琴音が男の子をうちに上げるなんて初めてだな」
「今夜は赤飯か?それとも豪華ディナーか?仮面舞踏会か?」
父親はニコニコしている。
「おとうさん、誤解しないで。あいつはそんなんじゃ無いから」
「今日、帰りにおばあさんの見舞いに行って来るよ」
父親の表情が一瞬曇る。
「そうか。琴音、悪いな」
(おとうさんにすれば、自分を捨てて失踪した妻の親だもんね。
会いに行き難いのは解るよ)
「あたしは、ずっとおとうさんの側に居るから」
それを聞いて父親は淋しく笑った。
登校の途中、琴音は竹之内の姿を見つけて走って追いついてきた。
「今、竹之内君だよね?」
竹之内は黙って目を背ける。
顔には何枚もバンソウコウが貼ってあった。
「良かった。昨日はごめんね。私、竹之内君に、いろいろ酷い事しちゃったみたいで。
身体痛く無い?」
竹之内は無言で首を振って、走って先に行ってしまった。
(あいつも混乱してるんだろうな。みんなあのヤスが悪いんだ)
校門の所では麻里が待っていた。
「竹之内君、今、凄い勢いで走って行ったけど。琴音、あなたまた何かしたの?」
「してねえよ。ちゃんと謝ったし」
「あたしの事で迷惑かけてるのは事実だからな。悪いとは思ってる」
「あらあら、意味深は発言ね。根掘り葉掘り聞きたくなったわ」
「ごめん、麻里。今は事情があって話せないんだ。今度、ゆっくり話すから」
昼休み、今日は琴音が竹之内を裏庭に呼び出していた。
「竹之内君、待った?」
「来るつもり無かったけど、気が付いたらここに来てた」
竹之内は小声でボソボソと話始めた。
「昨日から記憶が飛ぶ事があるんだ。昨日も知らないうちに宮原さんの家に居たし」
「僕の頭、おかしくなってるのかな?」
竹之内はそう言って少し震えている。
琴音は竹之内が可哀想になってきた。
「竹之内君、君は大丈夫だよ。おかしいのはどっちかって言うと私の方ね」
くしゅん
急に琴音は悪寒を感じた。
足元を見ると猫のヤスがちょこんと座っている。
「ちょうどいいや。竹之内君見て。全ての元凶はこいつなんだよ」
琴音はヤスを指差した。
よく見るとヤスは口に何やら白いものを咥えている。
琴音は嫌〜な予感がした。
(そう言えば、さっきから下の方がスースーするし、まさか・・・)
突然、ヤスは走り出した。
(ヤスの奴、いつの間にあたしのパンツを)
「竹之内君、あの猫、捕まえて!」
そう言われて、竹之内も走り出していた。
琴音はスカートが気になって、思い切り走れない。
竹之内の後ろを必死に追いかける。
倉庫の角を曲がった所で、竹之内はヤスを抱き上げ待っていた。
「ありがとう。竹之内君、お手柄」
それを聞いて竹之内はニィッと笑う。
「どう致しまして、ノーパンのお嬢さん」
そう言って竹之内はパンツを指に引っ掛けてグルグル振り回す。
「あ、あんたヤスね」
「お前が、小心者だから、ワシが背中を押してやったのじゃ」
「返しなさい!」
「返さないとただでは済まさないから」
「ほほう、まだパンツに未練が有るようじゃの。それならこうじゃ」
竹之内がパンツにフウッと息を吹きかけた瞬間、
ボオッとパンツに火が付いて一瞬で灰になった。
琴音はへなへなと座り込む。
「あたしのパンツが・・・」
結局、午後の授業を琴音はノーパンで過ごした。
帰り際、琴音は自分が所属する弓道部の先輩に呼び止められた。
「あら、宮原さん、今日もサボり?」
「ちょっと用事が有るもので、先輩すいません」
「ちょっと前の大会でいい成績だったから天狗になってるのかしら」
先輩にイヤミを言われながら琴音は学校から出た。
(これもみんなヤスのせいだ)