本物のフィンセント
シルクが、リーエムを抱え、屋敷を出ようと試みた。しかし、そこには、怪しく微笑む姿が。
床に、血が落ちた。私は、ほぼ気を失っていた。もうろうとして、目の前がよく見えない。毒が回っていた。シルクが刺された。私は、そうおもった。しかし、私とシルクとフィンセント以外の声がした。私達の後方からだった。目の前にいた、フィンセントが、「うぅ。」と、呻いて床に倒れた。床に落ちた血は、フィンセントの物だった。
「ルナ・フィンセント....。」
床に倒れたフィンセントが言った。
「私の真似をして、私の親友の息子を、私の親友の弟子を、よくも。」
後ろに立っていたのは、男の人だった。若い人だった。でも、私は、意識がもうろうとしていて、思考回路が停止。よくわからない。
「吐け。クウィンタぺッドは何所だ?」
「わ、わたくしは...。」
床に倒れた、ニセモノの、フィンセントが呻いた。
「言いません。わたくしは、言いません。」
本物のフィンセントが、ニセモノの髪を掴んで、頭を何度か床に叩き付けた。シルクは、顔を背けた。痛々しい光景だった。
「言え。あいつは、何を考え、何所に居る。」
ドン、ドン、と、重々しい音が、ホールに響き渡った。古い館の床いたが、ギシギシときしんだ。 私の、視界はどんどん暗くなって行った....。
「私は、ちょっと捕まっていてな。」
「そうなんですか。」
私は、目を覚ました。
「お。リーエム気付いたか。」
私は、シルクの隣に、師匠と同じ年くらいの男の人がいるのに気が付いた。たぶん、これが本物のルナ・フィンセントだろう。結局男の人なのかと、思った。
「こちらは、本物のフィンセントさんだぜ。」
シルクが紹介した。
「結局綺麗なねえちゃんじゃなかったな。」
小声で、シルクが言った。私も、うなづいた。
「リーエムちゃん、もう安心して良いよ。解毒はしておいたから。私は、ルナ・フィンセントだ。よろしく。君の師匠と、シルクの母親と友人だったんだ。」
私は、声を出せなかった。ただ、うなづいて聞いていた。
「しばらく寝た方が良い。何か聞きたい事があるならその後だ。今は、解毒剤の副作用で物を言えないだろうから。」
私は、聞きたい事があった。私に効いた毒は、なんなのか。偽者のフィンセントは、クウィンタぺッドの何を知っていたのか。
私は、明け方に目が覚めた。体は、だいたい機能していた。シルクが、座ったまま寝ていた。私の手を握っていたようだ。
「シルク....。ありがとう。」
私は、シルクの体を倒し、毛布をかけた。めまいがした。
「ちょっと散歩に行こうかな。」
私は、ふらつきながら、部屋を出た。私が、階段を下りて、玄関のホールへ辿り着くと、勝手にドアが開いた。
「あ。おはよう。リーエムちゃん。散歩かい?」
「ええ。フィンセントさんは?」
フィンセントは、顔をしかめて言った。
「俺の偽者の死体処理だ。」
「は、ははは...。」
苦笑した。私は、聞きたい気持ちが込み上げてきたのが分かった。いろんな、知りたいことが、山より、海より、たっくさんあった。
「あの...。」
「ん?なんだい。」
私は、一番散りたいことを聞いた。
「師匠は、あなたに、何か伝言を残しましたか。」
(`,_ゝ`)プッ