+第2章+笑うカボチャ邸
今回は、敵か、味方か、謎の人物の登場。
私達は、パンナコッタの舟乗り場に来た。シルクは、私より身長が低いのに、とても力と体力があり、丈夫だった。
「ロープはずせ。」
私は、急いでロープを放した。OKの合図を出して、私も乗り込んだ。もう、クウィンタぺッドの声も聞こえてこなかったが、相変わらず、霊的な力を感じ取っている自分の身体は、偏頭痛で私を苦しめた。
「どうしたんだ?顔が青いぞ?」
「な、なんでもないよ。」
私は、精いっぱいの笑顔を見せたのだが、それがかえって泣き顔の様に見えた。シルクは、私に船を漕ぐ様に言った。そして、何やら、鞄の中を探し始めた。
「あった。これこれ。」
私は、シルクの手元を覗き込んだ。
「なあに?それ。」
シルクの手には、古い小瓶のような物が握られていた。薄い月明かりでは、お互いの顔も見えない。岸の木々が、風に揺れる。
「実は、昨日、俺の家の前に、箱が送られて来たんだ。多分、お前の師匠からだ。」
「え!なんで早く言ってくれないのよ!!」
シルクは、小瓶を磨きながら言った。
「お前と、この箱と、一緒に送られて来た手紙に書いてある事と一緒かどうか試したんだ。」
私は、船を漕ぎながら、少しシルクを睨んだ。
「多分、今、お前の魔力を嗅ぎとってクウィンタぺッドが、追ってくる可能性と、お前が、クウィンタぺッドの霊力や魔力の力のせいで偏頭痛をおこすかもしれないって言う配慮からか...。」
シルクは、小瓶を投げてよこした。
「薬だ。量は、分かってるだろうって書いてたぞ。」
私は、またまた、心が動いた。シルクは黙って船を漕ぐのを交代した。
「. . . . . .師匠. . . . .。あ、ありがとう. . . . 。ありがとうございます. . . .!」
もうすぐで日が昇る頃だろうか?月が、山の頭の上に居た。しかし、辺はまだまだ暗く、虫の声もしなかった。
やっと、キャリバリー村に着いた。
「シルク。起きて。」
「..う. . .。」
私は、船を停めた。まだ眠たいシルクの手を引いて、村の前まで来た。
「あ。ねーちゃん、これ。」
「なに?」
シルクは、手紙を渡した。
「早く渡してよ!!」
それは、何となく予想が着いていたが、師匠からの手紙だった。
リーエムへ
多分あなたは、キャリバリー村へ行くでしょう?門番には、『笑うカボチャ邸』に用があると、
言いなさい。わかった?
そこに住んでいる、ルナ・フィンセントに真実を話しなさい。私の古くからの友人です。きっと、
きっと、分かってくれるでしょう。
ああ、今あなたが、手紙を読んでいる時は、私は多分、あなたの側にいないのよね。困ったら、シ
ルクと助け合いなさい。きっと力になってくれるわ。だって、シルクの母親と私は、大親友だった
んだもの。殺したりしない。
本当のところ、 親友を殺したクウィンタぺッドが、死んでも、憎い。
最後に、言いたい事は、いつまでも、いつまでも、リーエム。あなたを愛しています。
ルーンスプール師 より
私は、読み終えると、手紙をたたんだ。今度は、泣かなかった。師匠の意志を、また強く心に刻んだ。シルクと共に、キャリバリー村の門番のところに来た。
「誰だ。用件を言え。」
私は、門番の窓に顔を近付けた。
「マチルダ。隣の町から来ました。『笑うカボチャ邸』に、用があります。」
「よし。」
門番は、そう言うと、大きな門をあけた。私は、軽くお礼を言って、村の中へ入った。しかし、重要な事に気付いた。『笑うカボチャ邸』は、何所にあるの?
「今思ったんだけどよ. . . .。」
「私もだよ。」
シルクは、言いかけていたが、最後まで言わなくても、何が言いたいか分かった。
「どうすんだ?」
「いいから、少し歩こう。」
私は、シルクの手を引いた。道を真っすぐ行くと、噴水のある、小さな広場に来た。深夜だし、人はいるものの、酔っ払いばかりだった。
「どうすんのさぁ。」
シルクが言った。すると、遠くの方から、馬車を引く音が聞こえて来た。
「黒い馬車...。」
姿を表した馬車は、馬も、車も、何故か大きかった。そして、車に乗っている人も、大きかった。馬車は、私達の前に止まると、扉を開けた。
「シルク・ダーウィン、リーエム。笑うカボチャ邸へ。」
「あ、ありがとうございます。」
馬車に乗ると、勝手に扉が閉まった。中は、深紅のいすがあった。
「ねむてぇ。」
「がまんがまん。」
私は、シルクに言った。馬車の窓から、外の景色を見た。細い道だった。
しばらくして、『笑うカボチャ邸』に着いた。
「到着いたしました、どうぞ。」
大きな身長の召し使いは、私達が、馬車を降りるのを手伝った。この人は、人間なのかな?シルクと目配せした。カボチャ邸の周りには、畑があって、黄色いカボチャが栽培されていた。入り口の明かりは、くり抜かれた、笑顔のカボチャだった。ドアが、また勝手に開いた。
「よくいらしたねぇ。」
ルナ・フィンセントは、優しそうなおじいさんだった。
「ねーちゃん、俺、美人な姉ちゃんを期待してたぜ。」
「そ、そうね。」
確かに、びっくりした。女の人かとてっきり. . . . 。
「ここの屋敷は、広いだけで、部屋もあまっている。」
私達を、階段へと案内した。
「どうぞ。ここの部屋です。」
二階へ上がって、一番端の部屋に案内してくれた。
「あ、あの. . . . 。」
「今日は、休みなさい。魔女よけのまじないは、してあるよ。それに、シルク。お前は、ここの部屋で良いかい?」
「え、ええ。一緒でかまいません。お前は?」
「うん、私も一緒でかまわないけど。」
フィンセントは、うなづいた。
「おやすみなさい。」
「お、おやすみなさい. . . . ?」
扉が閉まった。
「なんか、休めそうにないなあ。」
「そうね。」
私は、コートをハンガーにかけると、ベッドに飛び込んだ。
「親切そうなじいさんなんだけどなあ。何かひっかかるなあ。」
「私も同じよ。でも、師匠の友人だって. . . .。」
シルクは、荷物をソファーにおいて、私のベッドに座った。
「そういえばさ、おまえ、何歳?」
「15。」
「そうか。俺は、13だ。」
私は、うつ伏せになった。
「ふーん. . . . .。」
私が、今日シルクとここ数時間一緒にいて分かった事は、年齢と、名前と、力持ちで、魔術的な勘が、ちょっとはあるって言う事が分かった。
「あのさ、もう一度、言うけど、あのじいさん、何かひっかからねぇか?」
「そうね。明日には、逃げた方が良いかも。」
「だよな!!」
シルクは、荷物を整理し始めた。
「なんか、さっきまで寝てたからさ、目が覚めちまった。見張っとくからよ、お前、寝とけ。」
「うん。わかった。ありがとう。」
「おやすみ!」
シルクは、なんとなくかわいい少年だと分かった. . . . .。
朝日で目が覚めた。扉の前に人が。ナイフを振り上げて、私の方に...。
「きゃあああ!!」
私は、本当に目が覚めた。シルクは、見張っとくと言っても、やっぱり寝ていた。暖炉の上に、時計があった。午前9時。私は、ソファーで寝ているシルクに、毛布をかけた。
「ノイローゼになっているのかしら?」
私は、頭を抱えながら、部屋を出た。すぐ隣に、洗面台があった。水を出して、顔を洗う。
「あ。タオルが無い。」
私は、濡れた顔を擦り、鏡を見た。後ろに、ナイフを持った人が!!
「きゃあああ!!!」
「リー!!」
私の声に、飛び起きた、シルクが、ナイフを持った人を倒した。
「痛い。わたくしでございますよ。」
フィンセントだった。手に、ナイフなんか持っていなかった。
「じじい、何した?」
「わたくしは、なんにも。」
私の見間違いだったのかしら?多分そうだ。
「シ、シルク。ごめんね、私の見間違いだったみたい。だから、心配しなくて良いわよ。」
「別に、心配してなんかしてないぜ。」
「それでは。下で、お食事を用意しております。」
フィンセントは、舌打ちして、この場を去った。
「お前さ、人がせっかく心配してやってるのに、なんで、何も言わないのか?」
やっぱり、心配してるんだ。(苦笑。)
「さっき、あの人が、後ろに立っていたから、びっくりしただけ。」
「本当か?今なら、信用できるのは、お前だけなんだから、信じてやるぞ?」
どうしよう。言うべきかな?
「. . . .あの. . . .あのひとが、ナイフを持っているみたいに見えて. . .。」
「はあ?なんではやくいわねぇんだ。」
「あ、あの、いやあ。ご. . . . . .ごめんなさい!!」
多分、シルクも思っただろう。
「あいつは、多分、クウィンタぺッドの手下になってるんだろうな。」
「うん。黒魔術的なものがあるね。」
なんだか、気が合う。
「今日、ここを出よう。」
「そうね。」
私達は、この会話を、天井に張り付いていた、フィンセントに聞かれていた事を、気付けなかった。
おくれてごめんなさぁい!!>w<わたわた