黒騎士
今回は、ピンチ!!!どうなる?クウィンタぺッドの使者が迫る。逃れられない!!!
風もないのに火が消えた。声が大きくなった。私にしか聞こえない声ではなくなった。シルクにも、フィンセントにも、はっきりと聞こえた。そして、ごちゃごちゃとした声の中に、はっきりと、誰かが居た。
. . .来イ、コチラヘ。リーエム。シルク・ダーウィン. . . . 。
フィンセントは、ろうそくをともした。しかし、少し揺れたかと思うと、また消えた。雷の光で、部屋が時々、はっきりと目に映った。そして、次の瞬間、ろうそくが一気についた。すると、私を押さえていた、何本もの手が、消えていた. . . 。
「大丈夫か!?」
フィンセントが駆け寄った。私には、まだ、あの声が聞こえている。火がついたからだろうか?もう、フィンセントや、シルクには聞こえなくなっていた様なのだ。
「おい、さっきの声、聞いたか?なんか変だぞ。」
「あぁ、多分、クウィンタぺッドの手下だろうよ。其処まで強い魔力じゃない。」
「わ、私には、まだ、まだ聞こえてる。」
私は、からだを支えているフィンセントに訴えかけた。確かに、声が近付いてくる。今度は、頭の中や、心の中じゃない。肉声が近付いてくるのも分かった。私には、この声が、頭の中でなるほど、肉声が、窓の外で雨音や雷鳴と共に、聞こえる。
「. . . .来る。逃げなきゃ. . . .。」
「えっ?」
フィンセントが、聞き返した瞬間だった。1階の広間で、宿泊や、食事をしていた客達の悲鳴が上がった。そして、馬が鳴いている。
「このがきめ!!」
誰かが、その、私達の頭の中に入ってくる声の主に襲い掛かる。
「うわああぁぁああぁあああぁぁぁあああ!!!!!!」
大きな声が上がり、また、悲鳴が上がる。
「きゃあ!!」
「やめて、この子だけは、この子だけ. . . 。」
小さな子供が泣叫ぶ。そして、一瞬で、鳴き声が途切れた。ゴロンと、床に、重々しい音がする。たくさんの客達が、応戦する。
「来た。」
「逃げるぞ。」
フィンセントは、私を担ぎシルクの手を引き、下の階に降りた。3階。その廊下の窓から、一気に飛び下りた。見事に積み上げられたわらがクッションになったが、わらに埋もれてしまい、脱出するのに、かなり苦労した。やっと地面におりると、馬小屋へ行った。早くどれでも良いから、馬に乗らなければ。しかし. . .。馬小屋は、とても静かで、血が飛び散っていた。見事に首筋をやられ、どの馬も、使い物にならなかった. . . 。
「くそ。馬なんて、当てにするんじゃなかった。」
フィンセントは、舌打ちした。
「シルク、少しは動けるか?動けるなら、手伝え。」
「あぁ。大丈夫だ。」
馬のいない馬車の戻ってきた。なんと、フィンセントは、何かあった時のためにと、手動のからくりを施していた。これで、なんとか動かした。フィンセントは、馬のいるべき位置に自分が乗り、車をこいだ。自転車みたいなつくりだ。
「くっそ。重たい。」
「がんばれ、おっさん。逃げなきゃ、俺達。殺されるぞ。」
シルクが、車を引っ張る。私は、頭の中の声が、追ってくるのを感じた。
. . .何処ダ。何処ニイルンダ. . . 。出テコイ. . .オ前タチハ、何処ノ部屋ニ、居ル. . . 。
早く、宿屋から離れたかった。なかなか、この車は、進まなかった。もし、あの街角を曲がる前に、宿屋の最上階、4階の位置からこちらを見たとしたら、確実に、追ってくる出あろう。
「お願い、神様....!!!」
しかし、神には、願いが届かなかった。あの厚い雲のせいだろうか。願いは、天には届かなかった。
. . . 見ツケタ。馬車。
私は、窓から、宿屋を見た。私達の泊まっていた部屋から、黒騎士が、こっちを見ている。私は、しびれた身体を奮い立たせて、外に出た。
「見つかったわ!!!逃げましょう!!」
「しかし、車は置いていけないんだ。」
フィンセントが言った。
「なんでよ!?命と、車、どっちが大事なのよ!!」
フィンセントは、馬車の裏に回って、シルクに、馬車を漕がせた。そして、馬車を押しながら、
「そりゃ、命さ。でもな、この中には、大事な物が入ってるんだ。」
「何言ってるんですか!!」
私も馬車を押した。重たい馬車だった。雨で霞んで見えない道を振り返った。敵が追い掛けてこない。すると、前方で声がした。
「お前は、シルク・ダーウィンか?」
シルクが危ない!!私とフィンセントは、馬車の前に行った。そこには、地獄の使者でもあるかのように、よごれた兜をかぶった、黒騎士が居た。もう、逃げ場がない。
「もう一度、問う。お前は、シルク・ダーウィンか?」