ウ゛ォイス
今回は、敵の少年が、間接的にリーエムを攻撃します。やっとひと休みできると思ったのもつかの間。。こんなことになるなんて。。
私達は、途中の町で泊まった。ここの街には、高い山があった。この山にある駅から、魔女の祭典の行なわれる場所まで運ばれるようだ。フィンセントは今日は一日休もうと、言った。予定より大幅に遅れた。もう、7日は経ってしまった。天候がここ数日悪天候が続くので、魔女の祭典も、数日遅らせたようだ。
「いらっしゃい旦那。」
宿の店主が気の良い挨拶をした。
「3人用の部屋だ。それと、馬車を停めるところはあるかい?」
「へい。お部屋は、一番上の階が空いてやす。馬車は、裏口のはしっこのところに停めておいてくだせい。馬は、馬小屋にお運びいたしやす。」
「ありがとう。」
フィンセントは、名簿に名前を書いた。そして、部屋の鍵を受け取ると、すぐに階段を上った。私は、名簿に書いた名前がフィンセントでは無い事に気が付いた。多分、クウィンタぺッドの存在を気にしたのだろう。
「この部屋か。」
小さな部屋だった。ちゃんとマッチがあって、暖炉に火をつける事が出来た。ベッドが4つ。テーブルが1つ。ソファーが2脚。
「やっと安心できる。」
シルクは、そう呟いた。ベッドに横になった瞬間にいびきをかき出した。相当疲れていたようだ。フィンセントが、上着をぬと靴を脱がせて毛布をかけてやった。外は、大雨が降っていた。雷鳴が鳴り響いていた。私は、雷が好きだった。静かな夜空に、龍みたいな鳴き声で鳴り響く。私は、雷が嫌いになってしまった。あの夜を忘れられない。つい数日前の事だからかもしれないが、この音が聞こえる度に、私の町か赤く燃え上がり、雷の竜巻きが、みんなを巻き込み、血を撒いたあの光景が、くっきりと、鮮明に見えるのだ。
「リーエム?リーエム?」
私は、我に帰った。フィンセントが、不思議そうな顔で見ていた。
「どうしたんだ?気分でも悪いのか?」
「...いいえ、大丈夫。気にしないで。」
私は、精一杯の笑顔を作ったのだが、強張って、泣き顔の様な顔に近い。
「何か暖かい飲み物でも買ってくる。何が良いかい?」
「あ。えっと。チョコレートドリンクがあったら。」
「高価な物を頼みたがるね。」
フィンセントは、部屋を出ていった。急に沈黙した。シルクのいびきが大きく聞こえる。私は、冷えたてを暖めるために、暖炉に近寄った。私は、目をつぶった。炎を見ると、また思い出すからだ。でも、目をつぶってもまた、いやもっともっと鮮明に光景が浮かんできた。
「あー。なんか、やだな。」
私は、気を紛らわすために歌った。
いつまでも見つめてても
この青い晴れた空は描けそうにない
世界と明日どちらが壊れてしまうと言うのなら
わたしは やり残した事が無いのか
考えてしまうでしょう
私一人で持ちきれない事ならば
あなたも一緒にいてくれるでしょう
いつまでもみおろしてても
この花の種は早くは芽生えてくれそうにない
あなたとわたしどちらかが消えてしまうと言うのなら
わたしは きっとあなたを守ろうと
自分が消えてしまうでしょう
貴方一人で居れないと言うのなら
あなたも一緒に消えてしまいましょう
いつか星くづが落ちるなら
私達で集めましょう
そして. . . . . .
私の目から涙があふれてきた。寂しい歌を歌うと、とてつもなく空しくなってきた。私は、ソファーに深く座り直した。階段を上ってくる音がする。フィンセントだろう。私は、もっと深くソファーに深くめり込んだ。メリッ. . .メリメリッ. . . .。
気が付くと、何故かソファーから手がのびていた。そして、私を掴んでいた。
「離れろ!」
ドアを開けたフィンセントが、剣を抜いて私に向けていた。いくつもの手が私を掴んでいた。
「痛...っ...。」
ソファーの布が突き破り、私を押さえ込んでいる。
「azakar,rika-na,nornno...。」
私は、なるべく魔物払いを唱えた。
「リーエム、たえろ....!!」
フィンセントがすかさずお札を書いた。そしてソファーを囲む。しかし、縄のようにつながったお札の何処からか、火がついた。
「くっそ。誰の仕業だ!!」
「大丈夫よ。私は。まだ、まじないを跳ね返せる。でも、シルクは...?」
フィンセントは後ろを振り返った。シルクは無事なようだ。
「大丈夫みたいだ。でも、何故. . . .?」
「私がお札をこっそりつけたの。それよりこれ...なんとか....。」
痛みが走った。頭の中にだ。声が、声が聞こえる. . . .。
「嫌な妖気がただよってる。リーエム、保てるか?いま、シルクのベッドが危ない!」
「え...えぇ、なんとか......。」
私は、必死に逆のまじないを唱える。シルクのベッドがきしむ。フィンセントは、すみやかに避難させた。そして、陣を書いて、私のソファーを囲んで手を離そうとするが、近付く事も困難だった。
「に...人間じゃない...どうなってるのよ。」
「くっそ。」
声がはっきりと聞こえはじめた。意識を持たなきゃ。でも.....。
「リーエム、しっかりしろ!」
フィンセントは、魔術書をひらいた。シルクが目を覚ます。彼もからだがしびれている。
「あ。あぁ....いや...。」
「しっかりしろ!意志を持つんだ!!aohqaohqpuyan.arefu.reshy.gimeru.daresu.hey...。」
私の足を押さえている手の一本が、力を弱めた。でも、声はやまなかった。呪の言葉をずっとかけ続けている音、声、人々の悲鳴が聞こえる。
「リー...エム...。待ってろ。今助ける。」
シルクが立ち上がろうとした。しかし、フィンセントが、その行動をとめた。
「やめろ。何も力にならない。」
「....うっ....そうよ。いまは、このまじないをなんとか...。」
気を失いつつ、私は、シルクに話し掛けた。
......リーエム、コチラヘ来イ......。
はっきりと呪文の中で、この言葉が聞こえた。私は、激しく抵抗した。だめだ。ここで気を失ったりしたら...!
「アレフ、レシュ、シン、タウ、WHEET OF FORTUNE...。」
私は、必死で唱える。でも、やはり、このウ゛ォイスは頭から離れなかった...。