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イケメンの友人が「オレはおもしれー女には絶対ときめかねえ」と言っていたら、おもしれー女と激突した

作者: たこす

ごめんなさい、どうしても現実世界恋愛で書きたかったのにジャンル迷子になりました。


恋愛要素1:コメディ要素9 くらいの割合となります。

あらかじめご了承ください。

「オレはおもしれー女には絶対ときめかねえ」


 学校一のイケメン池田くんが、突然そんなことを言ってきた。

 池田くんとは小・中・高とずっと一緒の腐れ縁だ。


 平々凡々な僕とは違い、池田くんは小学校の時からものすごくモテていた。


 さらっとした黒髪に端正なマスク。

 整った眉にキリッとした瞳。

 艶かしい姿は男の僕から見てもドキッとしてしまう。


 そんな池田くんは誰とも付き合ったことがない。

 中学生の頃は冗談抜きで全校生徒から告白されたんじゃないかと思えるくらい毎日ラブレターが下駄箱に入っていたものの、池田くんは気にもとめてなかった。


 絶対に成功しないと言うことで女子の間では「記念告白」「ウソ告罰ゲーム」なんてイベントが流行っていたとかいないとか。



 そんな池田くんと同じ高校に入学し、同じ通学路を歩くことになったわけだけど、高校に入ってからも池田くんのモテ伝説は続いていた。


 昨日なんて校内一の美少女と噂に名高い3年生の女子に告白されていたらしいが、今日僕と一緒に登校してる時点で池田くんがなんて返事したかは想像に難くない。



 そんな池田くんがいきなり

「オレはおもしれー女には絶対ときめかねえ」

 なんて言うもんだから、何事かと思ってしまった。


「どうしたの? 突然」

「オレはな、おもしれー女には絶対ときめかねえぞ!」

「会話に脈絡がなさすぎて怖いんですけど!?」




 聞くところによると、池田くんはふたつ下の妹から

「お兄ちゃんっておもしれー女にときめくキャラみたいだね」

 と言われたらしい。


 要するに少女マンガにありがちなモブ女主人公ヒロインを好きになる王子様キャラだと言いたかったわけだ。

 でも池田くんはそんな妹の言葉を真っ向から否定した。


「女に興味のねえオレが、なんでおもしれー女にときめくんだよ」

「その言葉がすでにときめきフラグビンビンじゃん」

「バカ言うな! このオレがおもしれー女にときめくわけねえだろ!」



 ということで、今朝のセリフが出てきたというわけだ。



北川きたがわならわかるだろ? オレ別におもしれー女に1ミリも興味ねえよ?」

「いやぁ、案外妹ちゃんの予言は合ってるかもしれないね」

「は? ねーわ! 絶対ねーわ! 仮に女にときめくにしても、相手はおもしれー女じゃねえわ!」

「っていうか、池田くんっておもしれー女の定義わかってる?」

「おもしれーからおもしれー女なんだろ?」


 それだと女芸人すべて(一部除く)がおもしれー女になってしまう。


「うーん、僕もよくわかってないけど、たぶん常識外れな女の子のことをおもしれー女って言うんだと思うよ?」

「なんだそれ。だったら余計ときめかねえよ。誓ってもいい。オレは絶対おもしれー女にはときめかねえ」


 そんな他愛もない会話を繰り広げていると、「遅刻ひこく遅刻ひこく~!」と猛ダッシュで走ってくる女の子に出くわした。

 どうやらよほど急いでるようで、食パンを口に挟みながら爆走している。



 ……いまどきいるんだ、ああいう子。



 女の子は僕らの前に飛び出ると、イケメン池田くんに思いきりぶつかった。


「ぬおっ!?」

「げふん!」


 マンガで言うなら「バッタンコ」という表現がぴったりな感じで二人は倒れ込んだ。


「だ、大丈夫?」


 どちらに手を差し伸べればいいか迷ったけど、とりあえず池田くんを抱え起こす。

 幸いケガはないようだ。

 すると池田くんは「あいたたた」とお尻をおさえながら「どこ見て走ってんだ、てめえ!」と叫んだ。


「あたたたた……」


 池田くんにぶつかった女の子は前髪パッツンのおかっぱ頭で、失礼ながらどことなく金太郎に似ている子だった。

 着ている制服は、近くの名門女学園のものだ。

 ってことは、かなりのお嬢様なのか?



 そんな彼女は池田くんを見るなり言った。


「ちょっと、危ないじゃない! どこ見て歩いてるのよ!」


 ええー……。


 予想の斜め上のセリフを吐かれて呆然となる。


 普通に前を向いて歩いてましたけど……。

 周囲に気をつけて歩いてましたけど……。

 なんなら、この子が爆走してるのを正面から見てましたけど……。


 なんて思ってると、女の子は道ばたに落ちた食パンを見つけて悲鳴をあげた。


「ああ、私の食パンが……! 大事な栄養源が……!」


 そう言って女の子は食パンを拾い上げ、フーフーしながらまた口に入れた。



 ええー…………。



 落ちた食パンをまた口に入れるなんて、若干引く。


「今日はひそいでるから許してあげるわ。ほれじゃ!」


 サッと手を上げると、女の子はまた土煙をあげて走り去って行った。

 一瞬で見えなくなるほどの速さ。

 陸上選手か何かなんだろうか。


「……な、なんだったんだろう。あの子」


 呆然とたたずむ僕に、池田くんは言った。


「さあ。でもおもしれー女だったな」



 ……不穏な空気が流れた。



     ※



 事件はその日の朝に起きた。


 学校につくなり池田くんが「マジか!」と叫んだ。


「どうしたの?」と尋ねると、池田くんは顔面蒼白になりながら鞄を指さした。


「……これ、オレのじゃねえ」

「え?」

「たぶん、朝ぶつかったあいつのだ」

「え、そんなことある!?」


 見ると確かにうちの学校の鞄ではなかった。

 よく似てるけど違う。


「マジかよ、最悪なんだけど」


 言いながら池田くんはゴソゴソと鞄の中をまさぐり始める。


「ちょ、池田くん!」

「なんだよ」

「まずいよ! あの子の鞄でしょ!?」

「だからなんだよ」

「プライバシー!」


 例え間違って持ってかれたとしても、他人の鞄を覗くのはよくない。

 でも池田くんは「オレの鞄を持ってったあいつが悪い」と言って、中に入っていた教材やらノートやらをごっそり机の上に出した。


「ふーん、あいつ坂田さかた金子かねこって言うのか。坂田金時みたいな名前だな」


 申し訳ないが、僕は「名前まで金太郎みたいだな」と思ったことは内緒にしておこう。


「お! 北川、見ろよ! あいつ聖林せいりん女学園の生徒会長補佐やってるぞ! どれだけ偉いか分からんが」

「もうやめようよ。さすがに申し訳ないよ」

「しかもオレたちと同じ高校2年だって! 大学受験ではライバルだな!」

「そりゃ同じ大学に行くならね」

「日記帳もあるぞ? なになに? 『○月×日、晴れ。今日は大好きな王子様を見かけました。やっぱりいつ見てもかっこ良くてさわやかで私の心の栄養剤。もう大好き! この想いが届けば良いのに』」


 ……うん、これは確実にヤバいやつだ。


「ね、ねえ、さすがに日記帳は良くないと思う」

「まあ待て。坂田金子ってヤツにこの鞄を返すにしても、もっとあいつのことを知っとかないと」


 池田くんは完全に面白がっていた。

 まあ、僕も興味がないと言えばウソになる。


「『○月×日、晴れ。今日も遅刻しそうになった。生徒会の仕事なんて放課後やればいいのに、なんで朝からやるんだろう、意味不明。でもそのおかげでまた王子様に会えた。超ラッキー』」


 王子様って誰だろう。

 文面からして彼女の登校中に遭遇する人物のようだけど。


「『○月×日、雨。今日の天気は私の心。あれ以来、王子様を見かけない。どこに行ったの? どうして現れてくれないの? もしかして私の知らない遠い世界に行ってしまったのかしら。ああ! だとしたら、もう二度と……。私はもう、ダメみたい』」


 重いのきたな、と思ったら池田くんはクスクスと笑い出した。


「見ろよ、北川。この女、こんな日記書いておきながら落書きしてるぞ」


 差し出された部分を見てみると、お世辞にも上手とはいえないイラストで、男と女が口を付き合わせてチューしてる絵が描いてあった。

 そして横には「キャッキャウフフ成分、補給中」と書かれている。



 ……意外と大丈夫そうだ。



「おもしれー女だな」

「よくわかんない子だね」


 

 少女マンガの「おもしれー女」とはだいぶベクトルが違うが、特異な子なのは確かだ。

 まあ、朝から食パン加えて走ってる時点で普通じゃないけど。


「『○月×日、晴れ』」

「まだ読むの!? さすがにもうよそうよ」

「まあまあ、最後だ、最後。これだけ読んだらやめるから」


 完全に面白がってる池田くんは、次の日の日記を読み始めた。


「『やった! 会えた! 数日ぶりの王子様! 今日も凜々しくてカッコイイ。キラキラと眩しくて太陽みたい。きっと彼は太陽の申し子なんだわ。彼と私が同じ時代に生まれたことに感謝します』」

「会えたんだ、よかったね」

「待て、まだ続きがあるぞ? 『でも毎回、朝にしか会えないのがツラい。彼への想いは日に日に募っていくのに。鶯東うぐいすひがし高校に転校しようかしら』」

「鶯東!?」


 鶯東高校といったら、僕らの通うこの高校だ。

 だとしたら彼女の言う「王子様」はこの高校の生徒ということになる。


「ち、ちょっと待って。この子、うちの高校の生徒に恋してんの?」

「みたいだな」

「朝しか会えないみたいだけど……」


 なんとなく。

 なんとなくだけど、池田くんのことのような気がしてきた。


 朝あんなんだったのは、もしかして照れていたとか?

 焦りすぎてテンパっていたとか?


「面白くなってきたな」

「……いや、面白くはない」


 どこに面白い要素があるんだろう。


「とにかく、これでこの坂田金子ってヤツをゆすれるな」

「ゆするなよ」

「いいや、朝のあの態度からしたら絶対オレに難癖をつけてくるはずだ。日記帳のことを話したらきっとおとなしくなるはずさ」


 逆にテンパりすぎておかしくならない?

 自分の王子様に日記の内容読まれたなんて知ったら、僕なら普通に死ねる。


「ま、いいや。今日の放課後、届けに行こう」

「授業は受けるんだ。教科書もノートも筆記用具もないのに」

「学生の本分は勉学だ。サボるわけに行くか」


 こういうところは変に真面目なんだよな。

 幸い(?)使ってる教材は一部同じのようだし。


 池田くんは教科書をパラパラとめくると「ゴフッ」とむせた。


「こ、こいつ……。見ろよ、北川」

「なに?」


 見ると、歴史の教科書の偉人のイラストに黒マジックでヒゲとホクロを付け足して「えんがちょ、えんがちょ」という謎の吹き出しをつけていた。

 思わず僕も笑いを堪える。


「……授業中、何してるん? こいつ」

「やめて、言わないで……」


 格式高い名門女学園の生徒(しかも生徒会長補佐)が授業中に落書きしてるなんて……。


「おもしれー女だな」


 不本意ながら池田くんの言葉に激しく同意した。




     ※



 放課後。


 僕らは坂田金子に鞄を返すため聖林女学園に向かった。

 鶯東高校の近所だけあって、徒歩20分で行ける距離だ。


 慣れない道を歩き続けていると、徐々に聖林女学園の制服を着た女生徒たちが増えていく。

 時間が時間だけに、帰宅する生徒も多い。


 でも普段歩かない道のため、聖林女学園の女生徒たちは池田くんの姿を見て何度も振り向いていた。

 中には「キャッ! 誰!?」と口を押さえてる子もいる。

 やっぱり池田くんは歩くだけで絵になる存在だ。



 そんな僕らは、聖林女学園の校門にたどり着くと、一人の女生徒に声をかけて坂田金子を呼んでもらうことにした。


「生徒会長補佐の坂田さんですか?」

「ああ、呼んできてくれるかな?」


 池田くんがさわやかマスクで笑顔を振りまくと、声をかけた女生徒は「はい、よろこんで!」と顔を赤らめながら校舎に走って行った。

 やっぱ池田くんはすごい。



 数分後。



 今朝会った坂田さんが息を切らしながら校門までやってきた。


「ああー! あなたたち!」

「来たか、坂田金時」

「金時って誰よ! ってか、私の鞄持ってったでしょ!」

「持ってったのはお前の方だ。オレの鞄返せ」

「あんたのせいで、今日の授業、まったく分からなかったんだからね!」

「そりゃこっちのセリフだ。ってか、教科書に落書きしてる時点で授業なんて聞いてねえだろ」

「み、見たの!? 最悪! ちょー最悪!」


 校門前で超絶イケメン池田くんと坂田さんがギャーギャー言い争ってるもんだから、周りの生徒たちが「なんだ、なんだ?」と奇異の目で見てくる。


「池田くん、おさえておさえて」

「北川、オレやっぱこいつムカつくわ」

「うんうん、そうだねー」

「おもしれー女と思ったけど、撤回する。こいつ、クソだ。クソ女だ」

「それもおもしれー女のフラグだね」


 なんとか池田くんをなだめすかしていると、坂田さんは僕を見て「ああああ!」と叫んだ。


「……え? なに?」

「お、お、お、王子様……!!!!」


 え? 誰が?


「え? 誰が?」



 思ってることとセリフが同時に出た。


「え? え? ちょっと待って、ちょっと待って、どういうこと? どうして王子様がここに? え? いや、あり得ないんですけど……」

「ど、どゆこと?」


 坂田さんに問いただすと、彼女は「ぎょえわ~!」と謎の悲鳴をあげて顔を隠した。


「お、王子様がここにいる……。ヤバい、死んじゃう……」

「坂田さん?」


 名前を呼ぶと、坂田さんはポカンと僕を見て「あふん」と倒れ込んだ。


「さ、坂田さん!?」

「……お、王子様が私の名前を呼んでくれた……もう、死んでもいい……」

「いや、死なないでくれます!?」



 結局それから数十分、僕は坂田さんに「死ぬな」「生きろ」を言い続けたのだった。

 ものの◯姫かな?


 その間、池田くんは終始「おもしれー女」を連発していた。


 ってか、助けろよ。





 その後、池田くんが坂田さんに話を聞いたところによると(僕が話しかけると精神が崩壊するらしい)どうやら坂田さんが好きなのは僕のほうだったようで、毎朝僕と会えるか楽しみにしてたんだそうだ。


 今朝は久々に生徒会の仕事があって遅刻しそうになってたため僕がわからなかったという。



「っていうか、オレもこいつと毎朝一緒に登校してるんだが? オレとぶつかった時に北川の友人だって普通気づくよな?」

「ああ! 王子様は北川くんって言うんですね? 名前まで神!」


 全国の北川くんは神に認定されました。


「ってか、オレの話、聞けよ!」

「あ、うん。王子様のとなりにウジ虫みたいのがいるなって思ったけど、興味ないから顔は見てなかった」

「ウ、ウジ虫……」

「あ、北川くんに比べたらウジ虫はランク高いか。ミジンコかも」

「北川! こいつ、マジで! マジでムカつく!」

「まあまあ、おさえておさえて」


 こんなに感情むき出しになる池田くんは初めてかも。


「あ、あの、北川大明神さま」

「な、なに?」


 大明神じゃないけど。


「差し出がましい申し出だとは思いますが、私とお友達になってくださいませんか?」

「と、友達?」

「ダメでしょうか?」

「い、いいけど……」

「本当ですか!? ああ、やっぱり北川大明神さまは広い心を持った神! ゴミ以下の私と友達になってくださるなんて……!」

「言っとくが、北川の一番の友人はオレだからな? お前なんか北川の友人一覧の最下層だからな? オレも敬えよ?」

「は? 北川大明神さま以外の人間はみんなゴミだが? 一番最下層なのは受け入れるけど、あんたを敬う理由はこれっぽっちも感じないんだが?」

「北川~、オレ、こいつ、嫌い!」

「あはは、池田くんは僕の一番の友人だよ」

「北川~」


 笑いながらも僕は思った。


 これはちょっとめんどくさい子と友達になっちゃったなあ、と。




 その後、なんやかんやで池田くんと坂田さんがいい感じでくっつき、やっぱり僕はモブとして存在するんだなぁと認識するのはそれから後の話。

お読みいただきありがとうございました。


おもしれー女に恋する友人×主人公の三角関係の話を書こうとしたら、最後まで友人がときめいてくれませんでした(汗)

おもしれー女に恋するイケメンってハードルが高いですね。


このお話を書くに当たって片っ端から少女マンガを読みあさりましたが、改めて漫画家さんの力のすごさを感じました。

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