ディアナ・ラージ公爵令嬢
彼女が言うように、髪の毛は輝くような金色であるが、申し訳ないけど彼女が神託にあるように民を愛するのかは疑わしいと皆が思っているはず。
「そこのあなた。お茶」
「はいっ、ただ今。」
空いていた席に座り、扇子を優雅に煽いでいる彼女はゆっくりとこのテーブルに座る令嬢たちを嫌な視線で眺めると、最後に私を目にして口角をあげた。
「あら、トーキンの御令嬢じゃない。いつもと感じが違うから分からなかったわ。華やかなパーティーなのに地味な色ばかり身につけていらっしゃるから私のドレスを貸してあげようかしらと思っていたの!でも今日は薄い色なのね。華やかさにはかけるわ。同じ公爵家として、御令嬢に相応しいドレスを私が貸してあげたいわね!」
「申し訳ございません。私にはこちらの方が落ち着くので。」
「そう?まあ、私のドレスがあなたの体に合わないものね。ごめんなさい。みなさんに私のドレスは大きすぎるわよね、これ肩が凝ってしかたないんですよ。全く、良いことばかりではないのが辛いわ。」
ぎゅっと腕を胸の下で組んで見せつけるように胸を持ち上げる彼女
申し訳無さそうな顔をしつつも、口元は楽しそうにあがっている。
遠回しでもなく、まっすぐに私のドレスを地味だと言った彼女の言葉に他の令嬢たちは息を潜めて私たちを見つめていた。
それに対して私が何か反論することはない。
だってその通りだから。
暗めの色に、できれば全部の肌の露出を抑えているからそれも地味に見える要因なのだろう。
華やかなドレスを好む彼女とは対極にいるのが私だ。
それでもアクセサリーで華やかになるよう気をつけているつもりだし、姿勢や仕草も気を引き締め気をつけている。
実は私がドレスであまり着飾らないのは彼女が原因でもあった。
同じ公爵家という地位で年も近い。
昔から会うことが多かった彼女は私に何かと突っかかってきた。
フリフリのドレスを着ていたら、ドレスが邪魔だと踏まれ、少し肩を出したドレスを着ていたら、下品だと笑われた。
ピンクや赤などのドレスを着れば、似合わないとしつこく言われた。
こうやって毎回毎回嫌みを言われれば、ドレスを着て着飾ることが面倒くさくなるのも当然。
そうして、彼女に目をつけられないよう、地味なドレスを作るようになり、それに嘆いたお母様がアクセサリーはもちろん、姿勢や仕草も人を美しく見せるアクセサリーになることを教えてくれた。
いわば今の私が出来上がったきっかけが彼女だったと言っても過言ではない。
「そうだ。トーキンの御令嬢?私、お祖父様から伺ったのですが、リュカ様のお部屋に侵入したんですって?」
わざとらしい驚いたような声色と表情をしながら、とんでもないことを言ってきた。
当然周りの令嬢たちはさっき以上に息を潜める。
「いいえ。何か誤解を招いているようです。私は兄に用があったのですが、偶然出会ったウィル様が兄のいる場所を知っていると案内してくださり、そこが殿下の執務室だったということです。私は入室するのを遠慮しましたが、兄やウィル様に勧められ、入ることになったのです。」
「リュカ様の執務室といえば、機密情報もあるはずだわ。それに奥には私室もあると伺ったことがあるし。あなたが入って良い場所ではないわ。国の機密情報を持ち出すつもり?」
否定しているのに聞こえないとばかりに真正面から突っかかってきた彼女に少しイラッとする。
だが、冷静に落ち着いて対処するべきだ。
「私は何も見ておりませんし、すぐに退室しました。」
「口では何とでも言えるわ。」
あぁ、面倒だ。
私は入りたくないと何度も言ったのに。お兄様のせいだ。
深いため息を吐いて、お茶を口にするが全くすっきりしない。
ちらりと見た彼女が何か企んでいるように笑っているのがまたさらに怒りを増幅させた。




