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王太子殿下の神託は参考にならない! 恋愛初心者同士の不器用な恋  作者: 葵和心


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王宮の豪勢な執務室




「リリア、疲れてるんじゃないか?眠れているか?」


「連日見回りをしているのだろう?明日は休んでゆっくりしなさい。君も明日はゆっくりしよう。」


「明日はお茶会に呼ばれていますの。…それまで良ければ付き合ってくださる?」


「もちろんだ。ラルフ、リリア。私たちはもう休むことにするよ。リリア、あまり無茶しないようにな。」


お母様の腰を支えてお父様たちは部屋へと戻って行く。

連日王宮で寝泊まりしている2人は休みの日に帰って来て、お父様はお母様と2人で仲良く過ごしてる。

お兄様は私と話したり、領地を見て回ったりしている。



「思い過ごしなら良いんだけどな。あれからは特に変わりないんだろう?」


「うん。いつもと変わらない穏やかな領地だよ。」


「帰って来る度に王宮で荒んだ心が癒されるよ。」


「うふふ。それいつも言ってる。」


何でもない話をしながら、ゆっくり食事を楽しむ。

やっぱり領地にお父様とお兄様がいると安心して、余分な肩の力が抜けていく。



お兄様は続けて休みを取ったお父様とは違い、1日だけだったみたいで、太陽が上りきる前に王宮へと出発した。


『今度はまとめて休み取ってくるから。』


見送りに出て来た私を見て心の底から嬉しそうに笑うお兄様を見ると私も嬉しい。

ぎゅっと抱きしめられると少し恥ずかしいけど、嬉しくもある。

お兄様を見送り、しばらく早朝の澄んだ空気を感じて中に入ると、屋敷内が少しざわついている。


「リリアお嬢様!ラルフ様はもう出られましたか?」


「ええ。どうかしたの?」


「ラルフ様がお荷物を忘れているのですが。」


「あらっ…。では私が届けに行きます。せっかく早く起きたのでお散歩だと思って。」


「私も行きます!すぐに馬車の手配してきます!」


私も自分の部屋に戻り、王宮にふさわしい服装へと着替える。



突然の訪問のため、少し時間はかかったものの、無事に王宮へ入る許可がおりた。

薄い青のドレスを身に纏い、後ろの高い位置で髪を縛った。

お兄様の仕事の邪魔にならないよう、華美になりすぎず、王宮にふさわしいものを。


悪くはないと思いつつ、私自身が怖がられてるせいで柔らかい色を着ていても王宮の方たちからの視線を感じてしまうのが現実だ。



「すみません。ラルフ・トーキンはおられますか?」


お兄様の仕事場である部屋から出て来た文官の方に話しかける。

だけど、手にたくさんの書類を持っているのに気づいて、失敗したと慌てる。


「あっ、申し訳ございません。お忙しいところに声をかけてしまいました。」


「全然大丈夫ですよ!ラルフは今ここにいないんですよねー。って、あ!トーキン御令嬢!お久しぶりです!」


真正面から顔を合わせると私が話しかけてしまったのが、とんでもない方だと気づく。


「ウィル様!?…っ申し訳ございません。お仕事の邪魔をしてしまいました。」


「謝らないでよ!むしろリリアちゃんと話せて嬉しいよ!あ、ラルフだよね。一緒に行こう!今、俺の仕事をラルフに手伝ってもらってるんだ。」


軽やかな口調と足は楽しそうに前を進んで行く。


「リリアちゃん、パーティーぶりだね。改めて、俺はリュカ様の側近のウィル。気軽にウィルって呼んでよ。」


「いえ、王太子殿下の側近の方をそんな気軽に呼べません。」


「え〜、良いのに。俺ラルフには世話になってるからさ、これからもリリアちゃんと会う機会多そうだし。」


だから、ね?

と、いうような視線を向けられるが、私は妹という立場

たとえお兄様とウィル様が仲が良いにしても、私には関係ない。私は適切な距離を保つべき。


そう結論づけて、「申し訳ありません。」と頭を下げるとウィル様はそれはもう不満そうに頬を膨らませた。


殿下の側近にしては、失礼ながら軽い印象を受ける。

まるで領地の子どもと話しているような、そんな無邪気さをウィル様は持ち合わせているように感じる。


いくつ何だろうか、まさか私より年下なことはないだろう。

隣でいじけたように独り言を言っているウィル様は王太子殿下の側近とは思えないほど不思議な方だった。



「ラルフー!リリアちゃんが来てるよー!」


今まで通り過ぎてきたどのドアよりも豪勢で大きなドアをなんと足で雑に押し開け、大きな声で言うウィル様


私は中には入らず、中をこっそり覗き見るとゆったりとしたソファにお兄様が座っているのが見えた。


「…リリア?」


書類を手にウィル様を見たお兄様は顔をしかめていて、何を言ってるんだというような雰囲気だ。

勝手に中に入る訳にはいかず、お兄様に気づいて欲しくてお兄様から見えるように体を横にずらす。


「リリア!?」


バサッと書類を雑に投げ出したお兄様は足早にこちらへとやって来る。


「大事な書類が…!」


「何でこんなとこにいるんだリリア。1人で来たのか?」


書類はどうでも良いかのように心配そうな顔を私に向け、肩に手を置かれる。

そのまま流れるように背中へと手が降り、自然と室内へと促される。

流れるようなエスコートだが、今はそんなものはいらないのだ。


「お兄様、私は忘れ物を届けに来ただけですので。」


「忘れ物?気づいてなかったよ、ありがとうリリア。疲れただろう?お茶でも飲んでいきなよ。」


「私は帰ります!部外者の私が簡単に入って良い場所ではないのでは?」


「大丈夫だよ。リリアは俺の妹だから大丈夫。きっと怒られないよ。」


さっきまでお兄様が座っていたソファの隣に座らされ、「待ってて。」と言うとお兄様は隣の部屋へと行ってしまった。


この部屋の内装は落ち着いた品のある家具が置かれ、壁には分厚い本がずらりと並べられている。


ここにいてはいけないと直感で感じている私は、ソファから立ち上がってドアまで戻ろうとするが、ウィル様に阻まれてしまう。


「リリアちゃん座ってよ。俺もお茶したいから。」


ね?と、さっきと同じ頼まれ方をするが、さっきは全く感じなかった圧を感じて、恐る恐るソファに戻ってしまう。


姿勢を正しながら、奥のテーブルの上に書類を並べているウィル様を覗き見る。


ウィル様が立派なテーブルに山のように書類を並べてる。

文官であるお兄様が、ウィル様のお仕事を手伝っている。

しかも、この豪勢な部屋で。



どう考えても1つの人物にしか辿り着かない。

ウィル様がドアを足で雑に開けたり、お兄様が書類を投げ捨てたり、と少し引っかかるところもあるが、この部屋は単なる執務室ではない。


ほぼ確信を待っている状態で呑気にこの部屋にいられる訳がなく、もう一度立ちあがろうとしたところで私の視界に入るドアが開いた。

お兄様が入っていったドアは私の後ろ側にある。



こうなれば、誠心誠意きちんと謝罪して、今度お詫びの品をお兄様に持たせて…。


どんな謝罪をすべきかを考えながら立ち上がると、同時に予想通りの方が部屋へとやって来た。




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