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シンボルの解読ができなければ話にならない

今回のポイント

・四大元素(火・風・水・地)は物理的なものではなく、象徴的な意味を持つ。

・エンペドクレスが4つを統合し、プラトンとアリストテレスがさらに理論化した。

・現代魔術では、四性質(熱/冷・乾/湿)やシンボル解釈と結びつけて使われる。


 魔導書、錬金術のレシピ、占いに使う様々なカード、魔女の儀式……。

 そのすべてにおいて使われるのが「シンボル」という概念です。


 例えば身近なもので言うと四大元素の「火・風・水・地」。

 多くの人はゲームなどの影響のせいで、これらが文字通りの意味であるととらえてしまっています。

 しかし、実はこれらは文字通りの意味とは全く異なります。

 これらを読み解けなければ、魔術師や錬金術師なんかにはまずなれません。


 シンボルとはいわば、彼らにとっての「言語」そのもので、いうなれば魔術師たちはシンボルという暗号的な言語を使ってレシピや奥義を残しているのです。


 私も最初のうちはこれを理解するのに時間がかかりました。

 そもそもこの発想にたどり着くまで何年かかったことか。

 当時はパソコンもスマホも持っていなかったので、手掛かりは図書館の本か教科書のコラムしかない。

 しかし今思い返してみればコラムに書いてあった錬金術のコラムは「勘違いの産物」でしたし、図書館に置いているものもかなり限定的で、それらにはすでにシンボルの魔の手が伸びている上級者向けばかりときましたらもうお手上げですよね。


 それでなんとか発見した単語を組み合わせてようやく、これらの出自が古代ギリシャの哲学に端を発することが分かったわけです。


 というわけで今回は魔術や錬金術、占いなどに使われるシンボルについてお話ししましょう。


 まずは分かりやすく、四大元素の説明から。


 四大元素とは「火・風・水・地」。

 しかしこれは、物理的なそれではありません。


 ・火:情熱や変化、破壊と創造の原理(万物流転の法則)を象徴します。

 ・風:知性や思考、変化の容易さを象徴します。

 ・水:感情、潜在意識、生命を育む母性の力を象徴します。

 ・地:安定や物質的基盤、秩序を象徴します。


 これらはもともと、古代ギリシャの哲学者たちが、この世界を形作っている根本原理(アルケー)とは何ぞや? ということを、自然の観察と論理的思考によって導き出した答えの一つでした。

 それを、後にエンペドクレスという人ががっちゃんこして、「アルケーとはこの四つの原理の複合作用である!」と唱えたんですよね。


 よくある、意見が対立したなら、すべての意見を混ぜ合わせていいとこどりをしちゃえばいいのでは? という発想に近いことをやったんでしょうね。

 二千年以上も前の話なので詳しい当時のやり取りは知りませんけど。


 で、これを後にあの古代ギリシャの哲学者と言えばで有名なプラトンが魔改造したりして、さらにアリストテレスまでもがいろいろいじくった結果、上記の性質を残したまま、もうちょっと複雑な状態になっています。


 今からそれを簡単に説明しますね。




エンペドクレス

「四つのアルケーを合体させることにしたけどどうやって説明着けようかな。

 あ、そうだ!

 愛情みたいなものによってこれらは結合して、憎悪みたいなものによって分離するという仕組みを付け加えよう!」


 →四大元素はアルケーの座から格下げされ、アルケーの構成材料(リゾーマタ)に変化した!

 →四つの元素が離散したり集合したりすることで、自然界のあらゆる現象を説明できるかもしれないぞ!


プラトン

「離散集合するってことは、それぞれの元素が独立しとるってことか?

 つまり混合比のみで説明しようって言うんか。

 それだと世界の法則が一個にまとまらんとバラバラになるってことになるで?


 わしが思うに、たぶんこいつらの背後には「イデア」っちゅう四元素をまとめるルールみたいなもんがあるんちゃうかな。

 ルールでまとめるんに都合がいいのは、やっぱ数学やろ。

 数学がイデアを作っとって、、そのイデアってルールに四元素は縛られとるんやな。

 となると四元素には物理的な形があるはずや。

 わしの計算によればおそらく──火は正四面体、風は正八面体、水は正二十面体、地は正六面体をしとるんちゃうかな」


 →四大元素論はイデアによって支配された!

 →四大元素はそれぞれ概念上の物理的な形(プラトン立体)を手に入れた!


アリストテレス

「なるほど流石プラトン師匠。四大元素はつまるところアルケーの構成材料ってところか。

 世界はこれらの幾何学的な微小単位の複合で、元素の性質はその立体の面の形や数で表せられる、と。

 でも師匠、形だけで説明するのはいささか不十分すぎないですか?

 だって、火が正四面体というだけでは、なぜ火が熱いのかを説明できないではありませんか!


 つまりですよ、師匠。

 四大元素というものは、形態(形相。エイドス)だけでなく性質(質料。ヒュレー)も考慮しなくてはならないのでは?

 きっと、性質の中庸な核みたいなものに熱いと冷たい、乾いているものと湿っているものという二対の性質が組み合わさってできているんですよ!」


 →四大元素はさらに分解され、質料ヒュレーを手に入れた!

 →四大元素は「熱・冷」「湿・乾」の組み替えにより、それぞれの元素の相転移が起こる仕組みを手に入れた!


 また、このときアリストテレスはこれら四大元素はあくまで地上の物質のみを構成するとして、それ以外のもの(時間や空間、数学など)は、第五の元素(これがかの有名なエーテル!)が支配していると設定しました。


 このようにして、四大元素説は現在われわれ魔術師が活用するような形に進化していったのです。


 というわけで、最終的にこれらがどういう性質を持つようになったのか見ていきましょう。

 四大元素は魔術でも錬金術でも、占いでも何でも使いますからね。

 知っていないと恥ずかしい基本なので、是非覚えて帰ってください!


■火


 火は熱く乾いた元素です。

 四大元素の中で最も軽く、希薄で、常に上昇しようとする力を持っています。


 焔、太陽光、稲妻などの現象はすべて火の作用です。現代魔術においては光や電気、さらにはプラズマ体全般も火の領域に含まれます。


 激しく、能動的で、交戦的です。

 熱く乾いた性質により、明るさ・軽さ・多孔性といった二次性質を持っています。

 その浸透力は空気すら貫き、冷たく凝り固まった元素を解きほぐして混ぜ合わせます。つまり、世界に遍在し広がる力を持ち、結合を断ち切り、あらゆるものを柔らかく変化させる作用を持つのです。


 上昇・成長・膨張・侵入・征服・怒り・破壊などを暗示します。


■風(空気)


 風は熱く湿った元素です。

 火よりは重いですが、水や地に比べれば軽く希薄です。

 自然な状態では上昇と拡散の傾向を持ち、全方向へと広がっていきます。


 呼吸、声、音、香りといった不可視の作用はすべてこの元素に属します。現代魔術においては気体や流体全般の力場、さらには情報や思考の伝達を担うものと解釈されます。


 柔軟で社交的、そして変化に富みます。

 熱く湿った元素であるため、軽さ・透明性・流動性という二次性質を帯びます。

 周囲に溶け込み、境界を越えて広がる力を持つため、分断されたものを媒介し、伝達と交流を可能にします。


 移動・拡散・変化・調和・知性・想像・不安定さなどを暗示します。


■水


 水は冷たく湿った元素です。

 風よりは重いですが、地よりは軽いです。

 自然な状態では下降の力を持ちながら、同時に容器に従って形を変えます。


 血液、涙、海潮、河川の流れはすべて水の作用です。現代魔術においては液体だけでなく、潜在意識・感情・集合的無意識といった精神的な流れもまた水に属すると考えられます。


 受容的で、結合的です。

 冷たく湿った元素であるため、柔軟さ・粘着性・透明性という二次性質を持っています。

 他の元素を結び合わせ、境界を溶かし、生命を育みます。だが同時に、過剰に働けば形を崩し、秩序を曖昧にする力もあります。


 下降・受容・融合・共感・夢想・母性・溶解などを暗示します。


■地


 地は冷たく乾いた元素です。

 四大元素の中で最も重く、最も密度が高いです。

 自然な状態では常に下へ沈み、安定を保とうとします。


 岩石、大地、骨格といった固体的な構造はすべてこの元素に属します。現代魔術では鉱物・金属・結晶といった凝固した物質界の基盤がその領域となります。


 堅固で、保守的、抵抗的です。

 冷たく乾いた元素であるため、暗さ・硬さ・不透過性という二次性質を帯びます。

 他の元素を固定し、形を与え、持続させる一方、柔軟性を欠くために停滞や硬直をもたらします。


 沈下・安定・持続・抑制・保護・忍耐・停滞などを暗示します。




 さて、これらが理解できるようになったのならば、魔術師になるまであと一歩です。

 まずは、あらゆるシンボルの解釈の仕方を学びましょう。


 シンボルは使われる文脈や時と場合によって、意味を変えたりします。

 そのため、上記の四大元素の暗示内容も複数種類用意されていました。


 というわけで、そんなシンボルの解釈練習に最も適したものをご紹介します。


 魔術が大好きな読者であれば、きっと聞いたことがあるはず。


 ──そう、ルーン文字というものを!


 というわけで次回はルーン文字について解説します。

 次回投稿はいつになるかわかりませんが、是非読みに来てくださいね!


 というわけで今回は切りがいいのでここまで!

 また次回会いましょう!

 

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