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鬼神と月兎  作者: 月神世一


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ep 60

第二十四章:ギルドの壁と空への挑戦

シルバリアでの休息と観光で英気を養った翌朝。一行は目的を胸に、再び冒険者ギルドの重厚な扉をくぐった。朝にもかかわらず、ギルド内は依頼を探す者、情報を求める者、仲間を募る者たちでごった返しており、その熱気は昨日と変わらない。

「よし、まずは情報収集よ!」

ダイヤが気合を入れ直し、一行は手分けして動き始めた。ユイは受付カウンターへ向かい、改めてダイチの「星詠みの勇者の印」や魔王軍の動向、そして「黒蠍団」の背後関係について尋ねてみる。しかし、受付嬢の答えは昨日と同じだった。

「申し訳ありませんが、それらの情報は高度な機密事項、あるいは高ランクの冒険者様向けのものですので…。ギルドへの多大な貢献、あるいは相応の情報料をいただければ、あるいは…」

やはり、核心に迫る情報は簡単には手に入らないようだ。ユイは少し肩を落として戻ってきた。

一方、ダイヤはギルド内の情報屋が集まりそうな一角や、酒場スペースで他の冒険者たちに探りを入れてみたが、こちらも成果は芳しくない。

「ちぇっ、どいつもこいつも、口が堅いか、吹っかけてくるかばっかり! まともな情報は全然じゃないの!」

彼女は不満げに腕を組む。大都市のギルドでは、情報は金であり、力なのだ。新参者の一行が、簡単に重要な情報を得られるほど甘くはなかった。

「仕方ないわね…」ダイヤはため息をつくと、気を取り直して言った。「こうなったら、依頼をこなしながら地道に情報を集めるしかないわ。どうせなら、報酬が良くて、何か情報に繋がりそうな依頼を探しましょ!」

一行は再び、壁一面に貼られた依頼掲示板クエストボードの前に立った。

様々な依頼が並ぶ中、ダイチが子供でもできるような手伝い系の依頼を指さしたり、ユイが薬草採取の依頼に目を留めたりするが、ダイヤの食指は動かない。彼女が求めているのは、もっと大きな報酬と、手応えのある仕事だ。

その時、比較的新しく貼り出されたと思われる、緊急討伐依頼を示す赤い印が付いた依頼書が、ダイヤの目に飛び込んできた。

【緊急討伐依頼】空の脅威『巨岩鳥ロック・グリフォン』討伐

対象:ロック・グリフォン つがい及び確認されている雛(複数)

場所:シルバリア北東山脈・通称『風切り谷』

内容:最近、同地に巣食うロック・グリフォンが凶暴化。近隣の村の家畜を襲い、街道を往来する旅人や商人への被害も多発している。巣の特定と、可能であれば元凶たるつがいの討伐を要請する。

報酬:金貨70枚(つがい討伐、及び巣の場所特定の場合)

危険度:Aランク相当(飛行能力、鋭い爪と嘴、岩をも砕く握力)

「ロック・グリフォン……! あの空の王者と呼ばれる巨大な魔鳥!?」

依頼書を読んだユイが、驚きと不安の入り混じった声を上げた。「空を自在に飛び回り、上空からの急降下攻撃は対処が非常に困難だと聞きます…! Aランク相当なんて、危険すぎますよ!」

「報酬、金貨70枚ですって!?」

しかし、ダイヤの目は危険度よりも報酬額に釘付けだった。金色の瞳がキラリと輝く。

「これはビッグチャンスじゃない! 羽や爪だって高く売れるって話よ! やるっきゃないでしょ、これは!」

彼女は既にやる気満々だ。

「空の相手か…」ダイチは少し考え込むように依頼書を見つめていたが、やがて顔を上げた。「それなら、僕とシルヴァ、ノクスで、偵察くらいならできるかもしれない! 上空から巣の場所を探したり、グリフォンの動きを探ったり…少しは役に立てるかも!」

「(シルヴァ)うん! ボクたち飛べるもんね!」「(ノクス)…危険は伴うが、ダイチが行くなら」

足元の二匹の竜も、主人の言葉に力強く(あるいは静かに)同意を示した。

鬼神 龍魔呂は、それまで黙って依頼書を見ていたが、ダイチの言葉を聞くと、ふっと口元に獰猛な笑みを浮かべた。

「……空の敵か。面白い。地上に引きずり下ろしてしまえば、ただの的だ」

彼の短い言葉が、この困難な依頼への挑戦を決定づけた。ユイはまだ心配そうだったが、ゴーレムをも一撃で葬った彼の力と、ダイヤの実力、そしてダイチと竜たちの新たな可能性を信じることにした。

「よし、決まりね!」

ダイヤは意気揚々と依頼書を剥がすと、受付カウンターへ向かった。「このロック・グリフォン討伐依頼、私たちが受けるわ!」

受付嬢は、一行がAランク相当の依頼、しかも飛行型の大型魔獣討伐を受けると聞いて、さすがに驚きを隠せない様子だった。

「Aランク相当ですが…本当に、よろしいのですね? 先日のゴーレム討伐の実績は素晴らしいですが、ロック・グリフォンはまた別格の相手ですわよ…?」

念を押す受付嬢に、ダイヤは自信満々に言い放つ。

「心配ご無用! 私たちにかかれば、空飛ぶデカい鳥なんて、晩御飯のおかずよ!」

その根拠のない(?)自信と、後ろに控える鬼神 龍魔呂の静かな迫力に、受付嬢はそれ以上何も言えず、「…承知いたしました。依頼書はこちらです。くれぐれも、ご武運を…」と依頼書を手渡した。

ギルドを出た四人(と二匹)の手には、これまでの依頼とは比較にならないほど危険で、しかし高額な報酬が約束された依頼書が握られていた。

「まさか、次は空の魔物が相手とはね…面白くなってきたじゃない!」

ダイヤが不敵な笑みを浮かべる。情報収集は難航したが、彼らは新たな、そして手強い挑戦を見つけたのだ。

鬼神 龍魔呂を先頭に、一行は空の脅威が待つというシルバリア北東山脈へと、決意を新たに歩き出すのだった。

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