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鬼神と月兎  作者: 月神世一


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57/63

ep 57

『ブレイブ勇機!鬼神龍魔呂伝』

第二十話:芽生える翼、迫り来る嵐

ルミナス姫のパイロット訓練は、ダイヤのスパルタ指導(と、ダイチの純粋な応援、ラビークAIの過保護なサポート)の甲斐あって、驚くべき速さで進んでいた。最初は基本的な操作もおぼつかなかった彼女だが、持ち前の真面目さと、「皆の役に立ちたい」という強い意志、そして意外なほどの集中力で、めきめきと上達していったのだ。

「よし、その調子! 敵のミサイルをフィールドで受け止めつつ、ビットで牽制! で、本体は回り込んで懐へ!」

シミュレーターの通信機から、ダイヤの檄が飛ぶ。画面の中では、ルミナスが操る純白の機体【ペルラ・イクイリブリアム】(パール)が、襲い来る敵機シミュレーションデータの弾幕を、優雅に、しかし的確にかわしていく。そして、展開した球形のビットが敵のセンサーを撹乱する隙に、本体が滑るように接近し、ビームサーベルでコアを貫いた。

『…やった! やりましたわ!』

シミュレーション終了の表示と共に、ルミナスは安堵と達成感で息をついた。額には汗が光っている。

「ふん、まあ、量産機のデータ相手なら、ようやく様になってきたじゃない」

ダイヤは腕を組んで頷いた。その口調は相変わらず厳しいが、目には確かな成長を認める色が浮かんでいた。

「わーい! ルミナお姉ちゃん、すごい!」

「プリンセス!素晴らしい操縦でした!」

ギャラリーで見守っていたダイチとラビークAIが、素直な賞賛の声を上げる。その声援に、ルミナスははにかんだ笑顔を見せた。

その様子を、少し離れた場所からたつまろは黙って見ていた。ルミナスの変化は、彼にとっても予想外だったのかもしれない。ただ守られるだけだった姫が、自ら戦う意志を示し、実際に力をつけ始めている。その姿に、彼は何を思うのか。かつて守れなかった弟の姿を重ねているのか、それとも…。彼はただ、コンソールに置かれた「星見の指輪」を、静かに見つめていた。指輪は、彼の複雑な感情に呼応するかのように、赤黒い光を微かに明滅させた。

一方、ダイヤもまた、訓練の合間に情報収集と分析を続けていた。帝国側の動きは、ますます不穏になってきている。

(グルーニ指揮官…それに、エースのサリアスとゼルディ…厄介な奴らが地球圏に集結しつつあるわね。それに、たつまろの過去…『Death4』…調べれば調べるほど、謎ばかりだわ。ただの悪党じゃない。でも…)

彼女は、たつまろという男の底知れなさと、彼が纏う危うさに、警戒心を解けないでいた。

そんな時、ガジェットから新たな通信が入った。いつもの陽気な声とは違う、緊迫した声色だ。

『みんな、大変だ! まずい、まずいよ! 帝国の主力艦隊が、地球の衛星軌道上に集結しつつある! この規模…間違いなく、本隊だ! しかも、複数の主力機クラスのエネルギー反応も確認できる!』

モニターに、地球を取り囲むように展開する、無数のヴァルハラ星間帝国の艦影が表示される。その数は、これまでの追跡部隊とは比較にならない。

『さらに悪いニュースだ! 彼ら、降下艇を多数発進させてる! 目標は…間違いなく、この地下施設周辺だ!』

ドォォォン!!!

ガジェットの言葉を裏付けるかのように、地下施設全体が激しい衝撃に見舞われた! 天井から土砂が降り注ぎ、照明が明滅する!

『ケイホウ! ケイホウ! 外部カラノ強力ナ攻撃ヲ探知! 地表部分ガ破壊サレテイマス!』

ラビークAIが悲鳴のようなアラートを発する。

「来たか…! しかも、今度は本気で潰しに来たようだな!」

たつまろの目が鋭く光る。

「ついに来たのね、帝国の本隊が!」ダイヤも即座に戦闘態勢に入る。「上等じゃない! こっちも準備はできてるわ!」

ルミナスは、恐怖で体が震えるのを感じた。しかし、彼女は唇を強く噛み締めると、隣にあるペルラ・イクイリブリアム(パール)のコックピットを見据えた。

(もう、守られているだけじゃない…!)

「私も…行きます!」

彼女は、決意を込めて叫んだ。

「姫様!?」ダイヤが驚く。

「待て、まだお前には早い!」たつまろが制止しようとする。

だが、ルミナスの意志は固かった。

「いいえ、行かせてください! 少しでも、皆さんの盾になれるなら…! パールと一緒なら、きっと!」

『プリンセス…!』ラビークAIの声も、心配と、そして僅かな誇りが混じっているように聞こえた。

たつまろは、ルミナスの強い瞳をしばらく見つめた後、短く言った。

「…好きにしろ。ただし、死ぬなよ」

「はい!」

地下施設の巨大なハッチが、轟音と共に開かれる。外には、既に降下してきた帝国軍のロボット――狼、カラス、トカゲ、ワニ、ハイエナ、コブラ、フクロウ、トンビ、サメ…あらゆる量産機、そしてその中には主力機の姿も見える――が、包囲網を形成しつつあった。

白い兎、ラビーク。

深紅の宝石、ルビー・バスター。(あるいはダイヤが別の機体を選択するかもしれない)

そして、純白の真珠、ペルラ・イクイリブリアム。

ルミナーミの希望と、地球の運命を賭けた、本格的な戦いの火蓋が、今、切られようとしていた。

第二十話 了

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