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鬼神と月兎  作者: 月神世一


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56/63

ep 56

『ブレイブ勇機!鬼神龍魔呂伝』

第十九話:真珠の輝き、姫の覚悟

「私のコレクションの中に、とびっきりの**『真珠パール』**が、あるんだけど?」

ダイヤの口から放たれた言葉に、ルミナスは息を呑んだ。真珠…それは、彼女の故郷ルミナーミでも、美しさと希少性から特別な宝石として扱われていた。しかし、今、この状況で語られる「真珠」が、単なる宝石でないことは明らかだった。

「パール…? それは…もしかして、ロボットなのですか?」

ルミナスの声が、期待と不安でわずかに震える。

「まあね」ダイヤは肩をすくめた。「陸のルビー、海のサファイア、空のエメラルド…それぞれ尖った性能を持つあたしの主力機とは別に、もう一機だけ、とっておきがあるのよ。どんな状況でもある程度は戦える、バランスの取れた汎用機。それが【ペルラ・イクイリブリアム】…あたしは『パール』って呼んでるけどね」

「パール…」ルミナスはその名を繰り返す。「私にも…扱えるでしょうか…?」

自分の無力さを痛感していた彼女にとって、それは暗闇の中に差し込んだ一筋の光のように思えた。自分も戦えるかもしれない。皆の役に立てるかもしれない。その可能性に、彼女の心は強く惹きつけられていた。

「さあ? どうかしらね」ダイヤは意地悪く笑う。「あれはあれで、結構デリケートなんだから。それに、あんたみたいな深窓の令嬢に、戦場の厳しさが耐えられるとは思えないけど?」

挑発的な言葉。しかし、今のルミナスには、それが逆に火をつけた。

「…試させてください!」

彼女は、ダイヤの目を真っ直ぐに見据え、きっぱりと言った。

「私はもう、ただ守られているだけのお姫様ではいたくありません! たとえ足手まといだとしても、自分の力で運命に抗いたいんです! お願いします、ダイヤさん!」

その真剣な眼差しに、ダイヤも少しだけ表情を変えた。

「…ふーん。言うじゃない、姫様のくせに」

彼女は腕を組み、少し考える素振りを見せた後、ニヤリと笑った。

「まあ、いいわ。そこまで言うなら、チャンスくらいはあげてもいいけど…ただし、条件があるわよ?」

「条件…?」

「第一! 私の指示には絶対に従うこと! 文句は言わせないわ!」

「第二! 機体を壊したら…まあ、あんたのバイト代じゃ一生かかっても弁償できないだろうから、代わりに私の雑用係ね!」

「そして第三!」ダイヤは、近くで成り行きを見守っていたダイチの方をチラリと見て、「…ダイチくんのおやつ係と、遊び相手は、今後一切、私に譲ること!」

「ええっ!?」最後の条件に、ルミナスは思わず声を上げた。

「それが飲めないなら、この話はナシよ?」

ダイヤは意地悪く笑う。ルミナスは一瞬、悔しさに唇を噛んだが、すぐに覚悟を決めた顔で頷いた。

「…わかりました。その条件、お受けします」

(ダイチくんのおやつ係は譲れませんが、遊び相手くらいなら…!)内心でそう付け加えながら。

「よし、交渉成立ね!」

ダイヤは満足げに頷くと、ルミナスを手招きした。

「じゃあ、早速私の“宝箱”にご案内するわ。ついてきなさい」

ダイヤに案内され、ルミナスは(たつまろに一応の断りを入れ、ダイチとラビークAIに見送られながら)ジュエル・キャリバンの内部へと足を踏み入れた。そして、船内の最深部にある格納庫で、彼女はついにその機体と対面した。

そこに静かに佇んでいたのは、真珠のような滑らかな光沢を放つ、純白の人型ロボットだった。過度な装飾はなく、洗練された曲線で構成されたフォルムは、戦闘用でありながら、どこか神聖な美しさを感じさせる。

「これが…パール…【ペルラ・イクイリブリアム】…」

ルミナスは、その姿に息を呑んだ。ラビークとも、帝国のロボットとも違う、不思議なオーラを放っている。

「こいつはね、他の3機みたいに派手な火力や特殊能力はないけど、基本性能がめちゃくちゃ高いのよ。防御力、機動力、センサー能力…全てが高次元でバランスされてる。そして、何より…」

ダイヤは機体にそっと触れた。

「…乗り手を選ぶのよ。まあ、あんたに扱えるかは、これからのお手並み拝見だけどね!」

その日から、ルミナスの過酷な(そしてダイヤにとっては少し楽しい?)パイロット訓練が始まった。ジュエル・キャリバン内に設置された高精度シミュレーターで、まずは基本的な操縦から叩き込まれる。

「違う! そこは右じゃなくて左! 何度言ったら分かるのよ!」

「まあ! そんな大声を出さなくても!」

「お姫様みたいにフラフラしない! もっと腰を入れて!」

「腰…って、こうですの!?」

ダイヤのスパルタ指導に、ルミナスは何度もくじけそうになった。運動神経も、メカへの知識も、彼女にはほとんどないのだ。しかし、「戦いたい」「役に立ちたい」という強い想いが、彼女を突き動かした。失敗しても、怒られても、彼女は必死に食らいつき、操縦桿を握り続けた。

「ルミナお姉ちゃん、がんばれー!」

時折、ダイチが訓練室を覗きに来て、純粋な声援を送る。それが、何よりの力になった。

ラビークAIも、『プリンセス、ご無理なさらないでください…データ上、休憩が必要です』と心配そうに声をかける。たつまろは相変わらず無関心な様子を装っていたが、訓練データには目を通しているようだった。

そして、数日が過ぎた頃。

「…ふん、まあ、根性だけはあるじゃない」

シミュレーターの中で、ぎこちないながらも、以前よりは格段にスムーズに機体を動かせるようになったルミナスの姿を見て、ダイヤは少しだけ口元を緩めた。

まだまだパイロットと呼ぶには程遠い。しかし、ルミナスの中には、確かに「戦う力」の種が芽生え始めていた。それは、彼女自身の未来を、そしてこの星の運命をも変えるかもしれない、小さな、しかし確かな一歩だった。

第十九話 了

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