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鬼神と月兎  作者: 月神世一


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26/63

ep 26

『鬼神と月兎』 第十章:シルバリアの朝 より

活気あふれるシルバリアの冒険者ギルドに足を踏み入れた一行。朝にもかかわらず、屈強な戦士や身軽な斥候、ローブを纏った魔術師など、様々な冒険者たちでごった返していた。依頼を求める声、武具のぶつかる音、酒場で交わされる威勢の良い話し声が混ざり合い、独特の熱気を生み出している。

「わぁ…ロックウッド村のギルドとは全然違うね…」

ダイチは目を丸くして周囲を見渡している。ユイもその規模と人の多さに少し気圧されているようだ。

「さて、まずは情報収集ね」

ダイヤは気合を入れ直し、てきぱきと指示を出す。「ユイちゃん、あなたは受付でダイチの印のこととか、魔王軍について何か聞けないか試してみて。私とボウヤは、掲示板と…そうね、そこの酒場で飲んでる連中から何か聞き出せないかやってみるわ。ミスター鬼神は…まあ、適当にその辺で待ってて」

鬼神 龍魔呂は特に反論もせず、ギルドの壁際に寄りかかり、周囲の様子を窺い始めた。

ユイは意を決して受付カウンターへ向かい、愛想の良い受付嬢に尋ねてみた。

「あの、すみません。『星詠みの勇者の印』についてや、魔王軍の最近の動向について、何か情報はありませんでしょうか?」

しかし、受付嬢は困ったように首を振った。

「申し訳ありません。そのような重要な情報は、ギルド内でも機密扱いとなっておりまして…。閲覧するには相応の実績ランクか、高額な情報料が必要となりますの」

やはり、簡単にはいかないようだ。

一方、ダイヤはダイチを連れて酒場スペースへ行き、テーブルで飲んでいた古参らしき冒険者グループに声をかけてみた。

「ちょっといいかしら? 最近この辺りで、何か変わった噂とか聞いてない?」

しかし、冒険者たちは新顔のダイヤを一瞥すると、「知らねえな。他所で聞きな、嬢ちゃん」「子供はギルドで遊ぶんじゃねえよ」と、すげなくあしらうだけだった。大都市のギルドは、新参者には厳しい洗礼もあるようだ。

「ちぇっ、どいつもこいつも…!」

ダイヤは悪態をつきながら、ダイチと共に依頼掲示板クエストボードの方へ戻ってきた。ユイも肩を落として合流する。

「やっぱり、情報は簡単には手に入りませんね…」

「みたいね。こうなったら、依頼をこなしながら地道に探すしかなさそうよ」

三人は改めて掲示板に貼られた無数の依頼書に目を通し始めた。ダイチは「困っているおばあさんの荷物運び」や「迷子の猫探し」といった依頼に「これなら僕にも手伝えるかも!」と興味を示すが、報酬は雀の涙ほどだ。

「これじゃあ、武器のメンテ代にもなりゃしないわ…」

ダイヤは溜息をつき、もっと高額な依頼を探す。しかし、「ワイバーンの巣の調査(危険度A)」や「呪われた遺跡の探索(ランクB以上推奨)」など、今の彼ら(特にダイチがいる状況)にはリスクが高すぎるものばかりだった。

「うーん、なかなか手頃で、ダイチ様の希望にも沿えて、なおかつ報酬も良い依頼ってのは…」

ユイが悩んでいた、その時。ダイヤがある一枚の依頼書に目を留めた。それは比較的新しい依頼書のようで、「緊急」の文字が躍っている。

【緊急討伐依頼】嘆きの森の主『森喰らいの巨像フォレスト・ゴーレム』討伐

対象:フォレスト・ゴーレム一体

場所:シルバリア北西・嘆きの森深部

内容:ゴーレムが突如活性化し、森の木々を無差別に破壊、近隣の木こりの村にも被害が出始めている。早急な討伐を要請する。

報酬:金貨50枚

危険度:B+(ただし、ゴーレムの防御力は極めて高く、物理攻撃はほぼ無効。弱点属性での攻撃推奨)

「……これよ!」

ダイヤの目が輝いた。

「フォレスト・ゴーレム討伐! 報酬は金貨50枚! しかも、森や村を守るんだから、人助けにもなるじゃない!」

「フォレスト・ゴーレム…! あの、岩と古木でできた巨大なゴーレムですか!?」

ユイはその名を聞いて息を呑んだ。「並大抵の攻撃は全く通じないと聞きますし、再生能力も高いとか…危険すぎます!」

「でも! 森や村の人たちが困ってるなら、助けたいよ!」

ダイチが依頼書を見上げ、拳を握りしめた。

「…悪くない」

いつの間にか隣に来ていた鬼神 龍魔呂が、依頼書を一瞥して呟いた。

「先日のはただの猪だったが、ゴーレム相手なら、少しは楽しめるかもしれんな。それに、その『嘆きの森』とやらに、何か別の情報が転がっている可能性もある」

彼のその言葉は、決定を意味していた。ユイはまだ不安そうだったが、鬼神 龍魔呂の圧倒的な力(アースクェイカーを一撃で葬った力)を思えば、不可能ではないのかもしれない、と思い始めていた。

「よし、決まりね!」

ダイヤは意気揚々と依頼書を剥がすと、受付カウンターへ向かった。

「このフォレスト・ゴーレム討伐依頼、私たちが受けるわ!」

受付嬢は、子供連れの(ように見える)パーティーがB+ランクの大型モンスター討伐依頼を受けると聞いて一瞬目を丸くしたが、鬼神 龍魔呂の只者ではない雰囲気と、自信に満ち溢れたダイヤの様子を見て、「…承知いたしました。依頼書はこちらになります。対象は物理防御が極めて高いと報告されています。くれぐれも、ご無理はなさらないでください…」と、少し心配そうにしながらも依頼書を手渡した。

ギルドを出た四人の手には、初めてとなる「公式な」依頼書が握られていた。

「よし! まずは情報収集より先に、一仕事ってわけね! 腕が鳴るわ!」

ダイヤが景気づけに拳を突き上げる。

鬼神 龍魔呂を先頭に、一行は新たな目標――大型モンスター「フォレスト・ゴーレム」が待つという「嘆きの森」へと、力強く歩き出すのだった。

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