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鬼神と月兎  作者: 月神世一


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18/63

ep 18

『鬼神と月兎』 第七章より

鬼神 龍魔呂とダイヤの激しい手合わせが終わると、村の外れの広場にはしばしの静寂と、わずかな緊張の余韻が残っていた。ダイチは興奮冷めやらぬ様子で、「たつまろさんもダイヤさんも、すっごく強かった!」と目を輝かせている。ユイも「お二人とも、お怪我がなくて本当に良かったです…」と安堵の息をつきながら、その高レベルな攻防に感嘆していた。

「ふん、まあまあね。あなたも思ったよりはやるじゃない」

ダイヤはレイピアを鞘に納めながら、汗を軽く拭って鬼神 龍魔呂に言った。その表情には満足感が浮かんでいる。

「そちらこそな」

鬼神 龍魔呂も、指輪の感触を確かめるように左手を開閉させながら、短く応じた。互いの実力を認め合ったことで、二人の間には以前よりも確かな信頼感が生まれたようだった。

「さて、お遊びはここまでよ!」

ダイヤはパンッと手を叩き、現実的な話題に戻した。

「いつまでもこんな所にいられないわ。で、これからどうするの? 次の目的地は決まってるわけ?」

その言葉に、ユイが持っていた古い羊皮紙の地図(村長から借り受けたものだ)を広げた。

「村長さんにお話を伺ったのですが、この街道を東へ丸一日ほど進むと、『シルバリア』という比較的大きな街があるそうです。商業も盛んで、冒険者ギルドの支部も大きいとか。そこなら、ダイチ様の『勇者の印』や、魔王軍に関する情報も集めやすいかもしれません」

「シルバリアね…」ダイヤは地図を覗き込み、顎に手を当てた。「あそこなら高ランクの依頼も多いって聞くわね。悪くない選択じゃない? 報酬も期待できそうだし」彼女の目が、少しだけギラリと光る。武器のメンテ代と新しい装備のことを考えているのだろう。

鬼神 龍魔呂も地図を一瞥すると、「…良かろう。そこへ向かう」と簡潔に決定を下した。異論はなさそうだ。

「大きな街! 僕、初めて行くよ! どんな所なんだろう?」

ダイチは、少しの不安と大きな好奇心をないまぜにしたような表情で、期待に胸を膨らませている。

方針が決まり、一行は宿に戻ってすぐに出発の準備を始めた。ダイヤは魔法収納袋の中身を念入りにチェックし、「あー、やっぱりオイルが足りないわ…シルバリアで真っ先に買わないと」などと小さくぼやいている。ユイは旅の途中で必要になりそうな薬草や保存食を丁寧にまとめ、ダイチの小さな背嚢にも分けて入れてやった。鬼神 龍魔呂は特に荷物を持つ様子はないが、常に周囲への警戒を怠らず、出発の準備が整うのを待っていた。ダイチは、昨日からすっかり懐いたリスを肩に乗せ、準備万端といった様子だ。

やがて準備を終え、四人が村の門へと向かうと、そこには村長をはじめとする村人たちが、見送りのために集まっていた。

「鬼神様、ダイヤ様、ユイ様、そして勇者様! この度は本当にありがとうございました!」

「皆様、どうか道中お気をつけて…!」

「このロックウッド村は、皆様のご恩を決して忘れませんぞ!」

「勇者様、またいつか、立派になられたお姿を見せに来てください!」

村人たちは口々に感謝と別れの言葉を述べ、深々と頭を下げた。

ダイチは、少し照れくさそうにしながらも、覚えたての勇者のように(?)胸を張って、村人たちにしっかりと手を振って応えた。「うん、みんなも元気でね!」

ユイは「皆様もお元気で。村の復興、心からお祈りしています」と丁寧に頭を下げた。

「ま、達者で暮らしなさいよ!」ダイヤは片手を上げて、彼女らしくあっさりと別れを告げる。

鬼神 龍魔呂は、そんな仲間たちと村人たちのやり取りを黙って見ていたが、やがて無言のまま、先頭に立って門の外へと歩き出した。その背中を追って、三人も続く。

四人は、村人たちの温かい声援を背に受け、新たな目的地「シルバリア」へと続く街道へと、確かな足取りで踏み出した。ユイは歩きながら、これから始まるであろう困難な旅の安全と、大切な仲間たちの無事を、心の中でそっと、空に浮かぶ(であろう)月に祈るのだった。

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