表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

005:私以上に仲良くなるとイラっとする

「…………」

「落ち着いたらここも整備しようか」


 可能ならもう少し綺麗な土地を手に入れたかったが、仕方ないと諦める満桜。


ドローンが普及したといえど、そこに人が訪れなければ手入れはできない。人類の生活圏さえ維持出来れば、不必要なものは極力省くようになっていた。


 故に、土地はあり余っているのだ。


「……よし! これで配置は完了。あとは稼働するだけで部品が流れる予定だが……」

「どうやら上手く動かせるみたいだな。これで部品生産は可能になった」

「設計図は用意してあるが……いざ改めて思うと行けるのか不安になるな」

「そのために三由季がいるんだろう? 駄目なら頼めばいい」

「あいつに調子を乗らせると酷い目に遭うが……仕方ない」


 満桜は自作した設備の様子を見る。

 

 これを作るのに随分苦労した。ひとつの部品を作るのに、加工するための機材を作る部品が必要。その繰り返しでようやく作成できたのだ。

 正直、買って揃えればいい話だが、一度製作しないと目的のスキルが手に入らないという謎の仕様だった。


「お待たせー。おお、何やら近未来的な物がたくさんと。んで、満桜ちゃんの隣が召喚獣?」


 三由季が両手に大量のお菓子を抱えてやって来る。見慣れない人に驚いて無意識に指先を向けてしまい、その拍子にバラバラと床に落としてしまった。


「私の名はレイティナ。訳あって、戦えなくなった。今は新たな戦い方を模索している最中だ」

「拾ってくれてありがとー。戦えないって大丈夫なの?」

「それは安心して欲しい。一週間かけて戦えるようにした」

「ははーん。それで満桜ちゃんとの連絡が付かなかったんだね。あっ、やばそうな呪言を唱えていた炭鉱夫の話も君が関与してる?」

「やばそうな呪言……。確か、満桜が気を紛らわすように歌っていたが、それかな? あまりにも滑稽こっけいだったから録画してあるぞ」

「あははは! あとで情報屋に身内の奇行だったって教えなくちゃ。動画待ってるよ」


 初対面だというのに、レイティナと三由季は何度も会っていたかのような会話をし始めていた。


 ちょっと待って欲しい。ほんのわずかな会話で仲良くなるのはどういうことだ。

 死のデスギャザラー期間を使って、それなりに交流を図ったはずなのに、いとも簡単に好感度が上がっていくのはおかしい。これがギャルゲーだったらブチ切れている。


 満桜を使って会話の種にしたパーフェクトコミュニケーション。コミュ障な満桜とは違い、三由季は恐るべき能力を持っていた。


 満桜が謎の悔しい思いをしていると、機械が動く。ベルトコンベアがなだらかに稼働し、資材が作り始めた。


「おっ、始まった。あとは少し待てば資材が溜まるって訳か」

「ほうほう、これが満桜ちゃんの奥の手って奴?」

「そんな感じ。お披露目するから説明は後ほどだからな」

「ぶー。いいじゃん」


 だだをこねるような顔をした三由季を見て、満桜はレイティナが眠っていた迷宮ダンジョンについて思い出した。


 炭鉱をし終えたあと、再び迷宮の様子を確認してみたら、跡形も無く消え去っていた。更に詳しく調べてみれば、もうすでに撤去したとのことだった。


 見るからに曰く付きの迷宮。さすがに少しぐらいの情報を手に入れておかないと、追々、悪いことが起きそうだと感じていた。


「レイティナがいた迷宮なんだが……。どうやって知ったんだ? こっちで調べてみたけど、誰も知らない迷宮だったらしいぞ」

「あー、それねー。ゲーム友達の雑談で知った話なんだよね。アイテムドロップのいいダンジョンは無いかなーって話したら、ここがいいよって」

「まじか」

「会えるっちゃ会えるけど、結構シャイな人だから難しいかな」

「これ以上の情報は得られないか……まあいい」


 満桜は当てが外れたのか、小さなため息をつき、さっさと話しを要件を終える。

 再び迷宮に行くことが出来れば、レイティナを直す術が見つかると思っていた。


 今のレイティナはかなり酷い状態だ。二度戦えば、動けなくなる状況。はっきり言って不安だった。

 代替品は探せば見つかるのかもしれないが、同じものを揃えた方がレイティナにとっていいだろう。計画的に進んでいるとはいえ、いつかは無理な場面が起きるはずだ。そのための手段はひとつでもいいから欲しかった。


「まーおちゃん」

「ん? なん……うぎゃあ!!」

「そう悩まないの。何とかなるって」


 三由季の不意打ちに対して警戒を怠ったせいで、満桜の耳は甘噛みされてしまった。

 耳が吸われるような冷たい感触が伝わってくる。同時にぴちゃぴちゃという音も聴こえだして、鳥肌が立ってしまう。


「…………」

「満桜ちゃん?」

「まず最初に作るとしたら、お前を懲らしめる道具にするから覚えておけ」

「おうふ、これはマジな満桜ちゃんだ。中指を立てるのは辞めなはれ」


 三由季はさりげなく、満桜との距離を取って、謝りながら己の悪戯を誤魔化した。


 いつもこうだ。私が本当に嫌がるボーダーラインのぎりぎりを攻めて、おちょくり始めていく。

 そして、私から離れて様子を伺い、油断したところでまた再開する。やるせないが、私の寂しがり屋という本心を理解しているせいで、余計にタチが悪かった。 


「でも、これで満桜ちゃんと一緒に戦えるね。ぎりぎりの所まで待ってたんだよ? これぐらいの悪戯ぐらいさせて欲しいな」

「むぅ……」

「よぉーし。今日も明日も明後日も、毎日迷宮に潜ろうぜぃー」

「……いいだろう」


 満桜の了承を得たことで、三由季は両手を上げて喜びの表情を示した。


「じゃあさっそく……行っちゃいます?」

「場所は決めてあるのか?」

「最近ホットな【バルバ迷宮】でどう? 初心者から上級者まで幅広い層のダンジョンだよ」

「なら肩慣らしにちょうどいいか」

「道案内は任せてー!」

「……おい! なんで私を抱きかかえるんだ!?」

「その方が早いから! 行っくよ~~!」


 抵抗空しく、満桜は強引に連れて行かれ、目に見えない速さで部屋から離れていった。

 急な行動に逆らいたかったが、総じて高水準のステータスを保有している三由季には敵わず許す形になる。というよりも、赤らめた顔を隠すだけで精一杯だった。


 せめてお姫様抱っこの体制はやめてくれ! 恥ずかしすぎる!


006:18時頃に公開予定。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ