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015:開戦の狼煙、それは蒼い星屑


 それは、一瞬の出来事だった。


 夜空に蒼色の星屑が流れた。

 真っすぐな直線を描いていき、その蒼色が地面にまで輝かせる。

 それが、戦いの始まりだろうと理解していたのか、多くの人が固唾を呑んで見守っていた。


「オオオオオオオオッッ!!」


 星屑は巨大なゴーレムの足を貫く。

 足が砕き、バランスを取れないまま崩れ落ちる。そして、その範囲内にいた魔物が、倒れていく巨体に潰されてゆく。


 要塞を防衛する全ての探索者は、その光景を見て立ち尽くしていた。

 地響きが鳴り、風は吹き荒れ、その二つの轟音が探索者の聴覚に残り続け、心臓が高鳴る。


 同時に、心が惹かれていた。


「す、すげぇ…………」


 誰かが最初に声を上げた。

「うおおおお――ッッ!! 大迫力じゃねぇか!」

「倒すのが面倒な深淵のゴーレムが、こうも簡単に砕かれていきやがったぞ! バカデケェ火力だ!」

「行けるぞ! 俺たちは勝てる!」


 それが瞬く間に大歓声へと変わり、震えて湧き上がる。

 その震えは恐怖などでは無い。

 勇気に溢れた強い心だ。


 先頭にいた巨大生物が崩れ落ちたことによって、群勢の勢いは失いつつあった。

 だが、それでも魔物の動きは止まらない。群勢は纏わりを欠けていながらも、進軍を続けている。


「オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ――――ッッ!!」


 深層のゴーレムたちは同胞が倒れていく姿を見て、不気味な雄叫びを上げる。手に大岩を握り締め、軽々しく振りかざす。


 大岩が空を切り裂くように撃ち出された。

 それが要塞に激突すれば、確実に崩落してしまうだろう。たとえ何重にも補強したとしても、その衝撃を防ぐ手段は無いに等しい。


「――〈城塞壁展開〉!!」


 しかし、それを防いだのは、誰かが召喚した水晶の壁だった。


 大地から現れた壁は、大岩の数々を受け止める。数発受けると壊れてしまったが、瞬く間に新たな壁が生えたことによって、完璧に要塞を護り通していく。ゴーレムの猛攻を防ぎ切ったあと、己の役割を全うしたとばかりに、大地へと還った。


 刹那――


「――ファイエル!」


 再び、星屑が降り注いだ。

 その星屑の軌道は、先程まで怒りを露わになった、深層のゴーレムへと撃ち下す。


 深層のゴーレムは頭部を消され、機能が停止する。もう一体は胸部を貫いて、後ろに大きく倒れ込んだ。


 幾度もの衝撃が響き渡り、水晶平原の全域を震撼させた。

 それが要塞全体にまで伝わり、探索者の士気を爆上げする。


「なんだ、この凄まじい火力は!? バカだ! バカが作った兵器じゃねぇか!」


 その熱意は星屑を生み出した塔にまで届く。

 出入り口のない不完全な形であり、ただひたすら高さを追求した狙撃塔。


 そこに、一つの兵器が聳え立っていた。

 蒼く輝き続ける銃口。より遠くへと飛ばせるように作られた、長い銃砲身。


 破滅ドゥーム歓迎ヘイルの名に冠する兵器が、戦端を切り拓き、絶望的な戦力差を無くしたのだ。


「次、右に30度!」

「角度調整、回転ー。よぅーそぉろー!]


 満桜まお三由季みゆきの二人は、次なる標的を撃破すべく、角度を調整する。


 新たに作り上げた武装形式アームズフォーマット:アンカーは、即席で作った設計故に、上下の角度しか動かせない。

 よって、左右に動かすための旋回台せんかいだいを設置して、三由季に操作して貰っていた。


「距離よし、角度よし……――ファイエル!」


 そして、再装填を終えた【ドゥームへイル】は、最後の一体を撃ち抜く。

 深層のゴーレムは形を保つことができずに、石となって壊れていった。

 これで、満桜にとっての前哨戦は完了。次は要塞を守る探索者たちの仕事だ。


『小型モンスター群が指定の距離まで接近中。野郎ども、戦の時間だ』


 榎本の指揮の下、戦いは本格的に始めまった。

 地面に仕掛けた爆薬が起爆したのを合図に、あらゆる遠距離攻撃が放たれる。前回よりも数と質を上回る、多重攻撃を繰り広げていく。


「あははっ! どかん、ばこん! いい音色♪ まるでお祭りのようだね!」

「三由季は気楽過ぎ! 危機感を持て!」

「えー? 楽しそうなのに? 満桜ちゃんはどうなの?」

「…………少しだけ」

「否定できないなら素直になりなよー!」


 どの戦場も緊迫とした状況なのだが、満桜と三由季は楽しんでいた。

 ド派手の魔法の数々が、彩りを与える。機関銃の激しい連射音によって、観客の心拍数を上昇させる。


 夜空に映る花火の如く美しさ。ライブ会場のような肌に伝わる重圧感。

 それは、バルバ迷宮の大宴祭だいえんさいを超える、賑やかな祭りとなっていた。


 この光景を見た満桜は、少しだけにやけてしまう。


 満桜は一人での生活に慣れ切っていた故に、こういう大騒ぎを楽しむ機会が訪れなかった。

 それを身に沁みて味わった今、満桜の頬が自然と綻ばせていた。


 この一瞬を持って、初めて探索者として実感できたのだ。



 1900文字、思ってたよりも少なすぎたので前後半に分けます。

 後半は18:00頃に。

 

 レビュー、応援コメント等いただけましたら、私は嬉しくなり作業ペースが上昇致します。

 ようするに作業が速くなるという事です。



 1900文字、思ってたよりも少なすぎたので前後半に分けます。

 後半は18:00頃に。

 

 レビュー、応援コメント等いただけましたら、私は嬉しくなり作業ペースが上昇致します。

 ようするに作業が速くなるという事です。


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