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彼らの仲を知った翌週にオクラドヴァニアと毎週定期的に開かれている2人だけのお茶会の日を初めて迎えていた。
(はぁ、お茶が美味しいって何て素晴らしいのかしら!!)
それまではお茶会日が近づくと婚約解消の為に冷たい態度を取らなけれならないと憂鬱な気持ちになっていたが、もうその必要が無くなり無理をしなくても良いのだと思えば寧ろ今日がとても待ち遠しく思えた。
「珍しく機嫌が良さそうだが何かいいことでもあったのか?」
「特に何もございませんがオクラドヴァニア様にはそう見えるのですか?」
「いや……そうか。」
いつものように黒の軍服を着用して来た彼は今まで無表情のまま無言で聞くだけの私が返事をしたことに戸惑い、難しい顔をしているようだったがそれ以上は特に何も聞いてくることも無くいつも通りのお茶会が終わった。
(彼と話しをするだけなら楽しいのかもしれないわよね、次はもう少し色々聞いてみようかしら。)
それ以降のお茶会から少しずつ会話を重ねるようになると話しをすることにも慣れていき、何度目かのお茶会の時には見つからない逢瀬の場所を提供……うっかり話の流れで教えてしまったり、自分の予定を伝えるついでに自分付きの侍女達の休みをさり気なく話題に出してみると「そうか君も侍女達も大変だな、あまり無理をせずに過ごすのだぞ。」と無表情だと強面にしか見えない顔が柔和な笑顔に変わり耳をピクピク動かし答えてくれた。
(……今のは一体何かしら?)
笑顔よりもその不思議な現象が気になりそこから侍女達の話題を毎回出すように変え観察しているとラヴーシュカの行動や休日の話しの時に耳がピクピク動き出しその後は少し余韻が残るようだった。
「ふふふ。」
「何かあったか?」
「いいえ何も。オクラドヴァニア様のお話しが面白かっただけですわ。」
「そうか…。」
(興味がある話しの時だけ無意識に動くのだわ、年上だけど結構可愛い人だったのね。)
強面な顔に大きな体躯で自分の領地や鍛錬の内容を真面目な顔で語ってくる年上のオクラドヴァニアのその癖に、何となく嘘をつけないと言われている彼らしい一面が垣間見れて他にはどんな話題で動くのだろうかと様々な内容の話しを重ねるうちに友人としての好感度が上がり、彼との関係は良好なものに変わり続けていった。
「お嬢様…最近何だか楽しそうですわね。オクラドヴァニア様と何かございましたか?」
「話しをするようにはなったけど特に何も変わらないわよ。」
「そうですか……。」
「あっ……ええ。」
何処となく浮かない顔のラヴーシュカに声を掛けられ心が痛みだし、これも全て丸く収めるためだと伝えたくなったがそれは飲み込んだ。
(この封蝋はアミからだわ、便箋が何時もと少し違うけれど何かしら?)