(32)
(かかったか……。)
動き始めた少女を視界に捉えた1人の人間は心の中でほくそ笑みその行動を見つめた。
「ええ、皆様の想像通りあれは別物ですが祖父と親交があった我が国で旅立って尚名高いフェガロフォト大尉の忘れ形見ユウェル・シャ・フェガロフォトだと判明致しました。」
国王は話しをする度に足を止め周りを見て話してはまたゆっくりと階段を上り進めていく。
「成る程…あのフェガロフォト大尉なら……。」
「……そうなりますわよね。」
「南の大陸に子がいてもあの方なら色々と……。」
(……名前が出て直ぐに成る程、色々で納得出来る方って一体………。)
明日1日だけお世話になる筈の家名にその家庭事情は良く知らないが、息を呑む音と共に批判される事無く、直ぐにその話しを受け入れられる仮の亡き父は中々豪快な御仁らしい事は分かった。
「そして何故態々皆様にお伝えしたのか、注目して頂きたい点はもう1つございます。」
その声と共に歩く絨毯の上から少数だった品定めをしていた視線は一斉に増えその視線が興味に変わるのを感じて喉が渇いてきたが足は止めず前に進める。
「彼女を迎えに行きフェガロフォト家の面々を集めた部屋へと案内していた王宮の通路で偶々弟と出会した2人を従者が近場の応接部屋へと案内しお互いだけで過ごす時間を設け時間になり弟を呼びに行くと……何と彼女の左の胸には応接室に入る迄は存在しなかった濃厚な紅い花が咲いていたとの報告を受けました。」
(確かに!!此処だけ何故か消えないけれど、これは別の相手からであって其処の誰かも分からない王弟からでは無いわよ!!!)
いつの間にか全身についていた鬱血跡は消えたがあの時に見逃していた何故か今尚消えて無くならない跡が言われた通りの場所に残っているのは事実だったが、また話しを作り始めた国王の後を先程よりも黒い感情で追い続け漸く玉座迄続く階段前に到着して足を乗せ登って行く。
「遠目で良くは見えなかったが……。」
「私は先程気付きましたが、初めて会って直ぐになんて…ペルデンテ様ったら何て情熱的なのかしら…。」
「左と言うことはもう決定なのか…?」
意味がよく分からない会話をする周りからは何やらむず痒くなるような視線が背中に注がれ始め居た堪れなくなり今直ぐにこの部屋から飛び出して火照る身体を冷やしたくなったが、その前にどうしても楽しみを取り上げた、既に玉座の横に到着しているだろう相手に父直伝の一発を食らわせなければと一歩ずつ確実に近付いて行く。
「私もそう思い彼女を守る為祖母の事件の後に造った箱庭で保護をしようかと思いましたが、話しを聞きに行った弟は初めての事で戸惑い何があったか語ろうとしない様子を受けて集まっていた彼女の生家になるフェガロフォト家と話し合い3年程婚約期間を設けようと考えました。」
「その期間は妥当なのか…。」
「余り急ぎ過ぎて何かあってもいけませんものね……。」
「然し…その後に何かあれば……。」
(後……もう少し……。)
雰囲気が重くなり何やらよく分からない話しは次々に進んでいくが漸く残り数段となり壇上にいる許されざる相手が瞳に映ると耳にはもう周りの声が入ってこなかった。
「皆様の様々なご心配は分かりますが、3年も一緒に会う機会を設けて兆候が見えないなど男女として興味が湧いていない証拠ではありませんか?これは真の王である弟自信が決めた事なのです。なぁ?ペルデンテ?」
「……。」
国王がそう玉座に座る王弟に怪しげに光らせた薄い緑の瞳を向けて問いかけると声を出すこと無く頷いた後王弟は突然立ち上がり壇上の上で少し前に足を進める。
(漸く…到着した…幻金花の敵!!!)
壇上迄上がると瞳に映っている国王に握り拳を作った手を隠し真っ直ぐに向かって行こうとすると王弟が間に入る様に現れ手を強く掴まれよろけ掛けた身体をそのまま抱えられるように強く抱き締められた。
「「「「まぁ!!!!」」」」
「何故彼女が玉座に向かっていたのか謎な演出でしたけど、あの王弟との仲を見せる為だったのですね。」
「もう、決まった様なものだな!」
「これは3年もいらないかもしれないですな!」
周りが騒がしくなる広間で仮面を付けた王弟は抱き締めたまま耳元で2人にしか聞こえない声量で語りかけてくる。
「!!!???」
王弟により聞かされる衝撃的な話しが頭の中で繰り返され怒りにより身体が震えだしてきた。
「【今これを殴れば君は問題無用で箱庭に連れて行かれる。3年以内に染まりきらなければ1、2年は監視されるだろうが今から5年後には君は必ず自由になれる……。我慢してくれ……。】」
(貴方の顔も見たこともないのに一体どんな話しになっているのよ!!!)
『ボイティーーー!!逃げろ!!!』
この国に連れてきたこの広間へと続く最初の扉が閉まる直前に急いで駆け付け金が深まっていた気がした金緑の瞳を向け必死な顔で叫んで腕を伸ばしてきた相手の顔を思い出し怒りの矛先を向ける。
(モイヒェルの…モイヒェルの…モイヒェルの……嘘つきーーーー!!私はこんな白でも黒でもない灰色の婚約は望んで無かったわよーーーー!!!!)
この後も続いた王弟との長く熱い抱擁により異例ながらビッダウ国で亡くなったとされたボイティ・レナ・エクソルツィスムス改めユウェル・シャ・フェガロフォトはこの瞬間式を挙げることなくスピーア国第二王太子である知家のペルデンテ・ゾン・コノシェンツァの婚約者として決定した。
そしてこの序章からこれから様々な経験をしていった彼女のその名は全大陸に知れ渡る事になるがそれまた別のお話達で……。
初作品取り敢えず書き上げました!!
既に婚姻ではなく婚約が白いからお気付きの方もいらっしゃたかも知れませんがそうです色が変わります。
元々7迄考えた骨組みを一章に纏めたお話にして入力していた所半分以上消えどう繋ぎ合わせたのか分からなくなりどうするか悩みながらも、また消えるのが嫌で勢いで投稿し進めていましたが、私の拙い文を読んで下さる方々がいる事、評価して下さった方、ブックマークして下さる方がいて励みになりそしてとても嬉しくなりました。
そして楽しんで頂けているのかなと書き進めて行く途中で私も楽しくなり後編のある章から纏めた物では無く最終の方に続く話に切り替えたのですが、もしかしたらこちらの方が面白いのかなぁと、次はこの話の2章を載せるか、骨組みだけ作った別の話を載せるかを迷い始めてます…。
掲載の同時進行を出来る程器用な性格では無いので片方が中途半端に終わる可能性があるのが怖いのと、出来ればお話は書き上げてから次にと考えていますので宜しければこちらの話に評価やリアクションをして下さると続きを載せる励みになります。
来月か再来にはどちらかを投稿していきたいと思っておりますが、それまではこのお話の誤字脱字や加筆修正…もしくは書きかけの閑話の投稿行いながら裏でお話の肉付けを進めていきます。
(先に伝えておきますが長くし過ぎる問題が発生して、もしかしたらこの物語の話数が増えるかも知れませんが終わりは変わりません……。)
本当に此処までありがとうごさいました。
最後まで楽しんで頂けてましたら幸いです。